職場の熱中症対策を体系化 WBGTに基づく選択型ガイドラインを策定
猛暑の常態化により、職場における熱中症は依然として発生が続いている。とりわけ、2025年の労働安全衛生規則改正により、WBGT値の把握や作業管理など一定の熱中症予防措置が事業者の義務として明確化された後も、死傷者数は増加した。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2026年3月、「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を公表した。あわせて「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」も展開され、業種・業態に応じた実効性ある対策の徹底が求められている。
法的措置の明確化後も熱中症による死傷者は増加
2025年6月の改正労働安全衛生規則の施行により、職場における熱中症対策は新たな局面を迎えた。WBGT値の把握や、それに基づく作業の中断・休憩の確保など、具体的な予防措置が事業者の義務として位置付けられた。
しかし、2025年の速報値では、職場での熱中症による休業4日以上の死傷者数は1,681人、うち死亡者数は15人(いずれも全産業計)に上った。死亡者数は前年から減少したものの、死傷者数は前年比約1.4倍(460人増、速報値ベース)で大幅に増加している。
背景には記録的な猛暑がある。2025年6~8月の平均気温偏差は+2.36℃と、統計開始以来最高を記録しており、死傷者数増加の一因となったと考えられる。
業種別では、死傷者数は製造業が最も多く、建設業、商業、運送業、警備業が続く。一方、死亡者数は建設業が最も多く、警備業が続いている。
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出典:「職場における熱中症防止対策のための検討会 報告書 ~令和8年夏に向けて~」P.3(厚生労働省)
一律対策から業種別対応へ ガイドライン策定の背景
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2025年12月に「職場における熱中症防止対策に係る検討会」を設置し、継続的に議論を重ねた。2026年3月には報告書が取りまとめられ、それを受けて「職場における熱中症防止のためのガイドライン」が策定された。
策定の背景にあるのは、従来の一律対策の限界という認識だ。熱中症予防については、業種・業態により作業内容や作業場所による制約条件などが異なり、対策の実施にあたっての留意点もさまざまである。そのため、一律の対策を示すのではなく、複数の対策オプションの中から事業者が自らの業種・業態に応じて適切な対策を選択できるよう、包括的に熱中症防止対策をまとめたガイドラインを策定することが有効とされた。
また、これまで重視されてきた死亡災害などの重篤化防止に加え、休業4日以上の死傷者の抑制に向け、熱中症の発症リスクそのものを低減する観点の重要性も指摘された。
WBGTを軸にリスク評価 対策を選択する仕組みへ
ガイドラインの特徴は、WBGT値(湿球黒球温度)を軸としたリスク評価と、それに基づく対策選択の考え方を明確に示した点にある。
WBGT値は、気温に加え、湿度、風速、輻射熱を考慮した暑熱環境によるストレスを評価する指標であり、単純な気温よりも実態に即したリスク把握が可能である。
ガイドラインでは、このWBGT値を基に作業環境のリスクを評価し、その結果に基づき「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」などの観点から、適切な対策を組み合わせて実施することが求められる。
このように、環境要因だけでなく作業内容や労働者の健康状態も含めて統合的に評価し、事業場ごとに最適な対策を選択する構造が示された点が、本ガイドラインの大きな特徴である。
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出典:「職場における熱中症防止のためのガイドライン概要」(厚生労働省)
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