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5月22日は「世界妊娠高血圧症候群デー」 胎児と母体の命を救う医療
2017.05.17
 5月22日は「世界妊娠高血圧症候群デー」だ。胎児の発育を妨げるだけでなく、母体も危険にさらす、命に関わる疾患だ。世界中で、この疾患に関する啓発活動が展開されている。
妊娠中の高血圧の発生率は高い
 「妊娠高血圧症候群」は、妊娠中期から高血圧を発症する疾患で、かつては妊娠中毒症とも呼ばれていた。

 この疾患は、胎児の発育を妨げるだけでなく、母体のさまざまな臓器に障害をもたらし、命に関わる事態を引き起こすこともある。

 日本産科婦人科学会は、妊娠高血圧症候群を「妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧がみられる場合、または、高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものでないもの」と定義している。

 日本は世界でも安全に出産できる医療の発達した国だが、妊娠高血圧症候群は全妊婦の3~5%が発症しており、母体と胎児の健康を脅かしている。
「世界妊娠高血圧症候群デー」に世界規模で啓発活動
 妊娠高血圧研究のための国際学会や妊娠高血圧症候群財団などが中心となり、毎年5月22日を「世界妊娠高血圧症候群デー」と定め、世界規模で啓発活動が行われている。

 「妊娠高血圧症候群など妊娠中の高血圧は比較的発生率が高く、その影響は深刻です。この疾患は妊娠中の発症率は低くなく、世界の妊婦の8~10%が発症しています」と宣言している。

 妊娠高血圧症候群は早産の要因であり、新生児集中治療室(NICU)が必要となる要因の約20%を占めているという。

 母親にとっては、出産後の心臓血管病、2型糖尿病、腎機能障害など深刻な病気を発症する危険性を高めることも知られている。

 症状としては、急激に起こる高血圧により脳の中の血液が増え、脳の中にむくみが起きて、けいれんを起こす「子癇」が引き起こされるほか、突然の上腹部痛、心窩部痛、嘔気・嘔吐などが起こる場合がある。

 頭が痛い、めまいがする、目がちかちかする、まぶしい感じがする、胃が痛む、吐き気がする、吐くなどの症状が起こった場合には、子癇発作の前兆であることがあるので、注意が必要だ。
世界妊娠高血圧症候群デーのバナー

妊娠した女性が注意すべき7つの症候(妊娠高血圧症候群財団)
胎盤に異常が生じ病態を悪化
 妊娠高血圧症候群は、胎児の成長を障害し、母体にも臓器障害などの致命的な影響を及ぼすことがある。

 母体と胎児は、胎盤に張り巡らされた血管を介して、栄養素や酸素を交換しているが、この疾患では胎盤の血管が減少することが知られている。

 妊娠高血圧症候群になりやすいのは、高血圧、糖尿病、腎疾患などのある女性や、初産婦、前回の妊娠からの期間が5年以上経過している妊婦、妊娠がわかって初診した時の血圧が高い妊婦などだ。

 妊娠高血圧症候群の発症や悪化の原因は分かっていない。そのため症状があらわれた場合、妊娠の途中で胎児と胎盤を母体から取り出すことが唯一の治療法とされており、母体と胎児にとって大きな負担となる。

 胎盤は、母体と胎児の血管が張り巡らされており、母体と胎児をつなぐ重要な生命維持臓器だ。妊娠高血圧症候群では胎盤機能に異常が生じ、病態を悪化させると考えられている。
「酸化ストレス」が母体や胎児の病態を改善
 妊娠高血圧症候群の胎盤では、細胞を損傷させる活性酸素種などの分子が蓄積した状態、すなわち「酸化ストレス」が亢進していることが知られている。

 そのため、「酸化ストレス」が血管などの胎盤組織を障害し、病態を悪化させると考えられてきた。

 ところが、東北大大学院の研究グループは、「酸化ストレス」が、妊娠高血圧症候群を発症している母体や胎児の病態を改善するという、意外な機能があることを、マウス実験で明らかにしたと発表した。

 妊娠高血圧症候群に対する酸化ストレス緩和薬(抗酸化剤)の効果について、国際的な大規模研究が10年ほど前に行われたものの、研究結果は予想に反したものとなり、抗酸化剤は妊娠高血圧症候群に対して効果がなく、むしろ胎児の発育遅延を悪化させる可能性があることが判明した。

 酸化ストレスは「Nrf2」というタンパク質によって軽減される。研究グループは、妊娠高血圧マウスのNrf2の活性を変化させ、酸化ストレスのレベルを増減させ、その影響を検討した。

 その結果、妊娠高血圧マウスでは、20%程度のマウスが妊娠中に死亡しましたが、酸化ストレスレベルを下げたところ、約40%のマウスが死亡した。

 一方、酸化ストレスレベルを上げたマウスでは、死亡率を5%以下に抑えることができた。

 酸化ストレスのレベルを上げた妊娠高血圧マウスの胎盤では、正常妊娠マウスと同程度の血管が形成されることも判明。

 今回の発見は、妊娠高血圧症候群における酸化ストレスの意外な効果を明らかにしたものであり、病態解明と治療法開発につながる成果だという。

 研究は、東北大学の祢津昌広助教(東北メディカル・メガバンク機構 地域医療支援部門)、相馬友和研究員(医学系研究科 医化学分野・現ノースウェスタン大学)、鈴木教郎准教授(医学系研究科 酸素医学分野)、山本雅之教授(医学系研究科 医化学分野・東北メディカル・メガバンク機構長)らの研究グループによるもの。

東北大学大学院医学系研究科 酸素医学分野
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
世界妊娠高血圧症候群デー(World Preeclampsia Day)
(Terahata)
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