「塩のとりすぎ」で肥満リスクも上昇 塩分をコントロールする2つの効果的な方法

食事で塩分(ナトリウム)をとりすぎている人は、血圧が高いだけでなく、肥満のリスクも高いことが明らかになった。
塩分をコントロールし高血圧や肥満に対策するために、2つの効果的な方法が提案されている。「食塩を代替塩に置き換える」「野菜などからカリウムをとりナトリウムの排泄を増やす」といった対策を、専門家はアドバイスしている。
塩のとりすぎは肥満のリスクも高める
食事で塩分(ナトリウム)をとりすぎている人は、血圧が高いだけでなく、肥満のリスクも高いことが、フィンランドで5,000人超を対象に実施された調査で示された。
ナトリウムの摂取量が多いことは、全身肥満と腹部肥満のリスクが高いことと関連しているという。詳細は、5月にスペイン・マラガで開催される第32回欧州肥満学会議(ECO 2025)で発表される予定。
塩分をもっとも多くとっている男性は、少ない男性に比べて、全身的な肥満のリスクは6倍、腹部肥満のリスクは4.7倍に上昇した。女性でも、それぞれ4.3倍と3.4倍に上昇した。
研究グループは、大規模調査である「フィンヘルス全国調査」に参加したフィンランドの成人5,014人のデータを解析した。うち1,260人を尿検査を受け、ナトリウム摂取量が推定された。
塩分に換算した1日の摂取量は、男性で12g、女性で9gをそれぞれ超えていた。世界保健機関(WHO)は、塩分の1日の摂取量を5g(小さじ1杯)未満に減らすことを推奨しており、フィンヘルス人はその2倍をとっていることになる。
加工食品から塩分をとりすぎている人が多い
「塩分をとりすぎている人の多くは、とくに不健康な食事をしているわけではないことも分かりました。ナトリウムの多くは、加工肉、パン、乳製品、とくにチーズなどから摂取されています。減塩の推進では、食事の改善を指導するだけでなく、食品業界との協力も必要です」と、フィンランド保健福祉研究所のアンニカ サンタラハティ氏は言う。
とくに男性で塩分摂取量と肥満とのあいだに強い関連が示されたことについては、「男性は一般的に、女性よりも食事の量が多く、肉製品、パンやベーカリー製品、チーズなど、ナトリウムが多く含まれる加工食品を好んで食べている傾向がみられます」と説明している。
「ただし、塩分のとりすぎが肥満のリスクを高めることは、男性と女性の両方で示されています。塩分のとりすぎは、体組成や食欲をコントロールしているホルモンの分泌の異常を引き起こし、腸内細菌叢にも影響を与えている可能性が考えられます」としている。
こうすれば塩を減らせる 1 |
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食塩を代替塩に置き換えると高血圧リスクは40%低下 |
まず勧められるのは、食事の塩分の摂取量を減らすことだ。世界保健機関(WHO)は、次のことを提唱している――。
- 調理では塩をなるべく加えないようにする。
- テーブルから塩入れを取り除く。
- 加工が最小限の新鮮な食品を増やす。
- 料理で風味をつけるときは、塩ではなくハーブやスパイスを使う。
- 市販のソース・ドレッシング・インスタント食品の使用を制限する。
- 食塩をカリウムを含む低ナトリウム代替塩に置き換える。低ナトリウムの食品を選ぶ。
このうち食塩を代替塩に置き換えると、高血圧リスクは40%低下するという中国の調査結果を、米国心臓病学会(ACC)が発表した。
代替塩は、食塩に含まれるナトリウムの一部をカリウムに置き換えたもの。薄味を自覚することなく、また味覚的な変化を感じることなく減塩ができる。
研究グループは、中国の介護施設の居住者を対象にランダム化比較試験を実施し、食塩を代替塩に替えると、血圧にどのような影響があらわれるかを調査した。
55歳以上の高血圧でない(140/90mmHg未満)、平均年齢71.4歳の男女611人を対象に、298人には通常の食塩を使った料理を提供し、313人には代替塩を使った料理を提供した。
その結果、2年間の追跡期間中に、100人年あたりの高血圧の発症率は、通常塩群では24.3だったが、代替塩群では11.7であり、代替塩により40%のリスク低下がみられた。
「代替塩を利用すると、血圧を高めることなく、食事を楽しみながら、心血管リスクを最小限に抑えられます。代替塩により健康を守れることが示されました」と、同大学臨床研究所のヤンフェン ウー氏は述べている。
「塩分の少ない食品を選択し、減塩することが、健康に大きな影響をもたらすことを、より多くの人が知るべきです」としている。
こうすれば塩を減らせる 2 |
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野菜などからカリウムをとるとナトリウムの排泄が増加 |
カリウムには、食品から摂取したナトリウムが腎臓で再吸収されるのを抑制し、尿への排泄を促す働きがある。
カリウムの主な供給源となるのは、ダイコン・ホウレンソウ・ブロッコリー・ニンジン・レンコンなどの野菜だ。カリウムは海藻類、イモ類、豆類、果物、コーヒーなどにも含まれる。腎機能が正常であれば、食事ではカリウムを十分にとることを心がけたい。
カリウムは腎臓から排泄されたり、再吸収されたりして、その濃度が調節されており、細胞の浸透圧を維持したり、水分を保持したりするために重要な役割を果たしている。カリウムは多すぎても少なすぎても良くない。
「カリウムの多い食事をとると、尿量を増やして体内の余分な水分を排泄する利尿薬に似た効果を期待できます。食事でカリウムを十分にとると、腎臓はより多くの塩分と水分を排泄し、カリウムの排泄量が増えます」と、南カリフォルニア大学細胞・神経生物学部のアリシア マクドノー教授は言う。
アメリカなどの西洋型食生活は、赤肉や加工肉、バター、高脂肪の乳製品、精製穀物、糖分の多いソフトドリンクなどを多くとるのが特徴です。そうした食事スタイルでは、とくに野菜が不足し、カリウムの摂取量が少なくなるおそれがあります」としている。
Sodium reduction (世界保健機関 2025年2月7日)
かるしおプロジェクト 塩をかるく使って美味しさを引き出す減塩の新しい考え方 (国立循環器病研究センター)
第32回欧州肥満学会議 (ECO 2025)
Study reveals association between dietary sodium consumption and both general and abdominal obesity (欧州肥満学会 2025年3月26日)
Salt Substitutes Help to Maintain Healthy Blood Pressure in Older Adults (米国心臓病学会 2024年2月12日)
Effect of a Salt Substitute on Incidence of Hypertension and Hypotension Among Normotensive Adults (Journal of the American College of Cardiology 2024年2月20日)
Fruits and vegetables' latest superpower? Lowering blood pressure (南カリフォルニア大学 2017年4月5日)
Cardiovascular benefits associated with higher dietary K+ vs. lower dietary Na+: evidence from population and mechanistic studies (American Journal of Physiology - Endocrinology And Metabolism 2017年4月4日)


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