中小企業のがん対策、経営者の関心が鍵?
「がん対策推進企業アクション」最新調査が示す実態
「がん対策推進企業アクション」は、全国の中小企業を対象にした実態調査を実施。公表されたレポートによると、中小企業の経営者の75%が、自身や従業員のがん対策に「関心がある」と回答しているものの、「"大いに"関心がある」は14%にとどまっていた。
また、経営者のがんへの関心が高くなると、従業員の検診実施率が上がることもわかった。
職域のがん対策に特化した「がん対策推進企業アクション」
がんになっても働き続けられる―そんな社会を実現するために、2009年度からスタートしたのが、厚生労働省から委託を受けた国家プロジェクト「がん対策推進企業アクション」だ。
がん対策推進企業アクションでは、推進パートナーとなった企業・団体とともに、職域のがん検診受診率向上や治療と仕事の両立支援を推進していくことを目的としている。
具体的には、企業や団体で①がん検診の受診を啓発すること、②がんについての会社全体で正しく知ること、③がんになっても働き続けられる環境をつくること、の3つを柱にがん対策を推進している。
同プロジェクトでは、2020年度から大同生命社と共同して「中小・小規模企業での『がん対策』調査」を実施し、このほど2024年度の調査結果が公表された。調査は5年連続で行われており、日本の中小企業が、がん対策をどのように進めてきたのかを把握する重要な資料となっている。
継続調査が明らかにする中小企業の健康意識
今回の調査は、2024年11月1日から30日にかけ、調査員が企業を訪問して対面、またはZoomを活用したオンライン面談で実施した。調査時にはがんに関する基礎的な知識や、がん対策を推進するための具体的な方策を記載したチラシを配布するなど、単なるアンケート調査にとどまらず「大人のがん教育」の一環としての役割も果たしている。
調査に回答した企業数は、2020年度が10,953社、21年度が7,946社、22年度が9,152社、23年度が7,376社、そして今年度(24年度)は7,999社。この5年間の継続調査によって中小企業のがん対策の全体像が少しずつ浮かび上がってきた。
中小企業経営者のがん検診受診率は約70%
まず、中小企業の経営者自身のがん検診受診率をみると、約70%に達していた。検診の種類は以下のとおりである。
- 胃がん:53%(バリウム27%、胃カメラ26%)
- 大腸がん:45%(便潜血検査31%、内視鏡検査14%)
- 肺がん:25%
- 乳がん:4%(マンモグラフィ2%、超音波検査2%)
- 子宮頸がん:2%
- 前立腺がん検査(国推奨ではない):16%
一方、経営者の「自信を含め、従業員のがん対策(検診)に関心をもっているか」という質問への回答は、「関心がある」のは75%と高めであるものの、その中でも「大いに関心がある」と答えた割合は14%にとどまっていた。
出典:がん対策推進 企業アクション「中小・小規模企業での「がん対策」調査結果報告」P.5, 2025年2月3日
「従業員へのがん検診実施率」をみると、▼実施:50% ▼未実施:22% ▼「会社では実施していないが、個人での受診を推奨」:28%となっており、がん検診実施率は徐々に増加傾向にあることがわかった。


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