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高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
2023年08月28日
通所系サービスを利用している高齢者は、利用していない高齢者に比べて、フレイルの発生リスクが40%低減したことが、大阪公立大学の調査で明らかになった。
フレイルは、早期に適切な介入をすることで、健常な状態に戻れる場合がある。
「高齢者は、要介護認定を受けた後でも、介護度の重度化予防のために、家に閉じこもらずに積極的に外に出向くことを推奨します」と、研究者は述べている。
通所系サービスの利用は要支援高齢者のフレイル抑制につながる
加齢により心身が老い衰えた状態であるフレイルは、健常な状態と介護が必要な状態の中間にある虚弱の状態をさす。高齢化が急速に進む日本で、フレイルを予防し高齢者の自立的な生活を維持することは、社会全体の重要な課題となっている。 そこで大阪公立大学看護学研究科らの研究グループは、介護保険制度の要支援1や2に新規認定された、非フレイルの高齢者655人を対象に、認定後5年間のフレイル発生と通所系サービスや訪問介護サービスの利用に関する調査を実施した。 その結果、通所系サービスの利用者は、非利用者に比べて、フレイルの発生リスクが40%低減したことが明らかになった。フレイルは、早期に適切な介入をすることで、健常な状態に戻れる場合がある。 要支援に認定された高齢者が一般的に利用する介護保険サービスとして、通所系サービス(通所介護、通所リハビリテーション)や訪問介護サービスがあるが、軽度の要介護状態である要支援1や要支援2の認定を受けた後、これらの介護保険サービスを利用し、できるだけ長期間、要介護度が重度化しないように支援することが非常に重要であることが示された。 研究は、大阪公立大学看護学研究科の河野あゆみ教授、吉行紀子氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Post - Acute and Long - Term Care Medicine」にオンライン掲載された。 「要介護認定を受けた高齢者の方が、通所系サービスへの参加により、フレイルになりにくいことが、医療・介護報酬の時系列分析からわかりました。この結果から、要介護認定を受けた後でも、介護度の重度化予防のために、家に閉じこもらずに積極的に外に出向くことを推奨します」と、河野教授は述べている。 「今回の知見は、これまで十分には明らかではなかった、介護ニーズが低い高齢者への予防的サービスとして、通所系サービスが有用であることが示唆された点が貴重です。また、診療報酬データにもとづく指標でフレイルを測定した点もユニークです。本知見が今後の高齢者ケアに関わる研究や実践に役立つことを願います」と、吉行氏は述べている。 関連情報高齢者の通所や外出を促す環境づくりや意識づくりが重要
研究グループは今回、高齢者が要支援1や要支援2に認定され、日常生活での手助けが必要になったとき、通所系サービスや訪問介護サービスを利用することにより、要支援認定後5年間のフレイル発生が抑えられるのかに着目した。 大阪府下の3自治体(和泉市、泉大津市、岬町)で、2012年9月~2013年3月に要支援1、2に新規認定を受けた高齢者のうち、非フレイルやプレ・フレイル(フレイルの前段階)にあった655人(中央値:79歳、女性の割合:66.6%)を対象に、5年間のフレイル発生を測定した。 測定には、南大阪医療介護(SOHA:the Southern Osaka Health and Aging)スタディの2012年4月~2017年3月の介護報酬および診療報酬データを使用し、介護報酬からは毎月の通所系サービスと訪問介護サービスの利用状況、診療報酬のICD-10による指標でフレイルの程度を測定した。 その結果、5年間のフレイル発生率は、33.9%(222人)だった。さらに時間依存性コックス回帰モデル解析を行った結果、通所系サービスの利用者は非利用者に比べてフレイルを発生するリスクが40%低減していた(ハザード比=0.60,95%信頼区間 0.42~0.86)。 5年間では、通所系サービスの利用者、非利用者ともにフレイルは発生するが、通所系サービスの利用者の方が非利用者に比べて、フレイルの発生が常に低い結果となった。
通所系サービスの利用と5年間のフレイルの非発生率を比較(生存曲線)
通所系サービスを利用した高齢者は、フレイルの発生が常に低い結果になった
通所系サービスを利用した高齢者は、フレイルの発生が常に低い結果になった
出典:大阪公立大学、2023年
今回の研究により、要支援高齢者の通所系サービス利用に「フレイル発生リスク低減効果」があることが明らかにされた。これは、高齢者が要支援1または2と認定された時点で、通所系サービスや通所系サービスに相当する外出を高齢者に勧めることが大切であることを示唆しているとしている。
「感染予防対策とバランスをとりながら、高齢者の通所や外出を促す環境づくりや高齢者・家族への適切な意識づくりを働きかけていくことが重要です」と、研究者は述べている。
大阪公立大学大学院 看護研究科 地域包括ケア科学Do Home- and Community-Based Services Delay Frailty Onset in Older Adults With Low Care Needs? (Journal of Post-Acute and Long-Term Care Medicine 2023年7月10日)
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