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自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?

 「後期高齢者の質問票」(15項目)に含まれる「フレイル関連12項目」で、健康リスクがあると考えられる回答が4項目以上あると、フレイルの可能性があることを、東京都健康長寿医療センター研究所が明らかにした。

 「後期高齢者の質問票」は、全国の自治体の94%で使用されている。フレイルのハイリスク者を簡便に把握できることは、地域での高齢者のフレイル対策に役立てられる。

「フレイル関連12項目」がフレイルの指標として利用できることが明らかに

 研究は、東京都健康長寿医療センター研究所が、大阪大学や慶応義塾大学らと共同研究で実施している健康長寿研究「SONIC研究」で収集したデータを分析したもの。

 同調査研究は、2010年に兵庫、東京の7市町村で開始され、70歳・80歳・90歳・100歳の高齢者を対象に実施されている。

 全国の自治体が実施している、後期高齢者を対象とした健康診査(健診)では、2019年度までは「標準的な質問票」を使ってメタボリックシンドロームに関連する生活習慣が把握されていた。しかし、この質問票では、高齢者に特徴的なフレイルなどの健康課題を把握できないという課題があった。

 フレイルは、加齢にともなってさまざまな機能の低下が進み、それによって健康障害を起こしやすくなっている状態。

 そこで厚生労働省は、2019年3月に後期高齢者の健診で使用する「後期高齢者の質問票」を策定し、2020年4月から全国の自治体で順次使用されている。この質問票は高齢者の健康状態を総合的に評価することを目的に、15項目で構成されている。

 研究グループは、「後期高齢者の質問票」の尺度化の可能性を検討した結果、「後期高齢者の質問票」に含まれる、「フレイル関連12項目」が、統計的に独立した領域と解釈でき、その合計得点をフレイルの指標として利用できることを明らかにした。

後期高齢者の質問票
黄色の質問が「フレイル関連12項目」

回答の灰色部分は「健康リスクあり」と考えられる回答

質問票の「フレイル関連12項目」について、灰色の回答項目数(点数)を計算(12点満点)。
出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2023年

 研究グループは、2020年に実施した「SONIC研究」の郵送調査で得られたデータ(分析者数1,576人、平均年齢85.7歳、女性52.9%)を使い、フレイルに関する構成概念妥当性を検証。

 全15項目のうちの12項目を「フレイル関連12項目」と名付け、5領域で構成される分析モデルを構築した。

 その5領域とは以下の通り――。
(1) 運動機能問7、8、9、13
(2) 栄養状態問3、6
(3) 口腔機能問4、5
(4) 認知機能問10、11
(5) 社会的側面問14、15

 確認的因子を分析した結果、この分析モデルの適合度は良好で、「フレイル関連12項目」は統計的に独立した領域と解釈でき、その合計得点をフレイルの指標として利用できることが分かった。

後期高齢者の質問票「フレイル関連12項目」がフレイルの指標として利用できることを検証

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2023年

関連情報

高齢者保健を担当する専門職は多忙 もっと簡便にフレイルのハイリスク者を把握できないか

 研究は、東京都健康長寿医療センター研究所・福祉と生活ケア研究チームの石崎達郎研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。

 石崎研究部長は、厚生労働省の検討会メンバーとして質問票の開発と活用方法の検討に関与し、策定当初は、この質問票で得られた回答1つひとつについて、健診の事後指導を行うことが想定されていた。

 しかし、高齢者の保健事業を担当する医療専門職はとても多忙であることから、「この質問票を点数化して健康課題を抱えるハイリスク者の選別ができないものか」という要望が寄せられていた。

 今回の研究で使用された「後期高齢者の質問票」は、2023年4月末時点で、全国の自治体の94.0%(1,639区市町村)で使用されている(厚生労働省調べ)。

 「この問診票の"フレイル関連12項目"の点数で、フレイルのハイリスク者を簡便に把握できることは、地域における高齢者のフレイル評価に有用です」と、研究グループでは述べている。

 「具体的には、高齢者の健康政策の目玉である"後期高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施"で、区市町村が個別的支援を実施する際の対象者抽出や支援後の評価、さらには、通いの場などの参加者を対象とするフレイル評価のツールとして有用です」としている。

「フレイル関連12項目」のフレイルの識別能を評価 中等度の確からしさで識別可能

 研究グループは今回、この「フレイル関連12項目」がどの程度の確からしさでフレイルを識別できるのか検討することを目的として、フレイルの至適基準には日本語版CHS(J-CHS)基準を使用した。

 分析対象者は、「SONIC研究」の2019年の会場調査参加者のうち、2020年の郵送調査で「後期高齢者の質問票」に回答した461人(平均年齢79.7歳、男性50.9%)。

 J-CHS基準で判定したフレイルの状態別に、「フレイル関連12項目」の点数を比較したところ、フレイル判定の3群では、健常(ロバスト)群(中央値1点)、プレフレイル群(中央値2点)、フレイル群(中央値4点)と、三群間で中央値は有意に異なっていた(P<0.001)。

 J-CHS基準で判定したフレイルを至適基準に使用し、「フレイル関連12項目」のフレイルの識別能を評価した。その結果、「フレイル関連12項目」の点数はJ-CHS基準で判定されたフレイルを中等度の確からしさ(c統計量:0.79、95%信頼区間:0.73-0.85、p<0.001)で識別可能であることが明らかになった。

 そして点数が4点以上の場合にフレイルを識別できることが示され(分析対象者461人のうち4点以上の割合は19.5%)、その精度は、感度55.8%、特異度85.8%だった。

J-CHS基準で判定したフレイルの程度別にみた
後期高齢者の質問票「フレイル関連12項目」の点数分布

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2023年

健康長寿研究 SONIC (大阪大学 東京都健康長寿医療センター研究所)
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
Construct Validity of a New Health Assessment Questionnaire for the National Screening Program of Older Adults in Japan: The SONIC Study (International Journal of Environmental Research and Public Health 2022年8月19日)
Criterion validity of the health assessment questionnaire for the national screening program for older adults in Japan: the SONIC study (Geriatrics & Gerontology International 2022年6月)
[Terahata]
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