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緑茶・コーヒーを飲むと認知機能の低下を予防できる? 日本人を長期追跡して調査

 緑茶を1日に2〜3杯飲んでいる人は認知機能障害のリスクが44%低いことや、年齢の高い人ではコーヒーを飲んでいると認知機能障害のリスクが46%低いことなどが、JPHC研究の日本人1,155人を対象とした解析で示された。

 緑茶に含まれるカテキンの抗酸化作用、抗炎症作用、血管保護作用、異常タンパク質の蓄積阻害などの神経保護作用による可能性や、コーヒーの抗酸化作用、抗炎症作用、血管保護作用、認知機能への刺激作用などの影響が考えられるとしている。

緑茶・コーヒーを飲む習慣は認知機能障害のリスクの低下と関連
日本人1155人を20年間追跡して調査

 「JPHC研究」は、全国の保健所管内の約14万人の地域住民を対象に、生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関連について長期追跡している多目的コホート研究で、国立がん研究センターを中心に行われている。

 研究グループは今回、1990年に長野県佐久保健所管内の南佐久郡8町村に在住していた、1,155人の参加者を約20年間追跡して調査した。参加者の年齢は、1995年時点で44〜66歳だった。

 参加者は、1995年と2000年に実施したアンケートに回答し、2014~2015年に実施した「こころの検診」にも参加した。

 緑茶・コーヒーの摂取については、1995年および2000年に実施された2回の生活習慣調査アンケート結果から平均値を算出した。

 うち259人が認知症レベルあるいは複数の種類の認知機能が障害されているレベルでの認知機能障害と診断された。

 主な結果は以下の通り――。

緑茶を2〜3杯飲んでいる人は認知機能障害のリスクが44%低下

 認知機能障害のリスクは、緑茶を2〜3杯飲んでいた群では、1日1杯以下の群と比較して、44%の低下した[OR 0.56、95%CI 0.35~0.91]。

 年齢による差はみられなかったが、性別による層別解析では、とくに男性でその傾向が顕著で、緑茶を2〜3杯飲んでいた男性群では62%の低下[OR 0.38、95%CI 0.19~0.76]、緑茶を4〜6杯飲んでいた男性群では61%の低下[OR 0.39、95%CI 0.18~0.83]がみられた。

緑茶摂取と認知機能障害との関連 (JPHC研究)
出典:国立がん研究センター、2025年
コーヒーを飲んでいる年齢の高い人は認知機能障害のリスクが46%低下

 コーヒーを飲む習慣については、全体では認知機能障害との明らかな関連はみられなかったものの、年齢で層別したところ、より年齢の高い群で関連がみられた。

 年齢が53歳以上の人では、コーヒーを1日1杯以上飲んでいた群では、1日1杯未満の群と比較して、46%の低下[OR 0.54、95%CI 0.34~0.84]がみられた。

コーヒー摂取と認知機能低下との関連 (JPHC研究)
出典:国立がん研究センター、2025年

中年期からの生活習慣の蓄積がその後の認知機能の低下に影響

 このように、日本人を対象とした調査で、中年期の緑茶やコーヒーを飲む習慣が、約20年後の認知機能障害のリスク低下と関連があることが示された。

 研究は、慶應義塾大学医学部精神・神経科学の是木明宏特任講師らによるもので、研究成果は、「Journal of Alzheimer's Disease」に掲載された。

 これまでの研究でも、緑茶やコーヒーの摂取が、認知機能の低下を予防する効果がある可能性が指摘されていたが、研究期間が10年未満と短いものが多く、長期間の影響についてはよく分かっていなかった。

 また近年の研究で、認知症を引き起こす脳内の異常タンパクの蓄積や脳血管の老化は、中年期から始まることが示されており、中年期からの生活習慣の蓄積が、その後の認知機能の低下に影響を与えている可能性がある。

 今回の結果は、緑茶に含まれるポリフェノールの一種であるカテキンの抗酸化作用、抗炎症作用、血管保護作用、異常タンパク質の蓄積阻害などの神経保護作用による可能性が考えられ、またテアニンやアルギニンといったアミノ酸には、リラックス効果があるとされている。

 コーヒーに関しても、コーヒーの抗酸化作用、抗炎症作用、血管保護作用などに加え、コーヒーの認知機能への刺激作用も重要な役割を果たしている可能性が考えられる。高齢者に対してとくに効果があるとする先行研究の報告もあり、今回の結果と一致している。

 一方で、緑茶やコーヒーの摂取量が多すぎると、カフェインなどの影響により有益な効果が打ち消される可能性もあることが考えられる。また、緑茶などの摂取が多いことは、日常の不安感を反映している可能性も考えられるとしている。

緑茶・コーヒー摂取についての継続的な調査も必要

 解析では、年齢、性別、体格指数(BMI)、喫煙、飲酒、運動習慣、魚の摂取量、高血圧の既往、糖尿病の既往、心臓病の既往、うつ病の既往を統計学的に調整し、これらによる影響をできるだけ取り除き、年齢(中央値 53歳)および性別による層別解析も行った。

 より短い期間を調査した先行のコホート研究では、緑茶を2〜4杯摂取することで、認知機能低下を予防できる可能性が示されており、その摂取量と予防効果がU字関係(適度な量でリスクが低下する)にあることが報告されている。

 今回の研究の結果は、そうした先行研究と一致していると考えられる。ただし、コーヒーに関しては、先行研究からU字関係が示唆されているものの、今回の対象者ではコーヒーの摂取量が少なく、解析が難しかったとしている。

 男女による緑茶のリスク低下の差については、脳の老化における男女差が影響している可能性や、性ホルモン、免疫反応、遺伝的背景の男女差などが考えられるが、理由は明らかではなく、今後の研究が必要としている。

 研究の限界として、認知機能評価を1回しか行っていないこと、緑茶やコーヒーの摂取量について継続的に調査できていないこと、ApoEなど認知症に関連する遺伝的リスクが評価されていないことを挙げており、さらなる研究が必要としている。

多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト
A longitudinal cohort study demonstrating the beneficial effect of moderate consumption of green tea and coffee on the prevention of dementia: The JPHC Saku Mental Health Study (Journal of Alzheimer's Disease 2025年1月8日)

[Terahata]
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