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「大人の食育」を強化 人生100年時代の食育には地域や職場との連携も必要-令和6年度「食育白書」より

 農林水産省はこのほど、令和6年度「食育白書」を公表した。

 少子高齢化やライフスタイルの多様化を背景に、子どもだけでなく大人も含めた「生涯にわたる食育」の必要性が高まる中、各世代の課題に応じた取り組みを紹介。

「人生100年時代」を見据え、地域や職場と連携した食育の重要性を改めて示している。

食育への関心は20代の男性が最も低い

 「食育白書」は食育基本法に基づき、毎年、発表されている。2021(令和3)年度から2025年(令和7)年度までは第4次食育推進基本計画が推進中で、生涯を通じた心身の健康を支える食育やデジタル化への対応などを強化している。

 今回の食育白書では、第1部で「食育推進施策をめぐる状況」について解説したのち、第2部で具体的な取り組みを踏まえながら詳しく取り上げている。

 このうち「大人の食育」の推進の必要については、若い世代への取り組み強化に加え、高齢者までの各年代で見られる課題に応じ、健全な食生活の実践を促すことが重要、としている。

 若い世代の食育への関心については、以前から課題が指摘されてきた。2024年の「食育に関する意識調査」では、国民全体では8割を超える関心が示されたが、性別・年代別に見ると20代男性の関心度が最も低かった。

出典:農林水産省「食育に関する意識調査」(2024年11月実施)

 また1週間の中で、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日に2回以上食べることが「ほとんどない」と回答した人の割合は全体で12.3%だったが、若い世代は23.1%と高い。

 「健全な食生活の実践を心がけているかどうか」について聞いた設問では、「あまり心がけていない」「全く心がけていない」と回答した人の割合が、20歳代の女性で41.8%と高い結果となった。

ライフステージごとに食に関する「課題」が異なる

 幼少期や学童期には、家庭や学校を通じて健全な食生活を送る機会がある一方で、自ら食生活を管理し始める20〜30代では、バランスの取れた食事を摂ることが難しい状況にあることがうかがえる。

 子育て世代や高齢者など、それぞれにライフステージにおいて食に関する課題は散見されることから、今回の食育白書では「大人の食育」に着目し、さまざまな取り組み事例を紹介している。

 たとえば、愛知県の企業では、社員食堂で管理栄養士が考案した栄養バランスに配慮した食事を提供するほか、工場に常駐する保健師が積極的な声かけを通じて従業員と「顔と名前がわかる」関係を築き、食堂と連携して野菜摂取量の増加や、健康づくりの取り組みを実施しているという。

 食育白書では、活力ある「人生100年時代」の実現に向けて、健康寿命のさらなる延伸が課題であることから、地域や職場と連携した食育の推進が重要であると強調。農林水産省の「食育ガイド」や厚生労働省とともに作成した「食事バランスガイド」などを活用し、生涯にわたって、それぞれの世代に応じた食育の実践を促していく。

出典:農林水産省「食事バランスガイド」

妊産婦や乳幼児、災害時の食育の推進なども

 妊産婦に対する食育の推進については、2023年に「健やか親子21」が「成育医療基本方針」に基づく国民運動として位置付けられ、引き続き、こども家庭庁でも取り組みを継続している。

 妊娠期・授乳期は、母子の健康確保のため適切な食習慣の確立が重要で、厚労省は妊産婦を取り巻く社会情勢の変化を踏まえ、2021年に「妊産婦のための食生活指針」を改訂。妊娠前からの健康な体づくりや食生活の形成が重要である点を加えている。

 また乳幼児については、2019年に厚生労働省が「授乳・離乳の支援ガイド」を改訂。この内容を踏まえた栄養指導を市町村保健センターが中心に行っているほか、2019年に改訂した「授乳スタートガイド」をはじめとするリーフレットを活用し、普及・啓発を強化している。

 食育白書では、災害時に備えた食育の推進についても説明。農林水産省が作成した「災害時に備えた食品ストックガイド」を紹介しながら、平時からの食糧の備蓄・防災意識の啓発を進めていく重要性を説いている。

令和6年度 食育白書(農林水産省/2025年6月10日)
「食事バランスガイド」について(農林水産省)
HP「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)
「災害時に備えた食品ストックガイド」(農林水産省)
[yoshioka]
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