【厚労省とりまとめ】2040年を見据えた保健師活動の再設計 人口減少時代の体制整備とマネジメント強化
2040年には、生産年齢人口の減少と高齢化の進行が同時に進み、地域保健を担う人材確保は一層厳しさを増すと見込まれている。こうした将来像を踏まえ、厚生労働省の「2040年を見据えた保健師活動のあり方に関する検討会」は、今後の保健師活動の体制整備と機能強化の方向性を整理し、令和8年2月18日に公表した。
本とりまとめは、自治体の人口構造に応じた類型化、統括保健師および総合的なマネジメントを担う保健師の役割整理、広域的支援の強化などを柱とし、自治体保健活動の再設計を検討する材料を提示する内容となっている。
【A・B類型】人口動態の差に基づき、自治体ごとの戦略を明確化
検討会は令和6年12月から計5回の議論を重ね、令和7年度第3回会議で「とりまとめ」(案)を大筋で了承した。とりまとめは、2040年に向けた基本的方向性を示したうえで、具体的対応の考え方が整理されている。
とりまとめの特徴の一つは、2040年に向けた人口動態や医療・介護需要の変化を踏まえ、自治体を以下2つに整理し、それぞれの状況に応じた対応の方向性を示した点にある。
・A類型:高齢人口は増加するが、生産年齢人口は減少
・B類型:高齢人口・生産年齢人口ともに減少
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出典:「令和7年度第1回2040年を見据えた保健師活動のあり方に関する検討会」参考資料1 P.2(厚生労働省、2025年6月25日)
議論を通じて共有された、保健師活動の基本的な方向性
検討会では令和6年度の議論を踏まえ、令和7年度の第1回会合(6月)では、保健事業をどのように効率的・効果的に進めていくかを中心に議論が行われた。先行事例の報告も受け、広域連携や多職種連携の重要性について、改めて共通認識が確認された。
10月に開催された第2回では、地区担当制のあり方をめぐる議論が行われた。人口の流動化や生活圏の拡大により、従来の地区担当制では対応が難しくなっている地域がある一方で、各分野における専門性の高まりから、業務分担制を採用する自治体もみられる。
こうした状況を踏まえ、とりまとめでは、地区担当制と業務分担制のどちらを採用しているかにかかわらず、分野横断的な情報共有の仕組みを構造的に設けることが、地区診断機能を維持・発展させる観点から重要であると整理された。
統括保健師・総マネ保健師の役割をあらためて整理
とりまとめのもう一つの柱が、統括保健師と総合的なマネジメントを担う保健師(以下、総マネ保健師)の役割の明確化である。
統括保健師は各自治体の本庁に配置され、①保健師の保健活動の組織横断的な総合調整、②技術的・専門的側面からの指導・調整、③人材育成の推進、④健康危機管理体制の確保という4つの役割を担う。配置率は、都道府県では100%に達しているものの、保健所設置市で約9割、市町村では約7割にとどまっている。
一方、総マネ保健師は、保健所に配置され、保健所長を補佐しながら、健康危機管理体制の確保や、管轄市町村の保健活動・人材育成の推進を担う。配置率は、都道府県の約9割、保健所設置市・特別区の約8割となっている。
広域連携が鍵 「B類型」を支える都道府県の支援
小規模自治体への支援に関しては、都道府県が果たす役割の重要性が改めて提示されている。
とりまとめでは、従来の階層別研修の実施に加え、市町村の健康課題や保健活動全体を俯瞰した支援を行うことが求められるとした。
特にB類型市町村に対しては、一律の支援ではなく、各市町村の実情に応じた個別的な支援が必要とされた。人事交流などを通じた人材確保・育成支援に加え、広域連携(広域連合、連携協約、定住自立圏構想など)に市町村が取り組めるよう、支援の場を設ける必要性も謳われた。
検討会では、都道府県本庁の役割として、「管轄地域全体の健康水準の向上や健康サービスの均てん化、医療・介護連携への支援などを明記すべき」との意見も出された。
ICT活用と現場に根差した活動とのバランス
業務効率化の手段として、ICTやデジタル技術の活用、データに基づく保健活動も盛り込まれた。地域のデータ収集・分析にICTを活用することで、保健活動の質の確保と業務の効率的な遂行が期待できるとした。
一方で「保健師がICTばかりに関わって、住民の中に入っていかないということになると本末転倒」との指摘もあり、データに基づく保健活動の推進(いわゆるDXの活用)と、対人援助という保健師の本質的価値との両立が重要であるとの認識が共有された。
また、保健師の専門性を要しない事務業務の見直しも課題となった。
「行政事務も担うことで、自治体職員として求められる行政能力を身につけることも重要」というとりまとめの記載に対し、「事業化、施策化、予算案作成などは既に学んでおり、これらは保健師の専門性そのもの」との意見が出され、専門性をめぐる議論も交わされた。
現行指針の10項目は今後も保健師活動の基本に
さらに現行の保健師活動指針の「保健師の保健活動の基本的な方向性」に示された10項目の評価についても議論された。
委員からは平成25年に出された指針の「10項目の基本的な認識、重要性は変わっていないという前提で議論してきた」と発言があり、これを明示すべきと提案がなされた。他の委員からも「地区活動の礎となっている」「普遍的なもの」の意見が相次ぎ、10項目は今後も保健師活動の基本として位置づけられることが確認された。
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出典:「令和7年8月29日令和7年度保健師中央会議」資料3 P.42(厚生労働省、2025年8月29日)
「とりまとめ」に込められた期待と今後の課題
とりまとめにあたり、委員からは「今後も継続して検討すべき事項が残っている」との認識が示され、「2040年に向けた人口構造、担い手不足、DX化、健康危機管理など、保健師活動の環境変化が想定される。その変化に柔軟に対応しながら地域保健を推進していく役割が保健師に期待されていることを示してほしい」との要望も出された。
最終的なとりまとめは、座長一任で調整された後、2月18日に公開された。
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出典:「2040年を見据えた保健師活動のあり方に関するとりまとめ(概要)」(厚生労働省、2026年2月18日)
2040年まであと15年余り。人口減少と高齢化が同時進行する中、限られた人材で地域住民の健康を守り続けるため、本とりまとめは法改正を伴うものではないが、今後の自治体保健活動の方向性を示す政策的メッセージとして重みを持つ。
特に統括保健師未配置自治体や、B類型に該当する小規模市町村においては、体制の再点検や広域連携の具体化が現実的課題として浮上する可能性がある。
参 考
令和7年度 第3回2040年を見据えた保健師活動のあり方に関する検討会 資料|厚生労働省
2040年を見据えた保健師活動のあり方に関する検討会|厚生労働省
2040年を見据えた保健師活動のあり方に関するとりまとめ|厚生労働省(2026年2月18日)
令和7年度保健師中央会議 資料|厚生労働省
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