小児アレルギー性鼻炎は二つの表現型で異なる背景因子 エコチル調査が示すマーチ型と単独発症型のリスク構造
国立成育医療研究センターは、エコチル調査に参加した約8.8万人のデータを用い、小児アレルギー性鼻炎を発症した613例を解析した。その結果、アトピー性皮膚炎などに続いて発症する「アレルギーマーチ型」と、鼻炎単独発症型とでは、関与する背景因子が大きく異なることが明らかとなった。
マーチ型では男児、親のアレルギー歴、特異的IgE感作などが強く関連する一方、単独発症型では乳幼児期の発熱回数が多いほど発症リスクが低下し、「衛生仮説」を支持する結果といえる。
本知見は、乳幼児期からの個別化アレルギー管理の重要性を示唆している。
小児アレルギー疾患の増加とアレルギーマーチ進展予防の重要性
日本では、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなど、何らかのアレルギー疾患を有する者が国民の約2人に1人に達しており、患者数は近年、増加傾向にある。
小児では、乳幼児期のアトピー性皮膚炎を起点に、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎へと移行する経過が典型的であり、この連続性は「アレルギーマーチ」として知られている。
近年小児のアレルギー疾患が増加する中で、この「アレルギーマーチ」の発症・進展を予防することが重要な課題であり、そのための早期診断、早期介入の研究が進められている。
しかし、アレルギー性鼻炎がアレルギーマーチに沿って発症する場合と、単独で発症する場合で、要因が異なるのかは明らかでなかった。
そこで、本研究では国内最大規模のエコチル調査データを用いて、発症パターン別に要因解析を行った。
発症パターン別に異なる遺伝的背景と感染曝露の影響
本研究は、国立成育医療研究センターエコチル調査研究部の原間大輔氏、齋藤麻耶子氏、山本貴和子氏、深見真紀氏らの研究グループにより実施され、2025年10月21日付で科学雑誌『Allergy』に掲載された。
解析対象は、エコチル調査参加者88,307人のうち、出生から4歳までにアレルギー性鼻炎と診断され、発症時期が明確な613人である。研究チームはこれらを①アトピー性皮膚炎先行(301人)、②食物アレルギーまたは喘息先行(119人)、③鼻炎単独発症(193人)、の3つのフェノタイプ(発症パターン)に分類し、背景因子の関連を多変量解析した。

図1 多変量解析による、主な要因の調整オッズ比

図2 1歳までの発熱回数とアレルギー性鼻炎との関連(単変量解析)
出典:プレスリリース「"アレルギーマーチ"に沿ったアレルギー性鼻炎は、遺伝的要因が関係」(国立成育医療研究センター、2025年12月8日)
本研究で注目されるのは、1歳までの「発熱回数」と発症リスクの関連だ。アレルギーマーチを経て発症する群(①・②)では、発熱回数が多いほど鼻炎の発症リスクが上昇する正の相関が認められた。これは、乳幼児期の感染症曝露(発熱を指標とした)がアレルギー症状の出現や増悪と関連する可能性を示している。
一方、鼻炎単独発症群(③)では、発熱回数が多いほど発症リスクが低下するという逆の関連が示された。これは、乳幼児期の感染症曝露が免疫系の成熟に関与する可能性があり、アレルギー発症を抑制するという「衛生仮説」を裏付ける結果といえる。
発症パターンに応じたリスク評価と個別化予防への応用
アレルギー疾患は遺伝要因と環境要因が複雑に関与する多因子疾患である。近年、発症メカニズムの解明が進み、一次予防として新生児期からの保湿によるアトピー性皮膚炎の発症抑制、乳児期のウイルス感染対策による喘息予防、ダニ対策を中心とした環境整備などが有効とされている。
本研究の結果は、アレルギー性鼻炎を一括りにせず、既往歴(アトピー性皮膚炎の有無など)に応じたリスク評価が必要であることを示している。特にアトピー性皮膚炎を早期に発症している児に対しては、遺伝的素因や感作状況に留意した重点的なフォローアップが、マーチの進展阻止において重要となるだろう。
参 考
【プレスリリース】"アレルギーマーチ"に沿ったアレルギー性鼻炎は、遺伝的要因が関係 ~エコチル調査を使った全国大規模調査による報告~|国立成育医療研究センター(2025年12月8日)
Not All Rhinitis Follows the Atopic March: Early-Life Risk Factors and Implication of Infectious Disease Across Three Phenotypes in JECS Cohort|Allergy(2025年10月21日)
アレルギーについて|国立成育医療研究センター
本サイトに掲載されている記事・写真・図表の無断転載を禁じます。

