事業場の健康保持増進の在り方検討会が始動 「攻めの予防医療」を背景にTHP指針見直しへ
検討会で示された主な論点 がん・歯科・女性の健康をどう位置付けるか
第1回会合では論点の確定には至っていないものの、厚生労働省から現時点の方向性として下記が示されている。
健康保持増進措置の位置付け
必ずしも業務起因性が認められない疾病予防への取組を、事業場における健康保持増進施策としてどのように位置付けるか。
健康保持増進措置の対象
予防の対象として、現行指針では「メタボリックシンドローム」「メンタルヘルス」「加齢に伴う筋力や認知機能等の低下」などが示されているが、それだけで十分か。がん、歯周疾患、女性特有の健康課題などをどのように位置付けるかも論点となる。
保険者との連携等の方策を通じた取組の強化等
労働者の参画を促進するため、どのような方策が考えられるか。また、事業者と保険者との連携を一層強化するとともに、小規模事業場でも継続的に取り組めるよう、地域の関係機関による支援体制をどう構築するかが問われている。さらに情報通信技術の活用や施策の効果測定、国として事業者取組状況の把握も議論の対象となる。
事業場が実施する治療と仕事の両立支援の取組への支援等
がん検診受診後の治療と仕事の両立支援を含め、事業場への支援策をどのように充実させるかも議論となる見通しである。
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出典:「第1回 事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会 資料3」(厚生労働省)
関連施策と予算措置の動向
こうした「攻めの予防医療」の職域への展開は、単なる理念の提示にとどまらず、具体的な国家予算や基本計画と強力に連動して進められている点に特徴がある。
例えば、令和7年度補正予算では、「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)パイロット事業」として8.8億円が前倒しで計上された。これは、簡易な口腔スクリーニングを用いた歯科健診と受診勧奨を主体的に行う事業主や保険者等を支援するものである。
また、事業者と保険者が連携する「コラボヘルス」等の健康保持増進の取組に対しても、「エイジフレンドリー補助金」による費用補助が用意されており、積極的な活用が促されている。
さらに、がん検診においても国全体の数値目標との連携が図られている。「第4期がん対策推進基本計画」では、令和10年までに「がん検診受診率60%」とともに、「精密検査受診率90%」の達成を掲げており、後者を最優先で取り組むとしている。これを受け、職域検診においても、保険者が精密検査対象者への受診勧奨等を積極的に行えるよう、支援のあり方の検討が進められている。
このように、国の重要政策とひも付く形で、事業場への実装が図られようとしている。
今後の議論のポイントと展望 実効性のある指針への再設計
今後の検討では、こうした方向性を踏まえつつ、次回以降、取組事例のヒアリングなどを行いながら具体的な指針のあり方が議論されていく予定である。重要となるのは、理念やスローガンにとどまらず、事業場で実装可能な形で制度を構築できるかどうかであろう。
産業医や保健師、人事労務担当者など多職種の連携のもと、企業規模や業種の違いにも配慮した柔軟な仕組みづくりが求められる。本検討会は「攻めの予防医療」を職域へ実装していくための出発点となり、今後の議論の内容が、職域における健康保持増進施策の方向性に影響を与える可能性があるため、今後の議論の行方が注目される。
参 考
事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会|厚生労働省(2026年4月24日)
第221回国会における高市内閣総理大臣施政方針演説|総理の演説・記者会見など|首相官邸ホームページ(2026年2月20日)
攻めの予防医療に向けた性差に由来するヘルスケアに関する副大臣等会議|内閣官房(2025年12月25日)
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