オピニオン/保健指導あれこれ
特定保健指導における健康保険組合・事業所・労働衛生機関との連携について ~労働衛生機関の保健師としての6年間の取り組みから~

No.1 特定健診・特定保健指導の捉え方

(公財)神奈川県予防医学協会 健康創造室・相談課
後藤 瑞枝
 まず、連携を考えるときに、この特定健診・特定保健指導の事業をどう捉えるかが大切だと思っています。「高齢者医療確保法」に定められていることですのでわかっているという方も多いとは思いますが、基本的なことこそ何度も確かめて立ち返る必要があると考えています。今回は2つの視点をご紹介します。

 下の2つの図は、私が事業の計画や評価をするとき、また困ったこと迷ったことがあったときに立ち返る考え方です。どちらも『標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】』にあります。

 1)図1は特定健診・特定保健指導事業と健康日本21の関係がわかります。事業を運営していると目先の実施率の向上(図の上部)ばかりに集中してしまうことがあるかもしれません。しかし、実施率の向上や減量が目的ではないので、データ分析やそれに基づく保健指導の実施が、健康日本21(第二次)の目指す脳血管疾患死亡率の減少や虚血性心疾患死亡率の減少など(図の下部)につながるのだということをよく理解しておくことが必要だと思います。

 このように、目の前にある事業の目標だけでなくその先の目的も確認することで、手段の目的化に陥ることなく、真に価値のある保健指導ができると考えています。

<<図1 特定健診・特定保健指導と健康日本21(第2次)>>

*標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】より引用

 2)図2は、健診・保健指導と特定健診・特定保健指導の関係がわかります。健康増進に係る法律は高齢者医療確保法だけではありませんので、健康増進に係る法律を広く認識しておく必要があります。

 例えば、企業に勤める人は労働安全衛生法に基づく健診と事後指導を受ける対象であり、同時に健康保険組合に加入している方が多いので高齢者医療確保法に基づく特定健診・特定保健指導も受ける対象となります。

 このようにひとつの事業だけに集中せずに俯瞰でみてみると、1人の対象者があらゆる事業の対象になっていることがわかるのではないでしょうか。

<<図2 健診・保健指導と特定健診・特定保健指導の関係>>

*標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】より引用

 もし、それぞれの事業の実施者が自身の事業だけを考えていては、同じ対象者に同じような保健指導を行い、本人の時間を無駄にしてしまうかもしれませんし、実施者にとっても効率の良い保健指導とはいえません。また、複数の健康課題を抱える対象者に対しそれぞれの実施者が異なる保健指導を行っては、優先度は考慮されず対象者を困惑させてしまうかもしれません。

 しかし、事業や関係する法律の全体像を理解し、それぞれの特徴をふまえ連携することができれば、対象者にとっても実施者にとっても有効な健康増進策となると考えています。そもそも看護とは対象を全人的に捉えるものですので、わたしたち看護職はその観点を大切にし、事業に携わりたいなと思っています。

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