科学的データで見る「ラーメンを食べる頻度」と「健康リスク」の関係
ラーメンは昔から日本で最も人気のある食べ物の一つで、国民食と言ってよいだろう。ラーメン巡りが趣味という人も多く、週に数回食べる人もめずらしくはない。しかし、ラーメンは麺にもスープにも塩分を含む高塩分食だ。ラーメンの食べ過ぎに健康リスクはないのだろうか? 自治医科大学と山形大学が行った、ラーメンと健康に関する最新の科学的研究を紹介する。
ラーメン店が多い都道府県は、脳卒中による死亡率が高い?
日本人の食塩摂取基準量(1日に摂ってよいとされる塩分の量)は成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされている1)。一方、京都府立医科大学の研究では、ラーメン1食あたりの食塩量は平均6.7gであった2)。この量は成人女性の1日あたりの食塩摂取基準量を超えている。成人男性の基準量に対しても近い数字であるため、他の食事と合わせると容易に基準量を超えてしまうことが考えられる。
塩分の摂り過ぎは脳卒中3)や胃がん4)などのリスクを高めることがこれまでに証明されており、度が過ぎたラーメン摂取はこうした疾患につながる可能性が否定できない。
自治医科大学の松薗構佑氏らは2019年、各都道府県のラーメン店の数と脳卒中による死亡率との関連性を調査した。調査結果は2019年9月4日付の学術誌『Nutrition Journal』で発表されている5)。
同研究ではラーメン店のほか、ファストフード、フランス/イタリア料理、うどん/そばという4種類の外食店について、各都道府県における人口当たりの店舗数(普及率)と脳卒中死亡数(死亡率)との関連を分析した。
分析の結果、ラーメン店普及率が高い都道府県と脳卒中死亡率の高い都道府県が統計学的に一致した。具体的には東北(特に日本海側)、北関東、南九州でラーメン店普及率と脳卒中による死亡率が高く、近畿と南関東ではどちらも低かった。なお、ラーメン以外の3種類の店舗では店舗普及率と脳卒中死亡率は一致していない。
同研究では、ラーメンと脳卒中が直接結びつくことを証明しているわけではない。あくまでラーメン店舗普及率と脳卒中(発症ではなく)死亡率の関係である。ただし、論文著者は、塩分・炭水化物を多く含むラーメンと、脳卒中の中でも特に予後不良となりやすい脳出血および心原性脳梗塞との関係が懸念される、としている。
科学的データを理解したうえで賢く付き合うことが大切
山形大学と山形県立米沢栄養大学の研究チーム(主任研究者:山形県立米沢栄養大学講師 鈴木美穂氏)は、ラーメンを食べる頻度と死亡リスクの関連について大規模な研究を行った。試験の結果は2025年8月4日付で学術誌『The Journal of Nutrition, Health and Aging』に発表されている6)。
対象は40歳以上の6,725名(男性2,349人、女性4,376人)。研究チームは対象者に対して、年齢、体重、喫煙、アルコール摂取、高血圧、糖尿病の有無といった背景因子とともに、ラーメンを食べる頻度やスープ摂取量を聞くアンケート調査を行った。そのうえでラーメンを食べる頻度を、月1回未満、月1~3回、週1~2回、週3回以上の4群に分け、摂取頻度と死亡率との関係を追跡調査した。
ラーメンを食べる頻度は、月1~3回が最も多く、46.7%、週3回以上は7.4%であった。ラーメンを食べる頻度が高いほど、肥満(高BMI)、男性、若年者、喫煙者、アルコール摂取者、スープを50%以上飲む人の割合が増え、糖尿病や高血圧を患う割合も高くなった。
ラーメンの摂取頻度と死亡率について全体としては統計学的な関係は認められなかったが、週3回以上食べる群では、週1〜2回食べる群と比べて死亡リスクが1.52倍高い傾向が見られた。週3回以上食べる群をさらに細かく見てみると、70歳未満群、アルコール摂取群、スープを50%以上飲む群で死亡リスクの上昇が統計学的に示されている。
紹介した2つの研究は、地域レベル・個人レベルでラーメンと健康リスクの関係を科学的に確認したものだ。これらの科学的データを理解し、ラーメンを食べる頻度や食べ方、ラーメンを食べる日の他の食事の塩分量に配慮するなど、おいしいラーメンと賢く付き合っていくことが大切である。
参 考
1)日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)
2)Na/K Ratio of Ramen Dishes Served in Ramen Restaurants in Kyoto City, Japan (Dietetics 2025年6月3日)
3)Dietary Sodium to Potassium Ratio and Risk of Stroke in a Multiethnic Urban Population: The Northern Manhattan Study (Stroke 2017年11月11日)
4)Salt and salted food intake and subsequent risk of gastric cancer among middle-aged Japanese men and women 、90 ( Br J Cancer 2004年1月6日 )
5)Ramen restaurant prevalence is associated with stroke mortality in Japan: an ecological study. (Nutr J 2019年9月4日)
6)Frequent Ramen consumption and increased mortality risk in specific subgroups: A Yamagata cohort study.(J Nutr Health Aging 2025年8月1日)
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