トピックス・レポート

「持続可能な産業保健」をめざして
―第98回 日本産業衛生学会、仙台で開催


 2025年5月14日(水)から17日(土)にかけて、「第98回日本産業衛生学会」が仙台市内の複数会場(仙台国際センター展示棟、川内萩ホール、青葉山公園仙臺緑彩館、仙台市博物館)で開催されました。

 医師や保健師をはじめ、産業保健の現場で活躍する専門職らが多数来場し、未来に向けた知見と実践の共有が行われました。

「第98回 日本産業衛生学会」公式サイト

生成AIから災害対策まで 多様なトピックで未来を描く

 第98回 日本産業衛生学会(企画運営委員長:黒澤 一氏/東北大学)は、「持続可能でよりよい世界を目指す産業保健」をテーマに開催され、産業保健に関わる多岐にわたる分野の最新の研究成果や実践事例が発表されました。
 生成AIなどのデジタル技術の応用、個別化ヘルスケアによる予防と健康管理の進展、多様な労働環境における健康支援のあり方など、産業保健の定番テーマから最先端の話題まで幅広くカバーされ、活発な議論が展開されました。

 なかでも注目を集めたのが、以下の3つのメインシンポジウムです。

メインシンポジウム1「最先端のテクノロジーが拡げる産業保健の可能性と課題」

 VR、AI、ロボット技術といった革新的技術が職場の健康管理をどう変革し得るのかについて議論されました。
 北村喜文氏(東北大学)は、空間の整合性と感覚の不整合性を利用したリアル/フィジカル空間とバーチャル/サイバー空間の融合による新しい仕事環境の可能性を紹介。杉田典大氏(東北大学)は、ウェアラブル機器を使わずに生体情報を取得する非接触計測(ウェアラブル"レス")の展望を語りました。
 さらに、平田泰久氏(同大)は、JSTムーンショットプロジェクトとして進められているAIロボットによる個別健康支援とウェルビーイングの向上、さらに労働環境での人とロボットの共生に関する研究を紹介しました。

メインシンポジウム2「個別化ヘルスケアと産業保健」

 生活習慣や遺伝情報をもとにした個別対応の可能性が多角的に論じられました。
 泉 陽子氏(東北大学)は、多因子疾患の予防における個別化の意義を解説し、寳澤 篤氏(東北大学)は、遺伝要因と生活習慣の関連から個別化ヘルスケア時代のおける生活習慣病予防を論じました。
 立道昌幸氏(東海大学)は就業配慮の観点から、李 怡然氏(東京大学)は倫理・法制度・社会的課題を含む多面的な視点から考察を加えました。

メインシンポジウム3「過去の大災害を知り、次の大災害に備える」

 東日本大震災や能登半島地震の経験をふまえ、災害時における産業保健の実際が共有されました。
 石井 正氏(東北大学病院)、小早川義貴氏(国立病院機構本部DMAT事務局)、安部仁美氏(湘南医療大学)が、医療機関やDMAT、中小企業における対応や健康影響への備えについて報告。
 西澤依小氏(JR西日本)は、能登半島地震の経験を踏まえ、鉄道業における災害時の現場対応を紹介しました。

 日本産業衛生学会では、100年先の未来を見据えた「災害産業保健」の構築に向けた取り組みが進められており、参加者に災害に備える産業保健体制構築の必要性が伝えられました。

*  *  *

 本学会ではこのほかにも、企業の実務者や専門職による実践報告、若手研究者による発表など、現場と研究をつなぐ多数のセッションが行われ、参加者同士の活発な意見交換がなされました。

 当日の講演の一部は、2025年6月17日(火)~7月7日(月)までオンデマンド配信が予定されています。現地に来られなかった方や、あらためて講演を振り返りたい方は、ぜひ視聴をご検討ください。

「第98回 日本産業衛生学会」公式サイトはこちら

今後の開催情報

第35回 日本産業衛生学会全国協議会(リンク

  • テーマ:すべての労働者が元気に働ける産業保健をめざして
  • 会 期:2025年11月27日(木)~11月29日(土)
  • 会 場:あわぎんホール、シビックセンター(徳島県徳島市)

第99回 日本産業衛生学会(リンク

  • テーマ:すべての働く人への産業保健
  • 会 期:2026年5月27日(水)~30日(土)
  • 会 場:グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)

日本産業衛生学会

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