トピックス・レポート
働く人に伝えたい!薬との付き合い方
-薬・サプリとセルフメディケーション-

⑫セルフメディケーションの重要性【最終回】

日本くすり教育研究所

 本連載では「大人」でも意外と知らない「薬」の知識やセルフメディケーションの基本を、加藤哲太先生(日本くすり教育研究所 代表理事)にご解説いただきます。

 保健指導や健康だよりで取り上げたい「薬」の話題を紹介しますので、ぜひご自身の学習、業務での情報発信にご活用ください。

これまでの「働く人に伝えたい!薬との付き合い方」

「一人ひとり」がいかに健康に生きるかが問われている

 生活習慣病(糖尿病・脳卒中・心臓病・脂質異常症・高血圧・肥満など)の増加が社会問題となっている現代の高齢化社会では、一人ひとりが日々いかに健康に生きるかが問われています。

 わが国では、国民の健康増進を目的とした「健康日本21」が2000年から開始され、2024年度からは第三次計画が実施されています。その目標は「国民の健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されず、元気に自立して過ごせる期間)を延ばす」ことです。

健康な人生を過ごすために

 市民一人ひとりが生活習慣の改善を実践し、健康・疾病・薬に関する知識を高め、身体の不調に適切に対応し、さらに定期的な健康チェックを行うことが重要です。そこで注目されているのが以下の能力です。

  • 適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠・休息を心がけ、体調管理(体温・体重・血圧等の測定、健康診断受診等)を通じて、日頃から健康を管理する能力(セルフケア
  • 軽度な身体の不調に対して市販薬を適切に使用して対応する能力(セルフメディケーション
  • 症状の改善が思わしくない場合に医療機関等の受診を適切に判断できる能力

 これらの能力を高めるためには、個人の努力だけでなく、医師、薬剤師、保健師、栄養士、看護師等の医療・保健指導に関わる専門家による高度で的確なサポートが必要です(図1)。

一般市民の役割

身体は「自分自身のもの」であり、他人や医療関係者任せにしないことが基本です。

  • 自分の生活改善を実践する
  • 自分の健康、病気、薬に関する知識を高め、セルフメディケーションを実行する
  • 自分の健康状態を常にチェックする
これらの取り組みにより、市民のセルフメディケーション能力が向上します。

医療・保健指導従事者の役割

セルフメディケーションを支援する重要な役割を担います。
市民への適切な指導と支援を通じて、医療・保健指導従事者自身の能力も向上していきます。

図1 健康な人生を過ごすために:セルフメディケーションの重要性

セルフメディケーションの実施

 厚生労働省は「セルフメディケーションを適切に進める前提として、①セルフケアの推進(健康に関する関心、正しい理解、予防・健康づくりの推進等)②OTC薬の適切な選択・使用に関する助言を含む相談体制の構築、、③メーカーによるOTC医薬品の分かりやすい情報提供を重要なポイントとして挙げています(図2)。

図 セルフケアの推進及び適切なセルフメディケーションの実施に向けて

図2 セルフケアの推進及び適切なセルフメディケーションの実施に向けて[1]


[1]第1回セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会 資料
 資料2「厚⽣労働省におけるセルフケア・セルフメディケーション推進の取組」P.9(厚生労働省)

セルフメディケーションの実践例

 身近に起こり得るシチュエーションを想定した、セルフメディケーションの実践例を紹介します。
 天候不順や仕事の忙しさなどから風邪で体調不良(37.5℃の微熱)になったとします。そのような状況では、OTC医薬品を上手に利用し、自分で手当てするセルフメディケーションが役立ちます。対応法には、さまざまな選択肢があります(図3)。

図3 セルフメディケーションのフローチャート

図3 セルフメディケーションのフローチャート

 重要なのは、身体はかけがえのない「自分自身のもの」であり、他人や医療関係者任せにするのではなく、自分の健康状態を見つめ、健康・疾病・薬に関する知識を高め、最適な方法を選択して実行することです。これがセルフメディケーションの本質です。

セルフメディケーションの効果

  • 毎日の健康管理の習慣が身につく
  • 医療や薬の知識が身につく
  • 軽度の疾患の場合、医療機関受診の手間と時間が省かれる
  • 医療費の適正化につながる

 

参考:WHOで定義される「セルフケア」「セルフメディケーション」

セルスケア:Self-care
Self-care is the ability of individuals, families and communities to promote health, prevent disease, maintain health, and cope with illness and disability with or without the support of a health worker.
医療従事者や介護従事者の支援の有無にかかわらず、個人や家族、地域社会が、自らの健康を促進・維持し、病気を予防し、病気に対処する能力のことです。

セルフメディケーション:Self-medication
Self-medication is the selection and use of medicines by individuals to treat self-recognised illnesses or symptoms. (one element of self care)
自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること(セルフケアの一つの要素)です。

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