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MASLDに伴う死亡リスクを高める3種類の健康問題

 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)で、かつ、高血圧、糖代謝異常(2型糖尿病や糖尿病予備群)、HDL(善玉)コレステロール低値(低HDL-C血症)のいずれかが該当すると、死亡リスクが有意に高くなることを示すデータが報告された。米南カリフォルニア大学のMatthew Dukewich氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に9月17日掲載された。

 この研究で明らかになった特筆すべきことの一つは、MASLDに伴う死亡リスクを最も大きく押し上げる併存疾患が、高血圧であることが示された点だ。論文の筆頭著者であるDukewich氏は、「これまでMASLD患者にとって最も差し迫った健康問題は、糖尿病だと一般的に考えられていたため、この発見は重要だ」と、大学発のリリースの中で述べている。

 論文に記されている研究背景によると、現在、世界人口の3分の1以上がMASLDに罹患しているという。MASLDは肝臓に脂肪が蓄積することで発症し、進行すると肝臓の繊維化を引き起こして肝臓にダメージを与える。研究者らは、MASLDは通常、肥満、糖代謝異常、高血圧、低HDL-C血症、高中性脂肪血症といった健康問題を伴うことが多いとしている。

 今回の研究では、これらMASLDに伴いやすい健康問題のうち、どれが最も死亡リスクに影響しているかを明らかにするため、1988~1994年および1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータが解析に用いられた。NHANES参加者のうち、脂肪肝指数(FLI)が60超で前記の疾患のいずれか1種類以上を有する場合をMASLDとして、これに該当する2万1,872人を追跡し死亡リスクを検討した。ベースラインにおいて、平均年齢50歳、男性53%、BMI33.6であり、99.5%が過体重・肥満、67%が高中性脂肪血症、58%が高血圧、55%が糖代謝異常、40%が低HDL-C血症だった。

 解析の結果、高血圧はMASLD患者の死亡リスクを39%上昇させ、糖代謝異常は26%、低HDL-C血症は15%上昇させていた。この結果について論文の上席著者である同大学のNorah Terrault氏は、「MASLDは複雑な疾患だ。われわれの研究は、MASLD患者の治療において、医師が何に注意すべきかという点に新たな光を当てている。MASLDのどの側面が予後不良につながる可能性があるかを知ることが、患者に最善の治療を提供するのに役立つ」と話している。

 この研究では、これらの健康問題が積み重なった場合に、死亡リスクがより高くなることも明らかになった。例えば、過体重・肥満の患者が2種類の健康問題を抱えている場合、死亡リスクは66%上昇し、3種類抱えている場合は80%上昇、そして4種類の健康問題を抱えている場合のリスクは2倍以上に上ることが示された。このほかにも、MASLDに伴う死亡リスクは、BMIの上昇に伴い高まることも明らかにされた。

 著者らは、「これら一連の結果は、個々のMASLD患者が抱えている心血管代謝関連リスク因子を把握することが、予後予測に役立つことを意味している。そのようなリスク評価によって、MASLD患者に併存している健康問題の治療優先順位を明確に決定できるのではないか」と総括している。

(HealthDay News 2025年9月19日)

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