オピニオン/保健指導あれこれ
中小企業の安全で元気な職場つくりを支援するために

No.2 キーワードは“連携、組織化、自主的対応”

愛知医科大学医学部衛生学講座 教授
柴田 英治
 どこと連携するのか

 キーワードの第1は連携です。

 単独の組織や職能で中小企業の安全衛生を守るのは困難です。何と言っても主役である中小企業の労使での活動が最も重要ですが、それを支えるのは様々な専門職と行政機構、民間の組織で、これらが重層的に関与することが大切です。

 また、決まった連携の仕方があるわけではありません。地域、業種、取り扱う物質、生産の仕方などによって千差万別の連携のあり方が考えられます。

 例えば地場産業などでは同業者のつながりが強く、商品開発やイベントの計画など様々な課題での連携がすでに行われています。

 私が勤めている愛知医科大学は窯業で有名な瀬戸市に隣接する長久手市にあります。窯業関連の同業者組合では何とかして職人さんたちのじん肺を防ごうという運動から始まった地元密着型の労働衛生機関が現在も活動しています。

 大企業であっても全国に分散する営業所への支援はなかなか難しいものです。本社勤務の産業保健スタッフが苦労しながらも健康診断の事後措置などのために、営業所と連絡をとることは、中小事業所支援という分野では大変重要なことと言えます。

 第2のキーワードは組織化です。一見バラバラに見える中小事業所を束ねることを意味しています。束ねられた組織体との連携を図ることが、効率とビジネス化を生むのです。

 例えば製造業では工業会、工業組合などの名称で同業者の全国的な組織体が存在し、当該業種の重要性や社会への貢献をアピールするなど様々な活動を行っています。

 また、業種を問わず、中小企業経営者の組織体も存在します。地域の商工会、商工会議所などは自営業も含めた組織であり、地域の人々へのサービス、地域経済を支えるという意味では大変重要な役割を果たします。一つ一つの事業所は小さくても、様々な組織が存在し、その組織との連携を図ることで産業保健の眼を届けることは可能です。

 しかし、実際にはうまくできているところは全国的にも多いとは言えません。理論的には可能であっても現実には様々な障害があり、これを克服しなければならないところが難しいのです。

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