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高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善

 高齢者がスマホアプリなどのデジタル技術を利用することは、認知能力の低下を抑制し、認知症を予防するのに役立つ可能性があるという、新しい研究が発表された。

 「デジタル技術の使用は、認知的老化に悪影響をもたらすのではなく、むしろ改善につながる可能性があります」と、研究者は述べている。

 高齢者がインターネットを使うことが、健康に気をつける行動や健康管理に良い影響を与える可能性があることは、日本の研究でも示されている。

高齢者のデジタル技術の利用は認知症予防に役立つ可能性が

 高齢者がスマホアプリなどのデジタル技術を利用することは、認知能力の低下を抑制し、認知症を予防するのに役立つ可能性があると、米ベイラー大学などが発表した。

 デジタル技術の利用は、高齢者の認知障害のリスクを58%低下させることが示された。

 「デジタル技術の使用は、認知的老化に悪影響をもたらすのではなく、むしろ改善につながることが示されました」と、同大学の心理学・神経科学部のマイケル スカリン氏は言う。

 生涯にわたり人工知能(AI)などのデジタル技術を過剰に利用することは、むしろ認知能力を低下させる可能性があるという「デジタル認知症」仮説が言われているが、今回の研究では、デジタル技術との関わりは認知的レジリエンス(回復力)を育む可能性が示唆された。

 研究グループは136件の研究を特定し、うちベースラインの平均年齢が68.7歳の成人41万1,430人を対象とした57件の研究をメタ解析した。

高齢者がデジタル技術を利用すると脳を鍛えられる?

 デジタル技術の使用は、座ったまま過ごす時間の長い生活につながりやすく、身体的にも精神的にも不活発を促すことが懸念されている。

 また現在の高齢者は、コンピューター、インターネット、スマートフォンといった技術革新に最初にふれた世代であり、テクノロジーは常に変化しており、その利用は困難をともなうことも考えられる。

 新しいソフトウェアのアップデート、インターネット接続でのトラブル、ウェブサイトの広告のフィルタリングなど、デジタル技術を利用しようとすると、さまざまな絶え間ない適応が求められる。

 「今回の調査結果は、一部の人にとっては意外なものかもしれません」と、スカリン氏は言う。

 「実際に、中高年以上の人からよく聞かれるのは、"このコンピューターは、本当にイライラさせてくれる、使いこなすのは難しい"といった、ネガティブなつぶやきです」。

 「しかし、そうした困難は、実は認知能力に対する課題を反映するもので、たとえその瞬間は気分が良くなくとも、脳を鍛えることにつながり、認知能力の低下を抑えるのに有益である可能性も考えられます」としている。

デジタル技術が高齢者の孤立を減らし社会的なつながりを高める可能性も

 デジタル技術が、社会や他者とのつながりの機会を広げ、コミュニケーションと交流を活発にすることも見逃せない。

 メール、メッセージアプリ、ビデオ通話などのソーシャルネットワークは、とくに家族と定期的に会うことができない人々にとって、コミュニケーションを維持するのに役立っている。

 「インターネットを利用すれば、話すだけでなく、顔を見ることもでき、写真を共有したり、メールのやりとりも可能性になります。上手く活用すれば、世代を超えて家族などとつながることができ、孤独感を軽減できる可能性があります」と、スカリン氏は指摘する。

 社会的なつながりが良好であることは、高齢者の孤立を減少し、認知機能の低下を抑え、認知症リスクを低下させることと関連しているとはこれまでに立証されているとしている。

 「もしもあなたの親や祖父母が、デジタル技術から遠ざかっているなら、スマートフォンやタブレットを使い、メールやメッセージを交換し、写真を管理し、予定を書き込むカレンダーなどを使うことを教えてあげてはいかがでしょうか」と、スカリン氏は述べている。

 「まずは簡単なものからからはじめて、彼らや彼女らが学んで使いこなせるようになるまで、辛抱強く見守ってあげることが大切です」としている。

インターネットを利用している高齢者は健診受診率が高い
高齢者の健康行動や健康管理に良い影響を与える可能性が

 高齢者がインターネットを使うことが、健康に気をつける行動や健康管理に良い影響を与える可能性があることは、日本の研究でも示されている。

 東京科学大学や千葉大学などの研究グループは、2016年に行われた日本老年学評価研究(JAGES)のデータを使い、65歳以上の1万1,495人の高齢者を対象に調査した。

 年齢や生活習慣の違いをできるだけそろえる統計的な方法(傾向スコアマッチング)を使い、年齢や生活習慣などの違いの影響をとりのぞいた。

 その結果、インターネットを使っている高齢者の方が、そうでない高齢者よりも、健康診断を受ける割合が高いことが示された。インターネットを利用する高齢者は、健診受診率が9%高かった

 「インターネットを使うことは、高齢者の健康管理に良い影響を与える可能性があると考えられます。とくに都市部では、インターネットがより普及していて利用しやすいため、健康診断を受ける人が増えていると考えられます」と、研究者は述べている。

 「高齢者がインターネットを活用しやすい環境を整え、たとえばオンラインで健康に関する情報を提供したり、健康診断の予約をしやすくしたりすることで、より多くの人が健康診断を受けるようになるかもしれません」。

 「また、インターネットを活用することで、都市部と地方の医療の格差を減らしたり、医療サービスをより効率的に提供したりすることも可能になると考えられます」としている。

 研究は、東京科学大学大学院総合診療科の安藤悠哉氏や千葉大学予防医学センターの長嶺由衣子氏らによるもの。研究成果は、「BMC Public Health」に掲載された。

Digital Dementia: Does Technology Use by 'Digital Pioneers' Correlate to Cognitive Decline? (ベイラー大学 2025年4月14日)
A meta-analysis of technology use and cognitive aging (Nature Human Behaviour 2025年4月14日)
JAGESプロジェクト (日本老年学的評価研究)
Association between internet use and annual health checkups among older Japanese adults: propensity score-matched analysis, Japan gerontological evaluation study cross-sectional study 2016 (BMC Public Health 2024年9月27日)

[Terahata]
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