【連載完結】産業保健領域での災害対策を考える
―産業保健職に求められる"平時からの備え"
地震や風水害、感染症など、企業活動に影響を及ぼすさまざまな災害リスクに対し、職場の「健康と安全」を守る産業保健職の役割が今、改めて注目されています。
本連載では、産業保健職が災害対応にどう備え、どう関わるべきかを、産業医科大学 災害産業保健センターの立石清一郎先生に3回にわたってご解説いただきました。
危機時に備えた知識と実践的視点を整理する内容となっています。ぜひご一読ください。
本連載について
通常、産業保健活動はリスク対策の一環として実践されています。例えば、健康診断の事後措置は今の仕事と健康状態のマッチングを見ていますし、化学物質管理は化学物質のハザードへのばく露防止を定型作業の中で管理しています。
しかし、災害が発生したら普段とは違う仕事、たとえば事務作業者が炎天下で人の誘導業務など、に従事する必要がありますし、化学物質は施設が重大な損壊を受けたら平時と異なるばく露状況が発生し保護具などの適応範囲も大きく異なってきます。
災害はこのように急激なリスク変更が起こるので、その健康影響を最小化するために体系化された学問が災害産業保健です。
本連載では外部支援組織である産業医科大学 産業生態科学研究所 災害産業保健センターの紹介や、企業における災害への安全健康面からの備えについて解説します。
No.1 産業医科大学 産業生態科学研究所 災害産業保健センターについて
災害時の労働者の健康確保に関する実践的支援・調査研究を行う拠点として、産業医科大学の災害産業保健センターの役割を紹介。
設立の経緯やミッション、令和6年能登半島地震における災害産業保健センターの活動紹介を通じて、企業や自治体の災害対策意識の向上・事前協定の必要性を明らかにしています。
No.2 災害時における労働者の健康確保に向けた産業保健職の役割と準備
災害時において労働者の健康と安全を守るために、産業保健職が平時から行うべき準備を詳述。
リスクアセスメント、災害対応方針の策定、季節ごとの健康対策、個人保護具や感染対策物資などの備品準備に加え、災害の発生を前提とした現実的かつ多角的な準備の重要性が語られています。
No.3 産業保健職に必要な事業継続計画(BCP)の知識
事業継続計画(BCP)と災害対応マニュアルの違いを明確にしながら、BCP策定時に健康管理の視点を盛り込む重要性を解説。
災害時に増加する健康障害要因や、「RTO(目標復旧時間)」「RLO(目標復旧レベル)」を踏まえた対応レベルの決定など、従業員の健康を守るための観点が、BCPにどう盛り込まれるべきかを示しています。
オピニオン執筆者ご紹介
立石 清一郎
産業医科大学 産業生態科学研究所 災害産業保健センター 教授
略 歴
2000年 産業医科大学医学部卒業
2009年 産業医科大学産業医実務研修センター助教
2017年 産業医科大学保健センター 准教授
2017年 産業医科大学病院両立支援科診療科長
2017年 産業医科大学病院就学就労支援センター副センター長
2021年 産業医科大学産業生態科学研究所災害産業保健センター教授 現在に至る
資 格
日本産業衛生学会専門医、労働衛生コンサルタント、認定事業継続管理者、など
行政関連業務
福島原発廃炉等作業員の健康支援相談窓口相談員、新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 罹患後症状のマネジメント編集委員、東京iCDC後遺症タスクフォース委員、など
参考情報
保健指導リソースガイド 特集ページ「災害/感染症/BCP対策」


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