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【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少

 5月17日は、日本高血圧学会と日本高血圧協会が定めた「高血圧の日」だ。

 高血圧の国内の推定患者数は4,300万人とされている。うち3,100万人は生活習慣改善や治療の開始や強化が必要とされている。

 運輸業界はとくに、過労やストレス、交通事故のリスク、人手不足などの課題が多く、ドライバーは不規則な食生活などにより血圧が乱れやすく、他業種に比べて肥満の割合も高い。

 その運輸業界で、健康増進の施策を進め、高血圧者の二次健診の受診の促進、乗務前の血圧測定、血圧管理への理解促進などの具体的な対策をした結果、成果があらわれたと発表された。

運輸業界の高血圧や健康管理に対する問題意識は高い

 高血圧の予防・改善は、脳卒中などの循環器疾患を予防するうえで重要で、適切な治療によりコントロールできるにも関わらず、国内の推定患者数は4,300万人と言われている。うち3,100万人は生活習慣改善や治療の開始や強化が必要とされている。

 運輸業界でも、高血圧や健康管理に対する問題意識は高まっており、国土交通省は事業用自動車の事故を削減するために、健康に起因する事故を防止する取り組みをしている。

 運輸業界では、高血圧と関連の深い肥満に該当する人の割合が高い。健康保険組合連合会(健保連)の調査によると、肥満者の割合は運輸業では47.9%に上る。メタボリックシンドロームの割合も、建設業は40.3%に上る。

タクシー乗務員の高血圧対策や健康増進のために業務提携を開始

 そこで、同じ課題意識をもつ日本交通と製薬企業のノバルティス ファーマは、タクシー乗務員の高血圧対策をはじめとする健康増進のために、2024年に業務提携を開始した。

 日本交通によると、タクシー乗務員は不規則な食生活により血圧が乱れやすく、コントロールが難しい環境にある。同社は「乗務員の健康なくしては、安全な運行は成しえない」という考えのもと、全社横断的な健康増進施策を進めており、その一環として高血圧者の二次健診の受診の促進、乗務前の血圧測定、血圧管理への理解促進などの対策を進めているという。

 労災保険では、職場の定期健康診断などで異常の所見が認められた場合に、脳血管・心臓の状態を把握するために、より詳しい二次健康診断が行われ、脳・心臓疾患の発症の予防をはかるための特定保健指導が行われる。

血圧値などの検査値が改善 乗務員の健康意識も向上

 業務提携の成果があらわれ、このほど昨年秋と今年春の健診で、血圧値だけでなく各検査値の改善がみられ、乗務員の健康意識の向上につながっていると両社は発表した。

 具体的には、二次健診者が4%から1.7%に減少し、基準値以上の血圧で乗務が停止される乗務員の数が42人から10人に減少した。

 検査値の改善だけでなく、高血圧を治療を受けていない人の減少や、会社全体での血圧管理の意識も醸成され、新しい血圧測定システム導入など積極的に健康向上への取り組みを行っているという。

 両社では業務連携の具体的取り組みとして、「タクシー乗務員向け 高血圧対策セミナー」を2回にわたり開催した。

 2024年7月には「お客様のため、あなた自身のための血圧管理」と題し、同年12月、「高血圧から身を守る!~家庭血圧測定のススメ~ 」と題しそれぞれ開催した。これにより、タクシー乗務員の血圧管理に対する意識は高まったとみられる。

 この講習会で講師を務めた日本高血圧協会理事長であり、大阪ろうさい病院総長の樂木宏実先生は以下のように語っている。

 労働者の体調に関連した事故は、運輸業界では他社を巻き込む交通事故につながるという観点から、社会的に高い関心が寄せられています。乗務員の健康管理は、事故防止だけでなく、乗務員本人の健康管理につながります。
 労働人口に占める高年齢者の割合が増えてきているなかで、ますます重要になる取り組みです。会社全体で血圧正常化の機運が生まれれば、乗務前の血圧測定も、手間のかかる義務ではなく、自分自身を守り、お客様を守り、会社に好循環を生むルーチンと思ってもらえるようになると思います。
 両者の連携による成果が、すでに個人にも会社にもあらわれているようで、日本全体にこのような取り組みが広がってほしいと願っています。

 ノバルティス ファーマでは、「今回の提携によって得た成果を、まず運輸業界全体に広げられるよう関係者とともに、健康が起因する事故の減少にむけて取り組みます。今後も製薬企業の枠組みを超えて、適切な医療を必要とされる患者さんに必要なタイミングで届くよう、医療従事者の皆様と連携し、環境整備にも尽力してまいります」と述べている。

関連情報
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が 健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より (保健指導リソースガイド 2025年2月12日)

[Terahata]
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