オピニオン/保健指導あれこれ
中小企業の安全で元気な職場つくりを支援するために

No.2 キーワードは“連携、組織化、自主的対応”

愛知医科大学医学部衛生学講座 教授
柴田 英治
 「生活習慣病」の「生活」に「労働」は含まれているか

 生活習慣病対策を主な内容としている特定保健指導は地域でも職域でも保健師が主力となって行われています。飲酒、喫煙、食生活、運動などについて問題点を洗い出し、本人の気づきを促しながら、自ら改善できるように支援していくのが基本です。

 では、保健師が本人への聴き取りを行う際に働くことが及ぼす健康への影響は視野に入っているでしょうか。働く人々の生活の中には出勤から帰宅までの時間が抜け落ちることはないでしょうか。

 職場でどんなものを取り扱い、どんな環境の中で何をしているのか、同僚、上司、部下との人間関係、残業の有無、時間や納期に追われることはないのか、生産現場で働く人々が取り扱う化学物質、原料はどのようなもので、健康影響はないのかなどの問いかけは生活習慣病の「生活」の枠に入りますが、ここへの突っ込みは不足していないでしょうか。

 一昨年印刷工場での胆管癌の多発事例が社会に大きな衝撃を与えました。それぞれの被害者は医療機関での治療を受けているはずですが、職場環境について十分な聴き取りは行われていたのかも本来検証しなければならないとの思いを強くしています。この点が早い段階で追及されていれば、あれほどの被害に発展することは避けられたのかも知れません。

 地域保健で生活習慣病対策を行う際には職域での健康リスク要因への注意を怠るべきではありません。働き盛りの人々にとっては生活習慣の中でも最も重要な位置を占めているのは職場での活動です。今回の胆管癌問題は忘れてはならないこの基本を改めて思い出させることになりました。健康支援に携わる人々への警鐘と受け止めるべきではないでしょうか。

アルコールと保健指導
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