業界キーパーソン直撃インタビュー保健指導のみちしるべ
全国健康保険協会(協会けんぽ)

第1回 全国健康保険協会(協会けんぽ) 【前編】

中小企業と二人三脚で健康管理 協会けんぽの保健師の活動とは(2)

 今回、インタビューに入る前に、木村氏が第一期特定保健指導について、事前に各領域の方々に課題や今後の展望をヒアリングしたものについて報告しました。
 ○調査対象領域:
  医療保険者(単一、総合、共済、国保)、自治体、保健指導専門業者、
  健診機関、保健指導代行業者
 ○調査対象者:
  保健師、管理栄養士、運動指導士、事務職

【参考資料】
リンケージ 特定保健指導「生の声」[PDF](一部抜粋)

木村:特定保健指導の現状について、資料を見てのご感想をお聞かせください。

六路:業界内のヒアリング資料は、良く整理されていると思うと同時に、様々な領域の方が抱えられている問題、課題の多くは協会けんぽも同様に抱えているものと感じます。

  

木村:それではテーマ毎にお伺いします。まずは『ヒト』の問題について。

六路:従来、中小企業等で働く従業員やその家族の皆様が加入されている政府管掌健康保険は、構成労働省の外局である社会保険庁で運営していましたが、平成20年10月に新たに全国健康保険協会(協会けんぽ)が設立され、協会が運営することになりました。

 保健師は、財団法人社会保険健康事業財団から移行し、同じタイミングで特定保健指導の制度も施行されました。移行時には、これまでは健診受診者全員を対象に行ってきた保健指導とは異なり、2割という対象者に対し行う特定保健指導に全国の支部からは、今までの保健指導実施が行き届かなくなることへの懸念も生まれていました。

※協会けんぽの設立背景

参考資料:全国健康保険協会

六路:特定保健指導の実施に対して、当初は大変苦労していました。そこで、制度施行3年目の平成22年度に協会けんぽとしての基本方針をつくり、「組織」として特定保健指導の実施に注力することを徹底させ実施率向上を実現しました。
 現場の保健師それぞれが「個人」としての保健指導への想いはありましたが、「組織」として特定保健指導に注力すると決めたことで、実施率向上につながりました。しかしながら、取組み方法や実施率等々で、支部間格差も生まれたのは事実です。

 第一期まで頑張って第二期からは特定保健指導プラスアルファの指導を行いたいと進言した支部もありました。また、保健師のモチベーションアップの為に、様々な活動や取組みがされてきています。なお、当協会の特定保健指導に関わる人員は、以下の通りです。

 ◆保健師:約630人(支部保健師 約80人、契約保健師 約550人)
 ◆管理栄養士:約140人(契約管理栄養士 140人)

 今後、幅広い保健指導活動を行うために職種の構成の検討が必要と考えます。

 特定保健指導の対象者は健診受診者の2割程なので、会社としての協力は難しいが、特定保健指導対象者以外の全社員対象であれば、「従業員の健康管理」という視点で、協力してくれる企業もあります。そのような背景から、集団指導や禁煙指導を絡めながら、事業主とタイアップして特定保健指導を積極的に介入している支部もあります。

木村:特定保健指導の第二期目標についてお聞かせください。

六路:特定健診を国の目標である60%実施すると、特定保健指導の対象者は200万人にも上ります。そこで、「挑戦可能な目標値」として、第2期の目標値を設定しました。メタボ対象者は年々横ばいが続いており、メタボ脱出と流入の数がほぼ変わらないのが現状です。また、肥満でも血圧がセーフだった人が、高くなり新たに対象になることもあります。

木村:去年の6月の保険局の第9回検討会では、実現可能な数値での算出という表現ではありましたが、特定保健指導以外の従来の保健指導を実施していくという意図も推察しましたがいかがでしょうか。

六路:おっしゃるとおりです。協会けんぽの保健師の強みは、事業所に出向いて行って事業主にアプローチができることです。外へ出る強みを活かせる保健師として活動できることが理想ですね。

木村:外部受託となる保健指導実施機関から「人がいない、委託料金で採算が合わない」という声が多いと聞きます。外部委託や委託費用についてはどうお考えですか。

六路:外部委託については、今後、推進していくつもりです。各支部で外部委託先を選定し、積極的に活用できるスキーム作りを行うことが必要です。一方、保健指導機関から「人がいない、委託料金で採算が合わない」という声も聞かれます。特に委託費用の23,100円という単価が本当に安いのかどうか・・・。現状、集合契約単価料金が安い為に契約指導機関が積極的に実施できないのであれば、検討が必要と考えています。これについては、今後、保健指導実施機関のヒアリングを行う予定です。健診機関にとって、保健指導事業が利益の出る事業となり得るのであればと思います。

 特定保健指導も大切だが、中小企業と一緒に健康管理を行う姿勢も大切と考えます。将来的には、若年者や非肥満者対応、メンタルヘルス予防対策、禁煙等も含め、二人三脚で寄り添える保健活動を行う。「そうありたい」と強く思います。

 自治体の保健師向けに「地域における保健師の保健活動指針」が出されましたが、協会けんぽとしても同様の指針を出していきたいと考えています。そういった意味では、きちんとした根拠のある指針を示していければと思います。

木村:現場の保健師は、一保健師としてどこまでやっていいのか、国や本部がどこまでやるべきかを把握しかねているケースが多いように見えます。特定保健指導とは、産業保健活動とは、「かくあるべき」というマニュアルが欲しいということですね。

六路:そういった意味では、きちんとした根拠のある指針を示していければと思います。

木村:私が指針案作成をお手伝いしましょうか?(笑)

六路:ぜひお願いします。(笑)

【参考資料】
協会けんぽ加入者の健康課題(全国健康保険協会)[PDF:5.81MB、30頁]

 次回は、協会けんぽが取組む保健指導について、各支部の事例や医療機関との取り組み例、今後広まる情報通信技術(ICT)を活用した面談指導などをお伝えします。ご期待ください!
インタビュアー:木村大地((株)リンケージ)

【株式会社リンケージ】
 健康診断に関する現状の課題を解決するためのサービス提供や、事業全般の企画、職員向けセミナー等。健診事業専門集団として、お客様が必要とするサービスのコーディネーター役を担っております。
 ヘルスケアリテラシーの向上に寄与することで、健康診断という「手段」の活性化につなげ、不健康寿命の縮小を目指しております。
 最近は、セミナー依頼が増える中、ASEAN進出の海外駐在員向けの健康管理事業も手がけ、時代のニーズ応じた健康管理文化の創出をしております。
 ◆ホームページ http://linkage-inc.co.jp/

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