第1回 全国健康保険協会(協会けんぽ) 【前編】
中小企業と二人三脚で健康管理 協会けんぽの保健師の活動とは(1)
木村:まずはじめにお伺いします。六路さんが思う保健師としての夢はなんでしょうか。
六路:「協会けんぽの加入者と事業主が手を取り合って健康を考え、その後ろから保健師が付いていく」そんな姿が実現し、協会けんぽの全国の保健師が「これこそ保健師活動!」と誇りと意欲を持った活動ができる環境をつくることが夢です。定年まであと4年ですが、少しでもここに近づけなければならないと思っています。
木村:保健師になられた経緯、これまでの略歴を教えてください。
六路:私が大学を受験する前年に、千葉大学に看護学部が新設され、「国立大学に看護単独の学部が初めてできた」と話題になり、何となく周りと違った進路も良いかなぁとの思いがあったため進学しました。
教養の授業で、社会学や人類学などとても興味深い授業を受ける機会があったことや、地域保健の実習で大学のフィールドにおいて全戸訪問して健康相談を行ない、その報告会を開くなど、自由に考え広がりのある仕事があると気付くことができ、保健師になる希望を持つことができたと思っています。
卒業後は、東京都中野区、埼玉県、長野県の保健所に勤めて、精神や虐待、未熟児など、いろいろな家庭に関わりました。「人の幸せ」や「人が生きる事」など考えると、投げ出したくなる事も度々ありました。
木村:最近の六路さんの活動を教えてください。
六路:都道府県支部で取り組んでいる健診、保健指導について実態把握のために支部を回っています。先日、宮城、岩手支部に訪問し、特定健診・保健指導の内容をヒアリングしてきました。
労働安全衛生法に基づく保健指導は事業主の努力義務ですが、特定保健指導は保険者が事業主にお願いをして行なっています。ここがこれまでとは決定的に違う点です。都道府県に対して、保険者との連携を強く打ち出すように要望するとともに、商工会議所との連携も重要と考えています。
また、被災地では、医療施設、医師不足が起こっており、復興の進捗の停滞等から「疲れ」「行き詰まり感」などからメンタルの問題も出てきています。これは、保健指導者も保健指導対象者も同様のようです。
被災直後から刻々と状況が変わっており、随時適切な支援が行えるような勉強の必要性と、特定保健指導以外の枠組みを推奨できるような環境が必要と感じました。
木村:従来の産業保健指導ということですね
六路:まさにそうですね。特に被災地では、特定保健指導対象者以外の方も含めた、柔軟な指導の対応を考えていきたいです。
木村:本日はざっくばらんにお伺いさせてください。
今回のインタビューは、健診・保健指導業界で最大級の情報サイト「保健指導リソースガイド」の連載コーナーの第一弾です。
健康診断事業に携わる方々に、国や関係団体、現場の方々や学術団体等様々な立場の方々に、取組み事例や、事業に対する想い、今後の対策等を「よりシンプルに」お届けすることにより、ヘルスケアリテラシーの向上を目指すことを目的として、私が業界のリーダーの方々に、テーマに沿ったお話をヒアリングして進めるものです。
インタビューを受ける立場である協会けんぽとしてのメリットを、どのようにお考えですか?
六路:今回のインタビューは、事業所や健診機関、自治体等、幅広い方々に実情や取組みを知ってもらう良い機会と捉えています。なかなかこのような場所が無いので有難いと感じています。
木村:先日、都内で毎月開催されている「さんぽ会(産業保健研究会)」という勉強会で六路さんが発表された内容が素晴らしく、より多くの人に「情報」として届けたいと思いました。
健診業界の方々に取っては大変わかりやすく貴重なデータです。ただし、公表されているとは言えホームページの「どこに」アクセスすればいいのか分からないので、触れる機会があまりにも少ないのが現状です。
できればこのようなデータを、自治体、医療保険者、健診機関、事業者がそれぞれの顧客のために比較値として活用できることは大変価値があると感じています。
六路:情報が若干古いものではあるが、皆様のお役に立てるのであれば、ご活用ください。
【参考資料】
協会けんぽ加入者の健康課題(全国健康保険協会)[PDF:5.81MB、30頁]
協会けんぽの加入者は住民の約1/3に上るため、自治体や関係機関の方と実態を共有し、地域施策を考えるためにデータを使いたいと考えています。また、国立保健医療科学院の横山徹爾先生にご協力いただき47都道府県のデータをまとめ、支部間格差等を示すための評価分析に取り組んでいます。
参考資料:全国健康保険協会
「全国健康保険協会(協会けんぽ)」もくじ
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