第2回 「データヘルス計画」について ~どう計画し、運用するか~
データヘルス計画の背景 保健事業におけるPDCAサイクルの実施
国民皆保険制度が日本に発足した昭和36年から半世紀。国は、『新たな「データヘルス計画」は、各種のデータを収集・分析することで、被保険者全体への効率的な働きかけを可能とし、そのうえで生活習慣を改善することが必要な者や早期の治療が必要な者など、焦点を絞り込んだ事業が展開できる利点がある』と述べています。平成26年度に全健保で計画作成を行い、平成27年度から実行に移すという内容です。
第1回目協会けんぽのインタビューを終えて、当該事業について今後の行方や予算配分等々、様々な領域の方からインタビュー要望を頂きました。実際に事業の企画立案をされた厚生労働省保険局保険課の方々から、事前に伺いたい内容をまとめ訪問してきました。ポイントを絞ってテーマ毎にヒアリングして参りましたので、最後までお付き合い頂ければと存じます。
(左から)
木村 大地(インタビュアー) 鳥井 陽一さん 吉村 和也さん 高橋 雅之さん |
木村: まずはじめに、皆さん共通で伺っているのですが、鳥井課長が厚生労働省に入省したきっかけは何でしょうか?
鳥井: まず、社会政策に興味があったことが一つです。また入省する時期がバブル時代だったので、周りが民間企業に就職するなかで人と違う道を選びたかったということもあります。
木村: なるほど、今後の夢は何でしょうか?
鳥井: この組織(厚生労働省)は、国民のQOLを高めるためにあると考えています。そのような観点から、必ずしも全てのミッションが叶えられているとは言えませんが、限られた予算や与えられた役割の中で少しでもQOL向上を実現できるよう努めていきたいと考えています。
木村: それではデータヘルス計画に関してお聞きしたいと思います。
今回インタビューさせて頂く前に、事前に複数の健保組合の担当者にデータヘルス計画についてのご意見や質問をヒアリングしてきました。その内容も踏まえてお伺いさせていただきます。まずはデータヘルスの背景についてお聞かせください。
鳥井: 2008年に特定健診が始まり、レセプトも歯科を除いては大部分が電子化され、データを分析しPDCAサイクルを行う基盤ができるようになってきました。つまり、医療保険者の保健事業においても、効果的・効率的にやっていける状態になってきたという背景があります。
すでに一部の健保組合では、保健事業をPDCAサイクルでまわして実施しているところもあり、保険者において保健事業をきちんと実施できる時代になっています。また、「日本再興戦略」や「健康・医療戦略」の中でもデータヘルスが位置づけられ、より一層の推進が求められました。
参考資料:厚生労働省保険局保険課
鳥井: 他方、保険者側からみると、高齢化などにより医療費が伸びている中、なかなか労働者の賃金が上がらず保険料の収入が上がらない現状が続いていて、どこも財政的に苦しい状況が続いています。これまでは、対策として一部負担金の引き上げを主にやってきました。しかし、最近ではそれも限界となり、【(1)医療提供体制を効率化すること】【(2)健康増進・疾病予防の推進によって医療費の効率化を図る】この二つの対策が大きな流れとなっています。これが、もう一つの背景です。
参考資料:データヘルス計画の推進について(厚生労働省保険局保険課)
木村: メタボ健診制度が始まる前、「保険者機能の強化」といった言葉が様々なところで明記されるようになってきました。今回のデータヘルス計画は、今まで外部に公表されていなかった保健事業を「見える化」し、世間に示していく方向ということでしょうか?
鳥井: そうですね。それも当然やっていただきたいと期待しています。少なくとも保健事業の対象者の方にはきちんと説明できるようにしていくことが必要と考えています。事例集もその一環ですが、そういった取組を外から見えるような仕掛けをつくっていきたいと考えています。
木村: レセプトの電子化の話ですが、現在は歯科を含めて92%になっていますが、保険者からは「電子化は、まだ不十分。今後上がっていくかどうか」といった声があります。
鳥井: 歯科は取組みの始まりが遅かったため、これから上がっていくと思います。他の医科は、レセコンの更新の関係で、切り替えが猶予されているところもあります。その猶予期間が終了すればもう少し上がる部分はあります。(平成27年3月まで)
【参考資料】
データヘルス計画の推進について(厚生労働省保険局保険課)[PDF:1.5MB、22頁]
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