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皮膚の若さの維持と老化のメカニズムを明らかに 皮膚の老化を抑えるコラーゲンが判明

 東京医科歯科大学は、皮膚の老化が、「幹細胞競合」により恒常性を維持するメカニズムの疲弊により起こることを明らかにした。幹細胞競合をコントロールする治療法を開発すれば、皮膚の老化を抑えられる可能性がある。
「幹細胞競合」が皮膚の老化に関わる仕組みを解明
 研究は、東京医科歯科大学難治疾患研究所幹細胞医学分野の西村栄美教授、松村寛行助教、劉楠氏らの研究グループが、同大学院皮膚科学分野の並木剛准教授らと共同で行ったもの。研究成果は国際科学誌「Nature」オンライン版に発表された。

 老化は、細胞が生体内で絶えず生じる損傷やストレスを受けることで起きると考えられているが、これまで臓器が長期にわたり若さと機能を保つ仕組みや、ならびに老化する仕組みについてよく分かっていなかった。

 組織・臓器の老化の誘因は、日々発生する内因性ならびに外因性の損傷やストレスであることが知られている。しかし、皮膚では「幹細胞システム」が働いているため、ただちに老化するわけではない。たとえば紫外線を多めに浴びても、ただちに皮膚に老化細胞が蓄積して高齢者のようになることはなく、何十年という長期にわたり、若さと機能を維持する。

 幹細胞システムでは、皮膚の表皮をはじめ上皮組織で活発な新陳代謝が行われ、多くの幹細胞クローンが消滅する一方で、一部の残存クローンが増大する。この幹細胞の消滅と残存は一見ランダムに見えることから「中立的幹細胞競合」と呼ばれている。

 「細胞競合」とは、組織中で近接する同種細胞間で、環境適応度の高い細胞が低い細胞を集団から排除する現象。それが生涯にわたって本当に中立的に起こる現象なのか、選択的に適応度の高い細胞を選択する細胞競合を反映しているのかについては明らかにされていなかった。
細胞競合が減弱すると表皮の老化が進む
 研究グループは今回の研究で、実際に生体内の幹細胞の動態と運命を解析することで、表皮幹細胞においてストレス応答性の幹細胞競合が起こっていること、とくに幹細胞と基底膜をつなぐヘミデスモソーム構成成分であるXV2型コラーゲンの発現がゲノムストレス/酸化ストレス誘導性のタンパク質分解によって生理学的に変動し、その結果、個々の幹細胞におけるXV2型コラーゲンの発現量に有意な差異を生じていること、その差異が幹細胞分裂の様式に差を生じることで、幹細胞間における細胞競合を引き起こすことを解明した。

 具体的には、マウス成体内での多色幹細胞クローン分析と3次元細胞培養モデルなどを駆使することで、XV2型コラーゲン高発現細胞が水平方向に対称性分裂して基底膜上で増幅する(勝者幹細胞クローンとなる)のに対して、加齢によりXV2型コラーゲンを失った細胞(低発現細胞)は非対称分裂(縦分裂)を連続して行いながら、ヘミデスモソーム構成分子やヘミデスモソーム構造を失って基底層との係留が減弱していく過程を解明した。

 その結果、限られた空間内で両者が互いに競合し合うことになり、後者は次第に基底層(ニッチ)から排除され、分化を経て皮膚表面から排除されることが明らかになった。これらの敗者クローンは、酸化ストレスやゲノムストレスに続くDNA損傷応答を経てXV2型コラーゲンの発現を減少し、ヘミデスモソームの消失を引き起こし、基底膜からの微小剥離により皮膚から排除されることも明らかになった。

 したがって、XV2型コラーゲン高発現細胞が表皮幹細胞として長期にわたって維持されており、XV2型コラーゲンレベルのより低い低品質細胞を皮膚から排除し続けるなかで、自身も次第にXV2型コラーゲンの発現を失ってしまうため、細胞競合が減弱して表皮の老化が顕著となることが判明した。

 また、表皮の角化細胞以外に表皮内でメラニン色素を産生している色素細胞や、表皮の基底膜下に分布する繊維芽細胞などに着目して解析したところ、表皮幹細胞の細胞競合が反復されるなかで、表皮基底層から排除されていく敗者クローン細胞集団に囲まれていた色素細胞も周囲の敗者細胞と一緒に排除されること、ならびに基底膜下の真皮内の線維芽細胞も表皮幹細胞におけるヘミデスモソームの構築変化と並行して消失していくことが観察された。
XV2型コラーゲンを発現させると皮膚の老化を抑えられる
 このような真皮浅層の繊維芽細胞の消失は真皮の細胞外マトリックスの構築にも変化を及ぼして深部に波及しうるため、臓器としての老化へとつながると考えられるという。

 さらに、表皮幹細胞においてXV2型コラーゲンを恒常的に発現させた高週齢マウスを解析したところ、皮膚の老化の抑制効果ならびに再生促進効果が得られ、さらにXV2型コラーゲンの発現を誘導する低分子化合物によって皮膚の再生促進効果が得られることが確認された。

 今回の研究は、皮膚の老化を治療する新たな戦略や予防につながる可能があり、研究グループはすでに特許を出願している。他の臓器の上皮組織でも同様に幹細胞競合が臓器の恒常性と老化をコントロールしており、それが健康長寿につながる可能性があるという。

東京医科歯科大学 難治疾患研究所 幹細胞医学分野
Stem cell competition orchestrates skin homeostasis and ageing(Nature 2019年4月3日)
[Terahata]

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