オピニオン/保健指導あれこれ
働く女性を支える保健指導の視点―ライフステージに応じた健康課題とセルフケア

No.1 女性の健康課題とライフステージ—特に就労世代で何が起こるか

女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長
高尾 美穂

 提供  大塚製薬株式会社

女性の健康課題とホルモンの関係

 働く女性の健康課題を考えるうえで、頭に入れておきたいのが、卵巣から分泌される女性ホルモンの1つ「エストロゲン」の働きです。

 エストロゲンの分泌量は20代から30代半ばでピークを迎え、その後は徐々に減少していきます。20代から40代半ばごろに抱えやすい女性の健康課題は月経痛やPMSなど月経周期に関連する不調、子宮筋腫や子宮内膜症など子宮に関連する病気といった月経随伴症状*1、子宮頸がんや乳がんといった女性特有のがんなどです。ライフイベントの多い年代で、妊娠や出産、不妊治療を経験する時期でもあります。

 閉経の前後10年間を「更年期」といい、エストロゲンの分泌量は乱高下しながら急激に減少し、閉経後はほとんど分泌されなくなります。個人差がありますが、閉経年齢の中央値が約50歳ですので、平均的には40代半ばあたりから「更年期」が始まります。
このエストロゲンの変動に伴って起こる不調が更年期症状*2で、代表的な症状としては、ホットフラッシュが挙げられます。また、エストロゲンがほとんど分泌されなくなる更年期後半以降は生活習慣病や骨粗しょう症などのリスクが高まります。


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画像提供:大塚製薬株式会社

産業保健が果たす役割と可能性

 これまで産業保健師と従業員の接点は、主に健康診断や相談対応といった場面に限られてきました。産業保健師はすべての従業員を支える役割を担っていますが、実際には心身の不調を抱える人への対応にとどまっているケースが多いのではないでしょうか。

 そのような中、産業保健師が「女性特有の健康課題」に取り組むことには大きな可能性を秘めています。なぜなら、男女がほぼ半数ずつ在籍する職場であれば、半分の従業員と新たな接点が生まれることになりますし、男性の多い職場であれば、職場の制度等に反映されにくい少数の方の「声」を、産業保健師だからこそ聴くことができるからです。

 これらの課題はすべての女性に関わるテーマであり、社内に相談やサポートを受けられる産業保健師がいるとわかれば、その存在への信頼や期待は一層高まるでしょう。

女性の健康課題への取り組みは男性にもメリット

 「女性の健康課題は男性には関係がない」といった見方はいまだに根強く残っています。しかし、実際には女性本人だけでなく、共に働く男性にとっても多くのメリットがあります。

 仕事の「量」という面では、女性が安心して働ける環境が整えば、業務分担が円滑になり、結果としてチーム全体の負担軽減につながります。
 さらに「質」の面でも、それぞれの得意分野を活かし合える職場環境が理想です。男女ともに気持ちよく働ける職場は誰にとっても働きやすい環境を生み、生産性やモチベーションの向上にも寄与します。こうした視点から「女性の活躍」を捉え直すことで、働くすべての人にとってより良い職場づくりが進むはずです。

産業保健師が支援する“意識の変化”

 企業によって差はありますが、以前に比べれば女性の健康課題への理解は確実に進んできていると感じます。例えば「月経痛がつらい」という部下がいれば、すぐに休ませる対応をとる上司も増えてきました。

 それは初期対応としてはとても良いことですが、それだけでは根本的な解決にはつながらず、毎月同じことを繰り返すだけになってしまいます。
 「つらい時は休めばいい」という考えは当然尊重されるべきですが、時間というものは誰にとっても限りあるリソースです。だからこそ、つらい時間を少しでも減らし、その分を仕事や自分の活動に充てられるよう、不調を改善していくことが大切です。その意識の変化によって、人生はより充実したものになるでしょう。

 実際に、産業保健師が主導し、このようなマインド形成まで支援している企業もあります。職場環境や企業の方針は、そこで働く人々の価値観に大きな影響を与えます。だからこそ、「産業保健師がしっかりしているかどうか」、職場の体制によって左右されることがないようにしたいものです。

 別の見方をすれば、産業保健体制を整え、女性の健康課題にも真正面から取り組むこと自体が、今や企業にとっての大きなアピールポイントになっています。まだ十分に対応できていない企業が多い中で、予算を確保して本気で取り組む姿勢を示すことが、優秀な人材を引きつける力にもなるのです。

「かかりつけ医」への橋渡し役を担ってほしい

 まだまだ日本の企業では、女性の健康課題への取り組みが十分に進んでいないケースも少なくありません。そのような場合こそ、産業保健師が女性従業員と近隣の婦人科をつなぎ、「かかりつけ医」を見つける橋渡し役を担ってほしいと思います。

 実際、病院へ行くこと自体に敷居の高さを感じている人は少なくありません。特に婦人科となると、受診をためらい、症状を後回しにしてしまう女性も多いのが現状です。
 そこで産業保健師が、近隣の婦人科の情報を整理して紹介したり、女性従業員が相談しやすい病院にあらかじめ挨拶へ行ってつながりをつくったりするだけでも、女性の健康課題への対応は大きく前進します。

 普段から月経随伴症状や更年期症状などについて気軽に相談できる「かかりつけ医」がいれば、心身の不調をため込まず、仕事にも前向きに取り組めます。産業保健師がその橋渡し役となることで、女性が安心して働ける環境づくりが一歩、確実に進むのです。

出典大塚製薬・女性の健康推進プロジェクト「女性のヘルスリテラシー調査|2025年版」より作成
https://www.otsuka.co.jp/woman_healthcare_project/report/health_literacy.html ](2025年11月現在)
画像提供:大塚製薬株式会社

*1 月経随伴症状とは

生涯で450〜480回もの月経を経験するようになった現代の女性。月経回数の大幅な増加などにより、様々な月経随伴症状に悩まされる女性が増えています。

  • ① 月経前症候群(PMS):月経前3〜10日に現れる気分の落ち込みや頭痛、イライラなどの精神・身体症状で月経が来ると軽減します。軽症も含めると多くの女性が経験し、精神症状が著しい場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼ばれます。
  • ② 月経困難症:月経に伴う下腹部痛や頭痛、吐き気などの病的症状。原因疾患の特定できない「機能性」と、子宮筋腫など疾患を伴う「器質性」に分類されます。
  • ③ 子宮筋腫:子宮の平滑筋にできる良性腫瘍。40歳代では多くの女性にみられ、無症状の事もありますが、筋腫の大きさや発生部位によって、過多月経や月経痛、不妊の原因となることもあります。
  • ④ 子宮内膜症:子宮内膜に似た組織が子宮外で発生・増殖する病気。強い月経痛や下腹部痛を起こし、不妊症の原因にも。卵巣にできる「チョコレート嚢胞」の1%が癌化することが知られています。(出典:標準産科婦人科学, 第5版[医学書院])
  • ⑤ 子宮腺筋症:子宮筋層内に子宮内膜に似た組織ができる病気。強い月経痛や過多月経を伴い、不妊症の要因にもなります。エストロゲンの影響で悪化し、閉経後に軽快することが多いです。

①や②は女性ホルモンの変動があり、月経があるからこそ起こる症状で、③④⑤はエストロゲンの影響で悪化し、閉経後に軽快することが多い症状です。早期発見・早期治療のためにも、定期的な婦人科検診や、医療機関への相談が望ましいです。

*2 更年期症状とは

更年期とは、閉経(50歳前後)の前後5年ずつ、約10年間を指します。エストロゲンの低下に伴い、心身にさまざまな不調が現れやすくなります。この時期に起こる不調で、器質的変化に起因しない場合を「更年期症状」といい、そのうち、生活に支障を来す場合を「更年期障害」といいます。
主な症状は、発汗やのぼせなどの「ホットフラッシュ」、めまい・不眠・イライラなどの精神的症状、頭痛・肩こり・腰痛などの身体的症状です。肌や髪の悩みも増え、QOLの低下につながります。

参考大塚製薬・女性の健康推進プロジェクト「婦人科の専門医に聞く 女性ホルモンとの付き合い方」
https://www.otsuka.co.jp/woman_healthcare_project/estrogen/about_estrogen.html ](2025年11月現在)

大塚製薬の「女性の健康推進プロジェクト」が運営する情報サイト

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