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日本人のメンタルヘルス、パンデミック後に「二極化」 国民生活基礎調査176万人分から10年の動向を解析

 東京大学大学院医学系研究科の研究グループは、厚生労働省「国民生活基礎調査」の延べ約176万人分のデータ(2013~2022年)を解析し、日本人の心理的苦痛とメンタルヘルス医療利用の10年間の変化を明らかにした。

 その結果、パンデミックを機に日本人のメンタルヘルスが「二極化」しはじめている可能性が示されたという。

メンタルヘルスの状態は「二極化」の可能性

 研究にあたったのは、東京大学大学院医学系研究科の佐々木那津講師、西大輔教授らの研究グループ。厚生労働省「国民生活基礎調査」の2013~2022年に実施された大規模調査データ(延べ約176万人)を用いて、日本人成人のメンタルヘルスの動向を検討した。

 この研究以前に、日本人の代表的な大規模データを用い、メンタルヘルスの動向についてパンデミック前後での変化を比較した調査はなかった。まずパンデミック以前である2013年、2016年、2019年における「中等度」および「重症」の心理的苦痛がある人の割合について推移を見ると、いずれも横ばいだった。

 しかし、パンデミック後、中等度の心理的苦痛がある人の割合は、2019年の24.9%から2022年には21.8%に減少し、「心理的苦痛なし」の人が70.1%から72.9%に増えた。

 一方、重度の心理的苦痛がある人の割合は2019年の4.7%から2022年には5.0%へ上昇していた。 中等度の心理的苦痛が減少する一方で、重度の心理的苦痛と、ほとんど苦痛を感じていない人の割合が増えていることから、パンデミックをきっかけに、メンタルヘルスの状態が「重度の苦痛を抱える層」と「比較的良好な層」に二極化した可能性があると研究グループは指摘している。

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出典:東京大学

 年齢別に中等度の心理的苦痛がある人の割合を見ると、すべての年齢層で減少しており、特に18~25歳の若年層で減少幅が最も大きかった。この傾向はイギリスやアメリカの研究結果とも共通しており、パンデミック期に対人ストレスが一部軽減されたこと、日常生活のコントロールがしやすくなったこと、オンラインでの支援へのアクセスが広がったことなどが背景にあるのではないかと指摘されている。

 一方、重度の心理的苦痛について、性別・年齢別に2022年時点の割合を検討したところ、「26~34歳女性」で重度の心理的苦痛の割合が最も高く、7.6%に達していた。また、パンデミック前の2019年と、パンデミック後の2022年を比較すると、18~25歳の若年女性と35~49歳の中年男性で、重度の心理的苦痛の増加が目立った。

 2013年からの約10年間の推移を通してみると、女性では65歳未満のすべての年齢層、男性では26~64歳の年齢層で、重度の心理的苦痛の割合が増加する傾向がみられた。これらの結果から、働き盛り世代や若年層のメンタルヘルス悪化がうかがえる。

メンタルヘルス医療の利用は10年で増加、若年層で伸びが大きい

 メンタルヘルス医療を利用している人の割合は、この10年で上昇傾向にあったが、パンデミック後の2022年には4.6%まで増えた。

 重度の心理的苦痛を抱える人のうち、メンタルヘルス医療を利用している割合は、65歳未満ではこの10年で上昇。パンデミック前後で最も大きい上昇幅を示したのが18〜25歳で、「受診への意識の高まりやアクセスの容易化などの変化」による可能性を研究グループは指摘している。

 一方、65歳以上ではこの10年間における利用割合が減少傾向にあり、利用者を増やすことが課題だと言える。

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出典:東京大学

 今回の結果から研究グループでは「今後のメンタルヘルス政策の立案や、世代や性別の実態に即した支援策の検討に役立つことが期待される」としている。

心理的苦痛とメンタルヘルス医療の利用の10年の動向を解明(東京大学/2025年10月21日)

[yoshioka]
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