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慢性腎臓病で要介護リスクが上昇 運動習慣で低減の可能性も―名古屋大学の研究グループ

 名古屋大学の研究グループがこのほど、愛知県北名古屋市の住民健診データと行政の介護認定データを統合して解析し、高齢者における慢性腎臓病(CKD)と要介護リスクの関連を明らかにした。

 その結果、慢性腎臓病で要介護リスクは上昇するが、日々の運動習慣で抑えられる可能性も分かった。

慢性腎臓病は高齢者における要介護リスクにも関係

 研究にあたったのは、名古屋大学大学院医学系研究科・実社会情報健康医療学の大橋勇紀助教、中杤昌弘准教授、同大学医学部附属病院先端医療開発部の杉下明隆病院助教、同大学院医学系研究科附属医学教育研究支援センターの加藤佐和子特任准教授、水野正明特任教授(研究当時:同大学医学部附属病院先端医療開発部長)ら。

 慢性腎臓病は、腎臓の働き(老廃物の排泄、体液・電解質バランスの調整、血圧の調節など)が慢性的に低下した状態を指す。日本では高齢化に伴い医療費や介護費の社会的負担が増大しているが、慢性腎臓病が進行すると人工透析や腎移植を必要とする末期腎不全に至り、多大な医療費が発生する。

 また、筋力低下やフレイル、日常生活機能の低下などとの関連も指摘されており、要介護状態の発生リスクを高める可能性がある。

 腎臓の働きは、健康診断などで測定する血清クレアチニンの値から推定するのが一般的で、この値をもとに「腎臓がどれくらい血液をろ過できているか」を示す指標(eGFR)を算出する。ただし、それだけでは評価が十分でないこともあり、尿検査で「尿たんぱく」が出ているかどうかも腎障害を示す重要な手がかりとなる。

 国際的には、この2つ(eGFRと尿たんぱく)を組み合わせた分類法(KDIGO分類)による評価が標準的に用いられている。一方で、この国際標準の分類に基づく慢性腎臓病リスクと、要介護リスクとの関連を検討した研究は、これまでほとんどなかった。

 そこで研究グループは、東海介護予防コホート研究として、愛知県北名古屋市在住の高齢者(65歳以上)8428人を対象に、行政の介護認定データと健診情報を統合して解析した。KDIGO分類に基づく慢性腎臓病リスクと要介護リスクとの関連を検討した。

 その結果、慢性腎臓病リスクが高いほど、要介護認定を受ける人の割合は増加した。特に慢性腎臓病リスクが最も高い群では、要介護認定の5年累積発生率が24.8%で、5年間に約4人に1人が要介護状態になりうることが示された。さらに、運動習慣(週2回以上・1回30分以上)がある人では、慢性腎臓病に伴う要介護リスクの上昇が抑えられる傾向がみられた。

 これらの結果から、腎機能を早期に把握し、予防的な介入につなげることが、将来的な要介護状態の回避にも寄与する可能性がある。

 さらに研究グループは、血清クレアチニン値と要介護リスクの関連がJ字型となる点も報告した。筋肉量の少ない高齢者ではクレアチニンが低く出やすく、腎機能を実際より良好と見積もってリスクを見逃す可能性がある。そのため、eGFRだけに頼らない包括的な腎機能評価が重要で、筋肉量の維持を意識した日常的な運動習慣は、要介護状態を防ぐセルフケアとしても有用である可能性が示された。

 研究グループは、今回の知見が、少子高齢化により金銭的・人的リソースが限られる日本において、介護予防や健康づくりの政策検討に資することを期待したいとしている。

慢性腎臓病と要介護リスクの関連性が明らかに ~運動習慣がリスク低減に有用であることも示唆~(名古屋大学)

[yoshioka]