No.2 産業保健師は「身近な専門職」?
大神労働衛生コンサルタント事務所 代表
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
保健師
大神 あゆみ
「産業保健師は(職場・働く人の)『身近な専門職』」というフレーズがよく使われます。今回は、「身近な専門職」の「身近さ」について、考えてみたいと思います。
「身近である」ことと言えば、物理的に「近くにいること」を想像しやすいのですが、私たちは決していつも対象の人達すべての傍にいられないのも事実です。
「身近である専門職」の意味と目的を検討し、私は「身近でいられる」要素には、大きく次の3つがあり、それぞれが関連しあって意味を持つのではないかと考えました。
1つは、"親しみやすいこと"。2つ目は、"アクセスしやすいこと"。3つ目は"実際的な解決につながること"です。
"親しみやすいこと"には、話しかけやすさ・身構えることなく本音で相談できる意味もありますし、わかってもらえている感覚・気にかけてもらっている感覚があるといったことも含まれるでしょう。
たまにしか会えない人であっても、何かの機会に「どうしてた?」と聞かれることで、ぐっと距離感が縮まった経験はないでしょうか。まずは、私たちが対象となる人たちに折々に関心を示し、離れていても状況の変化に思いを巡らすことが、自然と親しみやすさにつながることと思います。
もちろん、外観上の普段の表情や態度が親しみやすさの一番のポイントであることについては言うまでもありません。普段の表情や態度は、自分でもなかなか気づきにくい場合もあります。時に厳しくチェックしてくれる人を大事にしておくのも良いかもしれません。
次に、
"アクセスしやすいこと"。必ずしも、いつでも対応できるといった意味とは限りません。対象となる人や職場の関係者、たとえば上司だったり、衛生推進者や衛生管理者、その他キーパーソンとなる関係者を介しながらでも、"どこかでつながる""協働での対応のしやすさ"も含みます。また、(アクセスされて)つながったときに、解決できなくても一緒に悩んだり考えるプロセスがあることや、別の手掛かりが示せることも結果としてアクセスしやすさになるでしょう。
最後に
"実際的な解決につながること"。これが最も難しいかもしれません。専門職が「やって差し上げる」行為の方が実は簡単で感謝されることが多いのを私たちは実感しています。しかしながら、保健師が関与する「生活」や「仕事」という場面において、その解決策を講じるべき人は、対象者自身やあるいは管理職などの「役割」を担った人であることが多いのも事実です。
そして、彼ら(彼女ら)が日常的に"やれる"解決策は、実は特別で専門的な手法ではなく、彼らの強みが活きる彼らに馴染んだ方法の延長線上のものであることにも、私たちは薄々ながら気づいています。決して私たちが最善と思った解決策を彼らが選ばなかったとしても緊急を要する内容でなければ、"解決策を講じるべき人が納得した上で選んだ解決策を見守れること"、それも重要でしょう。
ところで、先日、税理士の方と話をしていた時に、次のような言葉がありました。「僕らは会社の身近な専門職です」。違う専門職から同様の言葉を聞くとハッとさせられます。
私たちは「本当に」身近な専門職になっていますか?