オピニオン/保健指導あれこれ
産業保健師と保健指導
No.3 産業保健師の距離感
大神労働衛生コンサルタント事務所 代表
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
保健師
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
保健師
2013年01月25日
産業保健師の対象は、その保健師の雇用先(例.事業所か健康保険組合か)や契約内容等によって異なりますが、概ね一つの"組織"に関与することが多いと思います。事業を行う組織においては、経営者側と労働者側とで、働く上での健康に関して考え方が対立する場合もあります。この両者に対して産業保健職は「中立」な立場で、専門職の見地から意見を両者にわかりやすく伝える必要があります。事業者の安全配慮が果たせるよう情報を伝える役割を担う場合は、伝える情報を吟味して労働者側の理解を仰ぐ工夫が重要になります。 2点目の「距離の取り方」は、平常時は個人に接近しても接近しすぎず、対象者や対象集団の流儀に沿った保健行動にもとづく判断を委ねながら、緊急時には介入するという動き方です。 保健医療職は対象者に公平であることが原則ですから、組織を対象にする場合、特定個人や特定部署に業務の比重が偏りすぎないようにすることは重要です。ただし、健康集団であっても個人や組織が混乱を招くような状況の時には、求めがなくても関与して、その状況を治める時間を十分に取ることもあります。 そのような場合、単にその場を治めるだけに終わらず、その状況が暗示する他の個人的・集団的問題の存在に思いを巡らせ、間接的に影響するものも想定、同時に別の人や組織でも同様の状況が発生した場合の対応法を考え、平常時の施策にその経験を活かすことも考えるのは、地域の保健師活動にも通じるものだと思います。 生活者・労働者の対象集団には、「してあげる」支援よりも、「見守り、一緒に構築していく」支援の比重が多い実態だと思いますが、中立的な立場で、状況によってその距離の取り方を変えていく働きかけをするのは保健師のユニークさであり、おもしろさであり、難しさなのだろうと実感しています。
「産業保健師と保健指導」もくじ
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「産業保健」に関するニュース
- 2025年01月15日
- 「新しい認知症観」普及へ 希望を持って自分らしく暮らせる社会に『認知症施策推進基本計画』閣議決定
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は糖尿病と高血圧のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月14日
- 子宮頸がん予防のHPVワクチンをもっと知って欲しい【キャッチアップ接種の期間が延長】
- 2025年01月14日
- 妊娠前の健康的な生活習慣が母子の健康リスクの低下につながる 妊娠前から健康的な習慣を1つでも増やすことが大切 エコチル調査
- 2025年01月14日
- コロナ禍で低所得の高血圧患者が医療機関の受診控え とくに女性は受診を控えるリスクが3倍超に上昇