オピニオン/保健指導あれこれ
食文化・食習慣

No.1 醤油が体に与える影響とは

医療・保健ジャーナリスト
西内 義雄
 お宅の醤油はどんな味

 日本人の食卓に醤油と味噌は欠かせません。それぞれの家庭にこだわりの銘柄、味があるはずです。かくいう私の家もそうでして、醤油の刺身用は九州の甘口タイプ、料理用は一般的な大手ナショナルブランドの濃口と薄口。味噌はメーンが九州大分産、味の変化をつけるためのものとして愛知の八丁味噌や、炒め用に奄美大島の粒味噌を常備しています。

 なぜこの組み合わせになったかというと、私と妻の家族背景が影響しています。というのも、私は東京生まれで神奈川や千葉で育ち、妻は熊本で生まれ育っています。本来なら味覚の違いがかなりあるはずですが、私の両親は高知県出身。妻の両親は熊本と福岡の出身ということで、ルーツは西日本の甘い醤油を好む文化圏にあるわけです。

 なので、関東の人にとって馴染みのない甘めの醤油も私は独身時代から使っていましたし、九州でよく使われている麦味噌も好きな味でした。ふたりとも魚のおいしい地で育った両親の血を受け継いでいるからでしょう、食卓には刺身がよくのぼります。そして白身の魚は九州の醤油や高知のポン酢。マグロなどの赤身は一般的な醤油を使うなどしています。

 辛い? それとも甘い?

 という話を先日知り合いの夫婦としていたら、
「醤油ってそんなに種類があって、味も違うの?」
 と驚かれました。

 確かに東京近郊のスーパーマーケットの醤油売り場は濃口や薄口、減塩くらいで、味も辛めのものが多いですから当然です。では、九州ではどのような醤油売り場になっているかというと、さしみ、うまくちなどバラエティ豊か。地域ごとに名の知れたブランドがあり、驚くほどの種類が並んでいるのです。

 画像は参考までに私がよく利用している九州のスーパーマーケットの醤油売り場です。関東あたりの売り場とは広さが違いますし、そのほとんどが甘口タイプでして、これが九州では当たり前の状態です。


九州各地に展開する大手スーパーの醤油売り場。圧巻です!

 ちなみに、甘めの味付けを好むのは九州や四国、山陰、北陸の一部にあるようで、これらの地域のスーパーに行くと、醤油売り場が広く感じます。大手メーカーもこうした嗜好に目を付け、あの有名ブランドでさえ地域限定であまくちタイプを出しているくらいです。


あのナショナルブランドもあまくちで勝負しています

 ということは、保健指導で醤油の話をする際、関東と関西、九州などではかなり違った指導方法にならないとおかしいということになりますよね?

 もっと厳密にいうなら、どこのメーカーの醤油を使っているのかを聞かないと、正しい指導に結びつかないということにならないでしょうか?

 醤油=塩分との認識だけでなく、甘い醤油を好む地域では醤油=糖分にも着目する必要があるわけです。実際、成分表を見ると、甘い醤油には甘味料(甘草、ステビア)をはじめ、糖類(砂糖、水あめ)も入っていることがあるのです。

 スーパーマーケットを覗きましょう

 ここまでの話で、醤油の味の違いや地域性は理解していただけたかと思います。今度はさらに一歩進み、その使い方も考えてみてください。たとえば漁師町など魚がよく食卓にのぼるところなら醤油はダイレクトに口に入ります。煮物が多いところは「だし」もよく使うはずですが、それが「いりこ」なのか「粉末なのか」はたまた白だしなのか。さらに煮物ならみりんや砂糖も使いますから、どのような組合せで使っているのかも、保健指導上、重要な話になると思います。

 ただ、こうした話を直接相手の方から聞くのはなかなか難しいです。何より、保健指導をする側が、自分の住む地域の食文化を理解していないと話もうまく伝わりません。お互いに地域の食にどっぷり慣れているケースはもっとやっかいです。

 なので、保健指導に携わる人ほど、地域の食文化をよく理解し、自分の住む地域の何が変わっているのかを把握して欲しいのです。方法はいくつかあり、ひとつはどこかに旅行に行った際に、地元のスーパーマーケットを覗くことです。いろいろな売り場を見て、自分の地域のものとは随分違うことに気付いて下さい。

 また、地元のスーパーマーケットにアポイントを取り、いったい何が売れ筋なのかを聞くこと。何を安売りすれば住民が喜ぶかなどの情報を得ることも保健指導に役立ちます。何より、健康教室などのイベントを行う際も、集客力のあるスーパーマーケットとパイプができていれば、いろいろと便利ではありませんか!

 さぁ、まずは地元のスーパーでしっかり売り場を見てください。そこに何が見えるかはあなたの腕次第です。


熊本市内の居酒屋に入ると、こんなに醤油の種類がありました

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