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暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?

 ウォーキングなどの運動を続けることが大切であることは理解していても、暑い夏には熱中症も予防しなければならないので、運動を行うのは難しくなる。

 肥満のある人は、涼しい夕方の午後6時以降に運動を行うと、長期的に健康を改善できることが示された。

 一方、夕方や夜に激しい運動をすると、その晩に眠れなくなり、睡眠の質が低下するのではないかと心配し、運動を行うのをためらっている人もいる。

 しかし、就寝の3~4時間前に運動をすると、睡眠の質はむしろ良くなることも明らかになった。

暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に

 肥満のある人は、夕方の午後6時からウォーキングなどの運動を行うと、長期的に健康を改善できる可能性があることが、オーストラリアのシドニー大学の研究で明らかになった。研究成果は「Diabetes Care」に発表された。

 「日中は忙しく過ごしていて、運動をする時間をとれるのは夕方や夜だけだという人も多いだろうと思います。また、暑い夏には日中に運動をするのは難しくなります」と、同大学健康科学部のマシュー アフマディ氏は言う。

 「そうした人でも、夕方や夜間に行う運動は、多くの健康上のメリットをもたらす可能性があります。とくに肥満のある人や、糖尿病のリスクのある人にとって、運動を行うことは大切です」としている。

夕方以降のウォーキングが肥満を改善 心血管疾患のリスクが減少

 研究グループは今回、大規模研究である英国バイオバンクに参加した肥満のある40歳以上の成人2万9,836人を平均7.9年間追跡して調査した。

 期間中に、3,980人が心筋梗塞や心不全などの心血管疾患を発症し、2,162人が腎臓病などの細小血管疾患を発症し、1,425人が死亡した。

 解析した結果、ウォーキングなどの活発な運動を、午後6時から深夜0時のあいだに行っている人は、死亡リスクが61%ともっとも多く低下し、午後に行っている人も40%低下した。

 夕方以降に活発な運動を行っている人は、心血管疾患のリスクは36%低下し、細小血管疾患のリスクは24%低下した。活発なウォーキングなどの、中・高強度の有酸素運動を行った人で、とくに効果は高かった。

 一方、朝に運動をしている人も死亡リスクは33%低下し、改善効果があることも分かったが、そうした人は少数で、大部分の人は午後6時から夜にかけて運動を行っていた。

運動のタイミングが肥満の改善・予防に役立つ可能性

 「因果関係を確かめるために、さらに研究が必要になりますが、今回の研究は、運動や身体活動を行うタイミングが将来の肥満の改善や、予防に役立つ可能性があることを示しています」と、同大学健康科学部のエマニュエル スタマタキス教授は言う。

 「ただし、時間のあるときに、いつでも運動や身体活動を行うのが良い考えであることも付け加えおきます」。

 「なるべく1日に運動ができる時間をみつけて、少し早歩きしてみる、階段の上り下りをする、家の掃除などの家事をするなど、体を積極的に動かすことことが、健康改善に役立ちます」としている。

 運動を習慣として行うと、あらゆる原因による死亡リスク、心血管疾患、がんなどのリスクを減らすことができ、体重、コレステロール、血圧、血糖などの管理も良くなり、メンタルヘルスの改善も期待できるとしている。

夕方や夜に運動をすると睡眠の質が低下する?
「いえいえ、そんなことはありません」
 日中に忙しく過ごしていて、昼間は運動を行う時間をとれず、空いている時間は夕方や夜だけだという人は多い。

 夕方や夜に激しい運動をすると、その晩に眠れなくなり、睡眠の質が低下するのではないかと心配し、運動を行うのをためらっている人もいる。

 しかし、就寝の3~4時間前に運動をすると、睡眠の質はむしろ良くなることが、スイスのチューリッヒ工科大学の研究で示されている。

 ただし、就寝前の1時間以内に激しい運動をすると、心拍数が下がりにくくなり、十分な回復を得られなくなり、寝つきが悪くなるおそれがある。眠る直前に運動を行うのは勧められないとしている。

 「日中に運動をする時間をとれないので、夕方や夜に運動をしたいが、睡眠に悪い影響が出るのが心配という人には、ためらうことなく運動をすることをお勧めします」と、同大学運動生理学研究所のクリスティーナ スペングラー所長は言う。

 「就寝の直前でなければ、夜にウォーキングなどの中強度の運動を行うのは、睡眠障害の原因にならないことが分かりました。もしも余裕があれば、疲労を残さないようにするために、運動の後にストレッチなどのクールダウンを行うこともおすすめします」としている。

 研究グループは、夜間の運動と睡眠の関連を調べた23件の研究を解析した。夕方から夜にかけて適度な運動をすると、睡眠時間の21.2%を深い睡眠で占められるのに対し、運動をしなかった夜には、深い睡眠は19.9%に減ることが示された。

 一方で、就寝直前に集中的な運動を行った人は、入眠までに長い時間がかかった。就寝前の1時間に運動を行うと、心拍数は安静時に比べて高いままで、十分な回復を得られないことが示された。

 なお、ウォーキングなどの中強度の運動は、息は弾むが会話はぎりぎりできるくらいの運動で、運動を続けていると脈拍が上昇した後に落ち着くことが目安になるという。

 「運動に対する体の反応は人それぞれなので、自分の体が発する声に耳を傾けることが大切です。運動をした後に寝つきが悪くなると感じたら、もう少し早い時間帯に運動するようにすると改善します」と、スペングラー所長は付け加えている。

Does the time of day you move your body make a difference to your health? (シドニー大学 2024年4月10日)
Timing of Moderate to Vigorous Physical Activity, Mortality, Cardiovascular Disease, and Microvascular Disease in Adults With Obesity (Diabetes Care 2024年4月10日)
Physical activity in the evening does not cause sleep problems (チューリッヒ工科大学 2018年12月13日)
Effects of Evening Exercise on Sleep in Healthy Participants: A Systematic Review and Meta-Analysis (Sports Medicine 2018年10月29日)

[Terahata]
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