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地域での看取り


(2016/07/13)
No.6 特別養護老人ホームでの看取り
 厚生労働省「人口動態調査」によれば、2012年に亡くなった高齢者(65歳以上)の死亡場所としては、病院・診療所が約8割と大半を占めています。それ以外では、自宅が11.8%、老人ホーム(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム等)が5.3%、介護老人保健施設が2.0%と続きますが、なぜ特別養護老人ホームでの看取りが増えないのでしょうか。

 1. 看取りケアが増えない理由
 特別養護老人ホーム(以下、特養)の配置基準は、昭和38年に制定された老人福祉法における特養の設置及び配置基準の第12条において定められた通り、利用者50~130人未満の場合、看護師3人以上と医師の配置が義務付けられています。しかし、医師は常勤医でなくてもよいために、全国の特養のわずか2.5%しか常勤医師が配置されていません。看護職員の勤務形態は日勤帯が多く、夜間については9割が「オンコールで対応する」となっているため、医療を提供するには十分な体制とは言えない状況です。

 しかし、特養に入所している利用者の超高齢化や重度化のため、ほとんどの利用者は医療への依存度が高く、胃ろうによる経管栄養や常に吸引が必要な場合もあります。さらに、苦痛をともなう様々な症状を持つ高齢者の看取りの必要性が高まっていますが、十分な体制でないために、受け入れが困難であるといった声をよく聞きます。

 2. 介護と看取り
 介護職員の不足は社会問題であり、その労働力を諸外国に求める動きもあります。しかし、現状は「人の役に立ちたい」「お年寄りと話しをするのが好き」といった純粋な気持ちで介護の業務に興味をもち、採用される多くの若い職員は、利用者の入浴や排泄ケア、食事の介助を通して高齢者の立場に立って献身的にお世話をしています。そのような若い職員が、日本の介護の未来を支えていると感じます。

 介護職員は、長年にわたり利用者のお世話をしていると、家族のようにかけがえのない存在になり、終末期が近づいてもなかなか現実を受け入れることが難しいこともあり、不安や喪失感に心が揺れ動きます。医師や看護師が、介護職員を共に支えるという関係が無ければ看取りは難しく、やりがいを感じることは出来ないのです。

 3. 家族の思い
 特養に入所したからといって家族の役割がなくなるわけではありません。家族にとっては、親の老化や認知症が進むにつれて、急変時や今後の療養について判断する責任は重くなります。最善の終末期ケアとはどのようなものか、どうあるべきかを悩む家族の姿をよく目にします。最終的にはそれぞれの「死生観」によって決めていくことになりますが、兄弟姉妹が同じ考えを持っているとは限らないため、何が正しいか、どうすることが最も良いのかと結論つけることが難しいのです。

 特養では、家族と医師や看護師、介護職員など、さまざまな専門職がカンファレンスを行い、本人が現在どのようなステージにいて、今後どのような経過をたどるのかを話し合います。そして、治療することよりも、苦痛なく安心していつもの生活を続けることが最も幸せだと判断した場合、特養での看取りの同意書を得ることにしています。

 次回は、死の迎え方について考えを深めていきます。


お彼岸の法要では特養の中の仏様にお参りし、ご先祖様を偲びます。「そちらに逝ったときはよろしくお願いします」と心に念じている高齢者もおられます。

<参考文献>
1)社会福祉六法.ミネルヴァ書房.2003
2)株式会社三菱総合研究所. 介護サービス事業所における医療職の在り方に関する調査研究事業. 平成24年度老人保健健康増進事業.2013
3)みずほ情報総研.多死社会における看取りの選択肢.2014