オピニオン/保健指導あれこれ
地域での看取り

No.2 在宅医療と看取りの現状

看護師、社会福祉士、介護支援専門員、MBA(経営学修士)
神山 欣子
 1. 医療から介護へ
 2004年の厚生労働省の調査によると我が国の国民1人当たりの医療費は65歳未満が14.0万円に対して、75歳以上は78.5万円(5.6倍)となっています。そのうち入院にかかる費用は40.9万円(9.2倍)で、高齢になるほど入院にかかる費用が増加する傾向にあります。つまり、高齢者の場合は、入院期間が長くなったり入退院を繰り返すことが多くなり、なかなか自宅に帰ることができない現実が推測されます。


高齢になっても、引きこもらずに
外気に触れ季節を感じることが大切です。

 75歳以上の高齢者になると、心臓病や脳卒中などの持病を持つ人が多いため体調が悪く、治療しても完全に治ることは難しくなります。医療により病気を治すというよりも、慢性疾患を持つ高齢者に病状を悪化させずに、日常生活をできるだけ快適に過ごしてもらえるような「介護」が重要になっています。

 例えば認知症を伴うような場合は、環境の変化がその後の生活に大きく影響を及ぼすことが懸念されるため、病気の治癒より生活の質の維持向上を目標にすることが大切であり、より最適な介護を提供されることが望まれます。

 2. 在宅療養へのすすめ
 2006年の医療・介護制度改革では、診療報酬と介護報酬の改定は、療養の場を「施設から在宅へ」移行することを促進する方向です。そのため、入院期間の短縮化や社会的入院の是正を目的とした療養病床(急性期病床とは違い、介護や機能回復を目的とする病床)の見直しが図られ、医療・介護間の機能を明確にし、切れ目ないサービス提供が図られるよう、地域完結型の医療が提案されました。

 またこの改革では、自宅療養者を地域で責任を持って診療する「在宅支援診療所」が新設されました。これは、主治医が訪問看護ステーションやケアマネジャー等との連携をはかりつつ、24時間体制で往診や訪問看護を実施できる体制を有する診療所であり、高齢者や末期のがん患者が自宅に帰り、訪問看護や主治医の往診を受けながら終末期を迎えることができるようになりました。


(著者作成)

 3. 在宅での看取りの現状
 全国には約7,000か所の訪問看護ステーションがあり、約45万人が利用しています(厚生労働省.介護給付費実態調査.平成26年2月分審査分)。訪問看護師は、主治医と連携を取りながら利用者の自宅に訪問し、生活と医療の両面をサポートし、利用者が安心して自宅療養できる環境をつくります。近年は小児や精神疾患患者などの利用者も増えていますが、ガン末期の看取りを希望する本人・家族の利用が多いように思います。

 50~60歳代の患者はがんの治療に対する豊富な情報も持っており、最期は自宅で家族に見守られて逝きたいと願うケースが増えています。介護を担う家族もまだ若く、最期は本人の望みを叶えてあげたいと考えます。住み慣れた地域の医師が往診して、痛みのコントロールや死亡の診断もできるので、本人や家族にとって理想的な終末期を過ごすことができるようになっています。

 しかし、80~90歳代の超高齢者になると事情が少し変わります。例え「がん」があったとしてもその進行は非常に緩やかですし、多くの病気を抱えているため、死期が近いかどうかを判断することが難しくなります。世の中には100歳を超えても元気な人がいるように、人の寿命を推し量るのは非常に難しいと言えます。また超高齢者になると本人を見守る家族も高齢であるため在宅死はかなり難しくなるのが現状です。

【参考文献】
首相官邸. 社会保障国民会議 サービス保障(医療・介護・福祉)分科会(第2回)
資料3これからの社会の変化と医療・介護・福祉サービスについて. 2016

■共同著者
栗岡 住子(保健師、産業カウンセラー、MBA、医学博士)
詳細はこちら≫(オピニオン連載)公衆衛生看護に必要なマネジメント

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