オピニオン/保健指導あれこれ
地域での看取り

No.4 高齢者の看取り

看護師、社会福祉士、介護支援専門員、MBA(経営学修士)
神山 欣子
 近年、日本の平均寿命が延び、「人生90年」を想定した、生活設計が必要とされています。それぞれのライフステージを自分らしく満足に生きることは大切ですが、高齢期になると判断や選択が難しくなることが予測されます。とりわけ終末期のあり方や過ごし方はこれまでの日本の家族主義的な考え方だけでは解決できないのではないかと感じます。ヨーロッパの高齢者ケアを参考にあるべき姿を考えてみたいと思います。

 1. 高齢者の終末期の医療およびケア
 日本老年医学会では、「終末期」を「病状が不可逆的かつ進行性で、その時代に可能な限りの治療によっても病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり、近い将来の死が不可避となった状態」と定義しています。また、全ての人は、人生の最終局面である「死」を迎える際に、個々の価値観や思想・信条・信仰を十分に尊重した「最善の医療およびケア」を受ける権利を有すると立場表明しています。

 高齢者はいくつもの病気や障害、認知機能の低下をもっていることが多く、余命の予測が困難なことから、「終末期」の具体的な期間は定められません。また、「最善の医療およびケア」とは、「単に診断・治療のための医学的な知識・技術のみでなく、他の自然科学や人文科学・社会科学を含めたすべての知的・文化的成果を還元した適切な医療およびケア」とし、最新もしくは高度の医療やケアのすべてを注ぎ込むことを意味するものではないと述べています。

 高齢者の終末期のケアでは、苦痛の緩和とQOLの維持・向上がもっとも大切であり、医療者の満足(納得)のための診断や家族の都合(思い)で、ただ単に命を長らえさせることがないように、本人を中心として考えられなければならないと思います。


写真.高齢者は心穏やかにあるがままの人生を受け入れて生活しています

 2. オランダの高齢者ケア
 諸外国における在宅死亡率を比較すると、平均寿命に大きな差がないにも関わらず、スウエーデン51%、オランダ31%、フランス24.2%、日本は13.4%と、日本での在宅死亡率は低い状況です(表)。

 オランダにおける高齢者ケアは、ナーシングホーム(看護や介護が必要な高齢者等に対し、医療・介護双方のサービスの提供をする施設)が中心でしたが、高齢者率の上昇と共に社会保障費が増加し、国の経済的負担が大きくなり、制度変換の時期に来ていました。

 近年、オランダの在宅ケアとしては、ビュートゾルフ(Buurtzorg)が世界で注目されています。ビュートゾルフとは、オランダ語で「コミュニティケア」の意味を持っており、少人数のチームで訪問看護・介護、ケアマネジメント、リハビリ、予防といった総合的なケアを提供するものです。

 ビュートゾルフは、様々な年齢・疾患・障害を持った人に全人的なトータルケアを提供するため、分業ではなく小人数のチームで、一人の利用者に対する一貫したケアの提供を目指しており、日本の機能別でトップダウン型の在宅ケアとは大きく異なっています。

 1チーム4人で始めた組織が、わずか7年でオランダ全土に広がり、現在約750チーム・従業員(看護師・介護職・リハビリ職)8000人、利用者は年間約6万人で在宅ケアの6割以上を担っています。また、スゥエーデンやフランスでも自宅で死亡する前のケアが受けられるシステムが整っているため、病院に行かなくても最期まで自分らしく生活し、その沿線上に死があると考えられています。

 3. 日本がめざすしくみづくり
 日本は介護保険制度発足以来、介護サービスを使う高齢者は必ず主治医を持つことになっています。この主治医は、いわゆる総合診療医(General Practitioner)の役割を果たす意味があり、患者を安易に病院へ紹介するのではなく、患者の訴えをしっかり聞いて、本当に適切な医療を提供できるような仕組み作りが必要であろうと考えます。高齢者は仕事や子供たちとの絆を失っていることが多く、地域ともつながりが少なくなり、孤立しがちです。

 加齢に伴う身体の不調は医療だけで治るものではなく、その人に関心を持ち、生きる意味や望みを与えることが大切です。その延長線上に、その人らしい終末期があり、それに応じたケアが必要となると思います。

<参考文献>
日本老年学会.「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」2012年(2012年1月28日理事会承認)

■共同著者
栗岡 住子(保健師、産業カウンセラー、MBA、医学博士)
詳細はこちら≫(オピニオン連載)公衆衛生看護に必要なマネジメント

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