オピニオン/保健指導あれこれ
地域での看取り
No.4 高齢者の看取り
看護師、社会福祉士、介護支援専門員、MBA(経営学修士)
2016年05月18日
1. 高齢者の終末期の医療およびケア
日本老年医学会では、「終末期」を「病状が不可逆的かつ進行性で、その時代に可能な限りの治療によっても病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり、近い将来の死が不可避となった状態」と定義しています。また、全ての人は、人生の最終局面である「死」を迎える際に、個々の価値観や思想・信条・信仰を十分に尊重した「最善の医療およびケア」を受ける権利を有すると立場表明しています。
高齢者はいくつもの病気や障害、認知機能の低下をもっていることが多く、余命の予測が困難なことから、「終末期」の具体的な期間は定められません。また、「最善の医療およびケア」とは、「単に診断・治療のための医学的な知識・技術のみでなく、他の自然科学や人文科学・社会科学を含めたすべての知的・文化的成果を還元した適切な医療およびケア」とし、最新もしくは高度の医療やケアのすべてを注ぎ込むことを意味するものではないと述べています。
高齢者の終末期のケアでは、苦痛の緩和とQOLの維持・向上がもっとも大切であり、医療者の満足(納得)のための診断や家族の都合(思い)で、ただ単に命を長らえさせることがないように、本人を中心として考えられなければならないと思います。
写真.高齢者は心穏やかにあるがままの人生を受け入れて生活しています
2. オランダの高齢者ケア
諸外国における在宅死亡率を比較すると、平均寿命に大きな差がないにも関わらず、スウエーデン51%、オランダ31%、フランス24.2%、日本は13.4%と、日本での在宅死亡率は低い状況です(表)。
3. 日本がめざすしくみづくり
日本は介護保険制度発足以来、介護サービスを使う高齢者は必ず主治医を持つことになっています。この主治医は、いわゆる総合診療医(General Practitioner)の役割を果たす意味があり、患者を安易に病院へ紹介するのではなく、患者の訴えをしっかり聞いて、本当に適切な医療を提供できるような仕組み作りが必要であろうと考えます。高齢者は仕事や子供たちとの絆を失っていることが多く、地域ともつながりが少なくなり、孤立しがちです。
加齢に伴う身体の不調は医療だけで治るものではなく、その人に関心を持ち、生きる意味や望みを与えることが大切です。その延長線上に、その人らしい終末期があり、それに応じたケアが必要となると思います。
<参考文献>日本老年学会.「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」2012年(2012年1月28日理事会承認) ■共同著者 栗岡 住子(保健師、産業カウンセラー、MBA、医学博士) 詳細はこちら≫(オピニオン連載)公衆衛生看護に必要なマネジメント
「地域での看取り」もくじ
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