産業保健専門職育成現場レポート
③日本産業保健師会「新任期産業保健師養成研修」【後期】
前期研修後の「実践」を持ち寄り、振り返る機会
一般社団法人 日本産業保健師会(会長:岡田睦美氏)では、キャリア半年~5年未満の産業保健師を対象とした「新任期産業保健師養成研修」を実施している。本研修は、産業保健師のキャリアラダーを取り上げ、演習を通じた実践的なプログラムを中心に据えていることが特色である。
前期研修の模様に続き、本レポートでは、2024年1月に開催された後期研修の様子をお伝えする。
健診・保健指導計画を把握し、「産業保健活動」を考える
本研修は「新任期保健師に必要な能力を、講義や事例発表、自組織の課題を用いた演習を通じて強化する」ことを目的に掲げている。
前期研修で取り上げた「健康診断の実施から保健指導までの計画・実施・評価」を踏まえ、後期研修では、自組織での健康診断の計画を確認したうえで、新たな視点で実践活動を行うことが「事前課題」となっていた。後期研修はグループワークを中心に進められた。
<後期研修のプログラム>
- グループワーク1「実践結果を振り返り、課題を見つける」
- グループワーク2「キャリアラダーの自己チェックと実践計画のポイント」
- 講義「新任期保健師としての基本とあるべき姿」(講師:岡田睦美氏)
- グループワーク3「産業保健師の役割と視点」
前期研修後の実践活動を振り返り、自身のキャリアラダーを考える
グループワーク1「実践結果を振り返り、課題を見つける」
最初のディスカッションでは、前期研修で宿題となっていた「健診と保健指導の計画表」を発表し、自組織での今後の課題を検討することがテーマとされた。
参加者からは「社員に、健康に関する研修の意義を理解してもらう工夫も大切だが、産業保健師である自分自身が"そもそも誰のために行っているのか"という視点を持たないと、一人よがりの計画になってしまうことに気付いた」といった意見が挙がり、多くの賛同を得ていた。
また、計画表作成に際して「実際にその業務に取り組む社員に話を聞きに行くことで保健師として覚えてもらうことができた」という声もあり、関係者とのコミュニケーションや関係構築といった、実務を遂行するうえで欠かせない「メリット」も生じたようである。
グループワーク2「キャリアラダーの自己チェックと実践計画のポイント」
続いてのグループワークでは「産業保健師のキャリアラダー」が取り上げられた。
産業保健スタッフが複数名所属し、業務内容に対して客観的評価を受けられる機会があり、さらに会社独自のラダーがあるなど環境が整っている人もいる一方で、そういった機会に乏しい「一人職場」など、一人ひとりにさまざまな背景があるなど、「所属先の体制」による違いが見受けられた。
講師から「方向性がわからず我流になりがちなときこそ(前期研修で取り上げた)産業保健師版キャリアラダーを使ってほしい。今回の研修会でできた仲間や、交流会などに参加して相談できる人を増やすと今後の力強い味方になる」とエールが送られた。
「各自の今後の実践計画について考える」をテーマにした討議では、保健指導での目標と掲げた事項を実現するために「健診機関にどういった働きかけができるのか」という点も着目された。
健診準備にあまり参加できなかったことで、本来解決したいと考えていた課題とマッチしない健診内容となった事例から、「健診は社員に直接会える大事な期間ととらえ、しっかり準備することが大切」「あらかじめ考えて、または、別途事後のフォロー計画を考えておくことが重要」といった意見が出された。
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