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職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日

職場や家庭で社会生活をおくるうえで、怒りの感情をコントロールするスキルや心理トレーニングである「アンガーマネジメント」は大切だ。
怒りをあらわすことに得はなく、とくに職場では地位を下げることにつながりやすいことが明らかになった。
深呼吸、リラクゼーション、マインドフルネス、瞑想、スローヨガ、筋肉の弛緩などが、怒りを抑えるのに効果的であることが示された。
「怒り」を感じていることを紙に書いて捨てるだけでも、怒りが消失し、気持ちを鎮められることも分かった。
怒りを爆発させても得になることはない
社会生活をおくるうえで、怒りの感情をコントロールするスキルや心理トレーニングである「アンガーマネジメント」は大切だ。 怒りをあらわすことに得はなく、とくに職場では地位を下げることにつながりやすいことが、イスラエルのエルサレム ヘブライ大学などの研究で明らかになった。 「怒りの感情をあらわすことは、決してポジティブな手段にはならないことが示されました」と、同大学で政治学・国際学を研究しているロニ ポラット氏は言う。 「男性であるか女性であるかに関係なく、怒りは個人の地位を向上させるのに役立つものではなく、とくに職場では肯定的な結果をもたらさないことが多いことが示されました」としている。 研究グループは、計3,852人を対象とした4件の研究を解析。そのひとつは、職場で不条理な状況を経験するなどのシナリオを用意し、怒りを感情にあらわしている人に対し、同僚がどのように評価しているかなどを調査した。 その結果、多くの人は怒りをあらわしている人に対し、冷静を保っている人に比べ、低く評価していることが分かった。 「怒りを率直にあらわすことで、有能であるとみられ、地位が高く、その結果としてより多くの収入を得られると考える人もいるのですが、そうした認識は誤りであることが分かりました」と、ポラット氏は述べている。 それでは、怒りを効果的に鎮める方法はあるのだろうか? 次の2つの方法が提案されている。
怒りを鎮める方法 1 |
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深呼吸してリラックスする |
米オハイオ州立大学は、怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」の研究により、深呼吸やリラクゼーション、マインドフルネスなどが効果的であることを明らかにした。
「深呼吸、リラクゼーション、マインドフルネス、瞑想、スローヨガ、筋肉の弛緩などが、怒りを抑えるのに効果的であることが示されました」と、同大学コミュニケーション学部のブラッド ブッシュマン氏は言う。
「怒りを抑えるために、覚醒レベルを下げる活動に取り組み、神経を落ち着かせるのが良いことが分かりました。興奮レベルを高める活動は逆効果になります」としている。
ジョギングなどの活発な運動は、メンタルヘルスを改善するのにも有用とみられているが、激しすぎる運動は覚醒を高めるので、むしろ怒りを増大させる可能性が高いことも示された。
研究グループは今回、さまざまな性別・人種・年齢・文化を背景とする1万189人の参加者を対象とした154件の研究をメタ解析した。
「今日の社会では、多くの人がストレスに直面しており、それに対処する方法が必要です。効果的なストレス解消は、怒りを鎮めるのにも役立つ戦略となる可能性があります。ご自分に合ったリラクゼーションの方法を知っておくことは大切です」と、ブッシュマン氏は指摘している。
怒りを鎮める方法 2 |
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怒りを感じていることを紙に書いて捨てる |
「怒り」を感じていることを紙に書いて捨てたり、シュレッダーで裁断すると、怒りが消失し、気持ちが鎮まることを実証したと、名古屋大学が発表した。
研究グループは、平均年齢21歳の学生57人を対象に実験を行った。参加者が書いた文章に対して不当に低い評価を与えることで怒りを生じさせ、その後で怒りを感じたときの状況を客観的に紙に書いてもらった。
その紙を丸めてゴミ箱に捨てると、怒りの指標となる「怒り得点」が、侮辱される前と同程度まで低下した。
また、ゴミ箱に捨てる代わりに、シュレッダーで裁断した場合も、怒りは減少した。紙を箱に入れただけでは、怒りは減らなかった。
「ビジネスシーンなどで怒りを感じたときに、メモをとるようにして怒りを紙に書き出し、それを捨てることで、その場の怒りを抑えるといった応用が考えられます。この手法により、職場や家庭で簡単に怒りを抑制できるようになると期待されます」と、研究者は述べている。
研究は、名古屋大学大学院情報学研究科の川合伸幸教授、金谷悠太氏(研究当時)らによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。
Expressing workplace anger: Not the way to get ahead (エルサレム ヘブライ大学 2024年2月16日)Anger at work (Frontiers in Social Psychology 2024年2月13日)
Breathe, don't vent: Turning down the heat is key to managing anger (オハイオ州立大学 2024年3月18日)
A meta-analytic review of anger management activities that increase or decrease arousal: What fuels or douses rage? (Clinical Psychology Review 2024年4月)
Anger is eliminated with the disposal of a paper written because of provocation (Scientific Reports 2024年4月9日)
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