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生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切

 住居の近所に鮮食料品店がある高齢者は、介護費用が1人あたり月1,000円以上少なくなることが、7市町の約3.5万人の高齢者を9年間追跡した、千葉大学などによる研究で明らかになった。

 これを高齢者1万人にあてはめると、年間に1.6億円の介護費用を抑制できる計算になるという。

 生鮮食料品店へアクセスしやすい環境に住む高齢者は、野菜・果物・肉や魚などの摂取頻度が多いことなどが背景にあると考えられる。

 一方、気軽に立ち寄れる施設などがあると、介護費用はむしろ増えることも分かった。立ち寄れる施設があることは、健康に望ましい面と望ましくない面をもたらすとしている。

近くに生鮮食料品店があると高齢者の介護費用は低くなる

 住居の近所に鮮食料品店がある高齢者は、介護費用が1人あたり月1,367円少なくなることが、千葉大学が7市町の高齢者3万4,982人(男性 1万6,650人、女性 1万8,332人、平均年齢73.5歳)を9年間追跡した調査で明らかになった。

 追跡データを分析したところ、生鮮食料品店が近くにある高齢者は、6年間の期間中の累積介護費用が1人あたり約3万4,000円低くなった。

 高齢者1万人が生鮮食料品店の近くに住むことで、介護費用を年間約1.6億円抑制できる計算になる。

 また、25%の高齢者は「生鮮食料品店が近くにない」と回答したが、もしも近くに生鮮食料品店ができたら、月に約1,200万円、1人あたり約5.6%の介護費用を低減できるとしている。

 これまでも、都市部の緑が多い地域に居住する高齢者にはうつが少ないことや、生鮮食料品店の多い地域では、野菜・果物などの摂取頻度が高く、要介護認定が少ないことなどが報告されている。

鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が月1,367円低い

出典:千葉大学、2024年

立ち寄れる場所があると健康に望ましい面と望ましくない面が

 一方で、夜のひとり歩きが危ない場所がある高齢者は、介護費用が低くなり、気軽に立ち寄ることのできる家や施設がある高齢者は、介護費用が高くなるといった、予想に反した結果もみられた。

 夜歩くのが危ない場所があると回答した人では、ないと回答した人に比べ、介護費用は月1,383円低く、立ち寄りやすい施設があると回答した人は、ないと回答した人に比べ、月739円高くなった。

 「夜歩くのが危ない場所が多い地域には、駅周辺が多く含まれていたため、公共交通の利用しやすさなど、生活の利便性の高さが介護費用の低さにつながった可能性があります」と、研究者は指摘している。

 また、「立ち寄れる家や施設があることは、健康に望ましい面と望ましくない面の両面をもたらします。先行研究によると、立ち寄れる家や施設はフレイルを抑制できるという望ましい面をもつ一方で、飲食店に近いところに居住する高齢者は肥満と関連するという、望ましくない面も報告されています」としている。

"自然に健康になれる環境づくり"に向けた研究を推進

 研究は、千葉大学予防医学研究センターの陳昱儒特任研究員、花里真道准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Health & Place」に掲載された。

 研究グループは今回、近隣の生鮮食料品店、公園、歩道など、8種類の地域環境と介護費用との関連についてデータを分析した。

 「日本老年学的評価研究」(JAGES)のデータを用い、2010年~2019年の介護レセプトデータを結合可能な7市町(岩沼市、柏市、中央市、名古屋市、碧南市、常滑市、武豊町)に居住し、2010年に日常生活動作が自立していた高齢者を対象とした。追跡期間中に21.6%の高齢者が介護保険サービスを利用した。

 なお研究グループは今回、8種類の地域環境が自宅周辺(1キロメートル以内)にあると回答した人とないと回答した人について、その後約9年間の追跡期間中の累積介護総費用(円/人月)を比較した。

 8種類の地域環境は、(1) 運動や散歩に適した公園や歩道、(2) 魅力的な景色や建物、(3) 新鮮な野菜や果物が手に入る商店・施設、(4) 気軽に立ち寄ることができる家や施設、(5) 坂や段差など、歩くのが大変なところ、(6) 交通事故の危険が多い道路や交差点、(7) 夜の一人歩きが危ない場所、(8) 落書きやゴミの放置が目立つところとした。

 研究開始時の2010年時点の性別、年齢、等価所得、教育歴、婚姻状況、同居の有無、居住年数、うつ、主観的健康状態、高次生活機能(電車やバスでの外出、自分で食事が用意できるなど13項目)、受診状況、車使用の有無、外出頻度、歩行時間、人口密度、日照時間、降雪量の影響を統計学的に考慮した。

 「健康長寿社会の実現と社会保障の持続可能性の確保に向けて、国や自治体、個人が負担する介護費用の適正化が求められています。今後も引き続き、地域の特性を詳細に分析し介護費用に影響を与える要因の解明を進め、"自然に健康になれる環境づくり"に向けた研究を推進していきます」と、研究者は述べている。

千葉大学予防医学研究センター
Does the neighborhood built and social environment reduce long-term care costs for Japanese older people? The JAGES2010-2019 cohort study (Health & Place 2024年3月12日)
[Terahata]
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