オピニオン/保健指導あれこれ
終の棲家を決めるときの支援者の判断根拠
No.1 超高齢社会への提言「エイジング・リテラシー」
一般社団法人 有料老人ホーム入居支援センター理事長(代表理事)
2017年11月27日
超高齢社会とは、今までと何が違う
目にする新聞、雑誌、書物の記事、そして、耳にするテレビの報道、日常の話題に高齢者、高齢社会のトピックや、ニュースが取り挙げられない日は、ない毎日です。 何がどうしたというのでしょうか? 昔も老人はおられましたが、数が圧倒的に少なく、家族、親類も多く、親子、あるいは親、子、孫との同居も普通で、付合いも密でしたし、地域社会の連帯、絆も強かったのです。 ところが、2005年、高齢化率21%を超えたあたりから日常生活と年中行事を支えてきた家族や、親類縁者、隣近所、町内会のような、おせっかいをやき、支えあう環境が崩れ、日本は縁なき社会に突入しました。加えて、国の高齢者福祉予算も少子高齢化とともに厳しくなり、同時に親孝行などの言葉だけでなく、社会通念も大きく変わっています。特に長寿命からくる認知症の増加で家族介護、老老介護にも限界が来ています。 本来、老人、長老は、我らの大先輩であり、人生の達人であり、知恵者であり、社会において、又、家庭においても老人の役割があり、出番も多く、頼りになる存在だったのですが、最近の先端技術の進歩と変化のスピードは想像を上回る物があり、産業界、ビジネスの分野では彼らの知識や情報、ノウハウは、必ずしも有用、有益ではないのです。人間の加齢とは、個人にとっても、日本社会にとっても、初めての未知の分野
個人と社会が、空前絶後のスピードで、ここまで長寿化した例は、歴史的にも、地理学上も日本が初めてであり、世界中にも、諸外国にも、参考にするお手本もないのです。 当センターに相談に見えるお客様には、最高学府で学問をおさめた方、社会的地位の高い方、功成り名を挙げて富も築かれた方も、少なくないのですが、皆様全員が退職後の住まいと暮らしに、何の不安もない方は皆無のようです。 超高齢社会において歳を取るのはみんな初めての経験であり、自信を持って自らの終末期、臨終までを見通せる方はないと断言できます。根拠のない強がりは、別として、ADL(日常生活動作)の劣化、認知症、介護と施設、病気と医療、延命治療、遺言、相続などについて何のアドバイスも、手助けも不要であり、専門家の助言もなしで選択、判断、決断ができる人にはお目にかかったことがありません。 特に、後期高齢期からの重度の認知症や、複数の疾病で体力、知力、気力がなくなった状態で、自らの希望、要望、注文、不満、苦情などを相手にうまく伝えられなくなった状態までは、想像がつかない、あるいは考えたくないということもあります。 このような状態では、残念ながら、介護の現場においても、最悪の場合、放置、無視、軽視ごまかし、嘘、虐待、殺人さえもあり得る時代であり、社会の現実です。加齢とともに生じる ADL, ニーズ、価値観の変化
3つのステージ そのニーズの変化、優先順位
・高齢者65歳~ 身体的(ボデイ) ・後期高齢者75歳~ 精神的(マインド) ・超高齢者85歳~ 霊性的(スピリッツ)自信を持って推薦できるホームはほぼ20件に1件!
日本にはたくさんの老人ホームの種類があり、内容も複雑です。ただし、実際にあるのは「基準に届かないレベル」「基準を満たすレベル」「基準を上回るレベル」の3つのみです。どの対象者も「基準に届かないレベル」は望まないは確かでしょう。判断レベル | 内容 | 存在割合 |
---|---|---|
上.基準を上回るレベル | ・全ての公的基準、規制、指導を遥かに超える経営者の自主的、良心的・基準を超える生活、介護、看護、医療サービスを提供している・入居者、家族、スタッフ、全ての利害関係者が納得、満足、感謝している | 遥かに上回る自主基準全体の15% |
中.基準を満たすレベル | ・厚生労働省、都道府県の基準、規制、指導を満たし、人員配置もクリア・違法、違反もないが入居者満足、家族の感謝、職員の納得は稀である | 基準はクリア違法性はなし全体の70% |
下.基準に届かないレベル | ・厚生労働省、都道府県の基準、規制、指導を満たさず、人員配置も不足・大抵、建物、設備、環境も劣悪で、スタッフの研修、教育も不十分 | 基準は無視、又は未達全体の15% |
エイジング・リテラシー (Aging Literacy) を高めることが重要
現在の社会において、高齢者問題は、下記のような背景があります。 ① 速すぎる・・・・・・・(高齢化のスピード) ② 多すぎる・・・・・・・(ケアを必要とする高齢者、 労働人口に比べて) ③ 少なすぎる・・・・・(福祉予算) ④ 足りない・・・・・・・(智慧と工夫)(介護の人手) そして、高齢者問題は実に複雑です。対象者やそのご家族から老人ホームについて尋ねられる機会が多い専門職の皆さんに知っておいていただきたいのは「エイジング・リテラシー」です。このエイジング・リテラシーを高めること、それが超高齢社会を理解するために重要です。 ●エイジング・リテラシー (Aging Literacy)… 高齢化 加齢とは何か、その結果として生まれた社会現象、社会通念、政策、制度、規制、施設等の知識、理解、情報など そしてそれらの実態 ●個人として知る事、備えること 個人の意志&家族の希望の確認 ・認知症=後見人制度 ・遺言=エンデイングノート ・相続 ・看取りケア 延命治療=平穏死 地域資源基本情報:介護保険申請、地域包括支援センター、小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、介護予防教室についての情報など 次回は、実際に、対象者が入居し、日々を過ごす介護施設、高齢者住宅などに関する情報、データ、統計、特に実態から、終の棲家を決めるときの判断根拠について詳しく述べていこうと思います。「終の棲家を決めるときの支援者の判断根拠」もくじ
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