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中年期に食生活を改善すれば健康に年齢を重ねられる 食事で脳の老化も防げる アルコールの飲みすぎにはご注意

 中年期に食事を改善すると、健康的に年齢を重ね、高齢になっても自立した生活をおくり、質の高い生活をおくれるようになる可能性が高まることが、10万人超を対象とした大規模な調査で示された。

 中年期を通して健康的な食事をとり、肥満を予防し、内臓脂肪をためすぎないことは、年齢を重ねてからも脳の健康を良好に維持し、認知能力の低下を防止するのに役立つことも明らかになった。

 アルコールの飲みすぎにも注意が必要だ。お酒を飲みすぎない習慣のある人は、高齢になっても脳のダメージが少ないことが分かった。

中年期の食事改善が健康的な老化につながる

 中年期に食事スタイルを改善することは、健康的な老化につながることが、米国のハーバード公衆衛生大学院などによる新しい研究で示された。研究成果は、「Nature Medicine」に発表された。

 植物性食品を十分に食べ、脂肪の少ない動物性食品も適度にとり、超加工食品の摂取を抑える健康的な食事スタイルを維持すると、70歳までに主だった慢性疾患を発症することなく、認知機能や身体機能、精神機能を健康に維持できる可能性を高められるという。

 「これまでの研究は、特定の疾患と寿命との関連で、健康的な食事のパターンを調査したものが多かったのですが、今回の研究はもっと多面的な視点から、中年期の健康的な食事スタイルは、高齢になっても自立した生活をおくり、質の高い生活をおくる能力に大きく影響を与えることを解明することを目指しました」と、同大学院栄養・疫学部のフランク フー教授は言う。

 研究グループは、米国で実施された2件の大規模なコホート研究に参加した、39~69歳の10万5,015人の男女を30年間にわたり追跡して調べた。

 その結果、参加者の9.3%(9,771人)が、主だった慢性疾患を発症することなく、健康的に齢を重ねていることが明らかになった。

 解析したところ、健康的な加齢の可能性を高める食事スタイルは、野菜・全粒穀物・ナッツ類・豆類、低脂肪の乳製品・果物・体に良い不飽和脂肪酸を十分に摂取し、トランス脂肪酸、ナトリウム、加糖飲料、赤身肉や加工肉をとりすぎないことであることが浮き彫りになった。

 「中年期にもっとも健康的な食事をとっていた人は、もっとも不健康な食事をとっていた人に比べ、健康的に年齢を重ねられる可能性が、70歳時点で1.86倍に、75歳時点では2.24倍に高まりました」と、同大学院およびモントリオール大学栄養学部のアン ジュリー テシエ氏は言う。

 「健康的な食事は、すべての人にあてはまる画一的なものはなく、個人のニーズや好みに合わせて調整することも必要ですが、植物性食品を豊富にとり、健康的な動物性食品を適度に取り入れた食生活が、健康的な老化を全体的に促進すると考えられます」としている。

健康的な食事をとり内臓脂肪をためないことが脳の健康につながる

 中年期を通して健康的な食事をとり、肥満を予防し、内臓脂肪をためすぎないことが、年齢を重ねてからも脳の健康状態の改善と、認知能力の低下の防止につながることが、英国のオックスフォード大学などによる別の新しい研究でも明らかになった。

 「食事や運動などのライフスタイルを見直して、内臓脂肪型肥満を予防するための介入は、48歳から70歳のあいだに行うのが効果的であることが示唆されました」と、オックスフォード人間脳活動センターなどのダリア ジェンセン氏は言う。

 「この期間に行う保健指導と生活改善の支援は、認知症のリスクを軽減するための予防的介入としても重要です」としている。研究成果は、「JAMA Network Open」に発表された。

中年期に食事が健康的だった人は高齢になっても脳が健康

 研究グループは今回、英国で実施された2件の大規模なコホート研究に参加した計1,176人の成人を、最長で21年間追跡し、食事の質と健康状態の関連を調査し、磁気共鳴画像診断(MRI)などによる検査も行った。

 その結果、中年期から老年期にかけて、食事の質が良好であることは、脳の後頭葉や小脳への海馬の機能的な連結性の高さや、白質の健康などに関連していることが示された。

 さらに、ウエスト周囲径をヒップ周囲径で割ったウエストヒップ比(WHR)についても調査した。

 中年期を通じて健康的な食事をとっていた人は、WHRの値が小さく、高齢期の脳と認知機能の状態が良好である傾向が示された。

 WHRは英国で、肥満の体型指標として用いられており、その値が良好であると、腹部の脂肪の蓄積が少ないとみられている。

アルコールの飲みすぎも脳にダメージを与える
お酒を飲みすぎない習慣のある人は
高齢になっても脳の損傷が少ない
 アルコールの飲みすぎも脳にダメージを与える。お酒を飲みすぎないようしていた人は、高齢になっても脳の損傷が少ないことが分かった。研究は、米国神経学会(AAN)が発表したもの。

 逆に、アルコール飲料を週に8ドリンク以上飲んでいる人は、記憶や思考の障害に関連する脳の損傷の兆候があらわれやすいことが示された。

 1ドリンクは、ビール350mLに相当し、純アルコールに換算すると14gになる。ビールを毎日飲んでいるという人は注意が必要だ。

 「過度のアルコール摂取は、健康障害や死亡の増加につながるだけでなく、脳にもダメージを与え、記憶や思考の障害を引き起こす可能性があることが分かりました」と、ブラジルのサンパウロ大学医学部のアルベルト フェルナンド オリベイラ フスト氏は言う。

 研究グループは、死亡時の平均年齢が75歳だった高齢者1,781人の脳を調べた。脳血管の病変は、飲酒経験のない人では40%にみられたが、軽度の飲酒の習慣のあった人では44%に、重度の飲酒の習慣のあった人では50%にそれぞれ増えた。

 脳血管の病変が起こる可能性は、アルコールをまったく飲まない人に比べ、飲む量が中程度の人では60%高く、飲酒量が増えるにつれ89%から133%まで高くなった。

 「過度の飲酒は脳損傷の兆候と直接関連しており、脳の健康に長期的な影響を与え、記憶力や思考力に悪い影響を及ぼす可能性があります」と、フスト氏は言う。

 「アルコールを飲みすぎている人に、生活を見直してもらい、飲酒量を減らすために支援を行う必要があります」としている。

Healthy eating in midlife linked to overall healthy aging (ハーバード公衆衛生大学院 2025年3月24日)
Optimal dietary patterns for healthy aging (Nature Medicine 2025年3月24日)
Association of diet and waist-to-hip ratio with brain connectivity and memory in aging (JAMA Network 2025年3月12日)
Association of Diet and Waist-to-Hip Ratio With Brain Connectivity and Memory in Aging (JAMA Network Open 2025年3月12日)
How does heavy drinking affect the brain? : Eight or more drinks per week linked to signs of injury in the brain (米国神経学会 2025年4月9日)
Association Between Alcohol Consumption, Cognitive Abilities, and Neuropathologic Changes: A Population-Based Autopsy Study (Neurology 2025年5月)

[Terahata]
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