日本の女性の極端な「痩せ」は不健康 体調不良をともなう低体重や低栄養を新たな症候群として位置付け 日本肥満学会など

日本肥満学会は、とくに日本の若い女性で低体重(痩せ)が多くみられることを課題として、低体重や低栄養が骨量の低下、月経周期異常、体調不良などにつながりやすいことから、新たな症候群「女性の低体重/低栄養症候群(FUS:Female Underweight/Undernutrition Syndrome)」として位置づけ、診断基準や予防指針の整備などに取り組むと発表した。
とくに骨量低下に対する早期の発見や介入は、女性のライフコース全体での健康維持の観点からも重要としている。
ファッション・美容産業などに対しても、痩せを過度に推奨する広告表現の見直しを促し、多様な体型を肯定するガイドライン策定を働きかけることが望ましいとしている。
体調不良をともなう低体重や低栄養を新たな症候群として位置付け
日本肥満学会は、とくに日本の若い女性で低体重(痩せ)が多くみられることを課題として、低体重や低栄養が骨量の低下、月経周期異常、体調不良などにつながりやすいことから、新たな症候群「女性の低体重/低栄養症候群(FUS:Female Underweight/Undernutrition Syndrome)」として位置づけ、診断基準や予防指針の整備などに取り組むと発表した。
同学会は、日本骨粗鬆症学会、日本産科婦人科学会、日本小児内分泌学会、日本女性医学学会、日本心理学会と協同してワーキンググループ(委員長:小川渉・神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学部門 教授)を立ち上げた。
現在、特定保健指導や職域健診などでは、各種健診では肥満を対象とした介入が主に実施されているが、低体重・低栄養やその関連疾患に対しても、同様の視点で優先度を高める必要があるとしている。
とくに骨量低下に対する早期の発見や介入は、女性のライフコース全体での健康維持の観点からも重要であり、今後は、FUSのスクリーニングを含め、追加的な測定や介入を行う仕組みの整備が必要になる可能性があるとしている。
小・中・高等学校の保健教育や、大学生向けの健康啓発の場でも、正しい食習慣を学び、適切なボディイメージを獲得する機会の拡充が求められる。心理的支援体制を強化することも重要としている。
ファッション・美容産業などに対しても、痩せを過度に推奨する広告表現の見直しを促し、多様な体型を肯定するガイドライン策定を働きかけることが望ましいとしている。
「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)に対し、今後は診断基準や予防・介入プログラムの充実をはかり、医療・教育・行政・産業界が一体となった総合的アプローチを推進する必要があります。これらの取り組みが、日本の若年女性の健康改善と次世代の健康促進に寄与することが期待されます」と、同学会では述べている。
「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」はなぜ好ましくないか
日本肥満学会が法被用したステートメントでは、閉経前までの成人女性を中心とした低体重の増加の問題点を整理し、新たな疾患概念の名称・定義・スティグマ対策を示すとともに、その改善策を論じるとしている。
「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」の定義を、「低体重または低栄養の状態を背景として、それを原因とした疾患・症状・徴候を合併している状態」とし、FUSに含まれる主な疾患や状態として、次のことを挙げている。
女性の低体重/低栄養症候群(FUS)
BMIが18.5未満、筋肉量や筋力の低下、貧血など | |
栄養素不足 | ビタミン D・葉酸・亜鉛・鉄・カルシウムなど |
性ホルモンの異常 | 月経周期異常など |
骨代謝の異常 | 低骨密度、骨粗鬆症、骨減少症など |
その他の代謝異常 | 耐糖能異常、脂質異常症など |
循環・血液の異常 | 徐脈、低血圧など |
抑うつ、不安、集中力低下、認知機能低下、倦怠感、睡眠障害、冷え性、頭痛、便秘、髪質・肌質の低下、身体活動低下など |
「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)ステートメント」の主な内容は、▼日本の女性における低体重者の現状とライフコースへの影響、▼低体重および低栄養による健康リスクや症状、▼新たな症候群の概念、▼FUSの原因と対処法、▼今後の方向性と提言など。
日本は低体重(痩せ)の女性が多い 痩身願望を生み出す社会へのアプローチも必要
日本の20代女性では、2割前後がBMI(体格指数)が18.5未満の低体重(痩せ)という報告があり、先進国のなかでもとくに高率になっている。
低体重や低栄養は、骨量の低下や月経周期異常をはじめとする女性の健康に関わるさまざまな障害と関連していることが知られている。
日本で低体重(痩せ)女性が多い背景として、ソーシャルネットワークサービス(SNS)やファッション誌などを通じた「痩せ=美」という価値観が深く浸透し、それに起因する強い痩身願望があると考えられる。
また近年では、糖尿病や肥満症の治療薬であるGLP-1受容体作動薬の適応外使用が「安易な痩身法」として紹介され、社会問題にもなっている。
しかし、従来の医療制度や公衆衛生施策では、肥満への対策が重視されており、低体重や低栄養に対する系統的アプローチは不十分だった。
その原因として、まず低体重や低栄養と疾患の関係をあらわすような疾患概念がなかったことが挙げられる。また、この問題を解決するためには、個人の意識や行動に焦点を当てるだけではなく、痩身願望を生み出す社会構造へのアプローチが不可欠だ。
こうした背景から、日本肥満学会は、日本骨粗鬆症学会、日本産科婦人科学会、日本小児内分泌学会、日本女性医学学会、日本心理学会と協同してワーキンググループを立ち上げた。
ワーキンググループでは、骨量の低下や月経周期異常、体調不良をともなう低体重や低栄養の状態を、新たな症候群として位置付け、診断基準や予防指針の整備を目的とすると同時に、この課題の解決方法についても議論を進めているという。
FUS:あなたが日頃悩んでいる様々な体の不調は、痩せ(低体重)や栄養不足が原因で引き起こされているかもしれません。 (スズケン)

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