第33回 日本産業衛生学会 全国協議会「多様化する社会と産業保健」
レポート#1
テーマは「多様化する社会と産業保健」
2023年10月27日~29日、山梨・YCC県民文化ホールおよび山梨県立図書館で「第33回 日本産業衛生学会 全国協議会 多様化する社会と産業保健」が開催されました。
感染症や少子高齢化などの社会の変化に伴い多様化が加速しており、産業衛生分野においても変化への対応が課題として挙がっています。どのように対応していけばよいのか、ヒントとなる学びを得られる3日間となりました。
第33回 日本産業衛生学会 全国協議会日本産業衛生学会(理事長:森 晃爾氏/産業医科大学)は、日本において最も長い歴史を持つ、産業衛生に関する最大規模の学術団体である。日本医師会および関連諸学会と連携して本分野の人材育成に積極的に取り組むなど、産業衛生の質の向上を目指している。
本大会では、現代社会の多様化と産業保健に関連する「少子高齢化」「両立支援」「感染症」「メンタルヘルス」「働き方改革」などの話題が取り上げられた。プログラムからいくつかピックアップしてレポートする。
メインシンポジウム「多様化する社会と産業保健」
座長:小林正洋氏(山梨県医師会)、堤明純氏(北里大学医学部公衆衛生学)
■社会の多様化と企業経営における多様性の重要性
楊 文蕾氏(オリンパス株式会社)
■ダイバーシティ&インクルージョン社会の実現に向けて
梅田 惠氏(筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局)
■多様化に対応した働き方を支える職場環境の構築
齋藤 敦子氏(コクヨ株式会社)
■社会の多様性に対応する産業保健
森 晃爾氏(産業医科大学産業生態科学研究所産業保健経営学研究室)
多様化のイメージは一般的には女性の社会進出や障碍者雇用などが注目されているが、本シンポジウムではあらゆる違いを乗り越えた「ダイバーシティ&インクルージョン社会」に注目。産業保健が多様化する社会にどのように対応していくべきかなどが議論された。
梅田 惠氏の「ダイバーシティ&インクルージョン社会の実現に向けて」では、ダイバーシティはこれまでは特定のマイノリティ(少数)の課題と捉えられていたが、むしろマイノリティを作り出しているマジョリティ(多数)側の課題でもあると指摘。「目に見えない違い」も含め、あらゆる人を対象とすることが重要だとし、個人個人がよりよく働ける環境を提供することが大切だと述べた。
総合討論では、社会の多様化に応じて産業保健職も進化する必要があるとし、これからはアプローチが「個」に向かっていくと同時に、労働者自身にも自律性が求められる時代に突入すると語られた。
教育講演2「第14次労働災害防止計画について」
座長:武林 亨氏(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室)
■第4期がん対策推進基本計画について
船井 雄一郎氏(厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課)
労働環境における死亡災害は減少傾向にある一方で、2022年での死傷災害は過去20年間で最多記録となるなど、「労働災害防止計画」は一進一退を繰り返している。このような状況を受け、達成できる目標を改めて見直すこととなった「第14次労働災害防止計画」では、アウトプット指標が掲げられた。
死傷災害の内訳では転倒が最も多い。特に中高年齢の女性に多くみられ、転倒による平均欠勤日数は約1カ月半にも及ぶことから、対策すべき点として挙げられた。船井 雄一郎氏は、システムやツールを活用して、労働者一人ひとりの転倒リスクチェックを行うこともよいと語った。
安心・安全な職場づくりは「コスト」ではなく「人的投資」として考えることが大切であり、アウトプット指標は労働者の協力を得ながら事業者がクリアすべき課題であると締めくくった。
今後の開催情報
次回の日本産業衛生学会は2024年5月に広島で開催予定。開催概要は以下のとおり。
第97回 日本産業衛生学会
■テーマ:変革期における 産業保健のアイデンティティ-サイエンスに基づく組織と労働者の両立支援-
■日 程:2024年5月22日(水)~ 5月25日(土)
■会 場:広島国際会議場・中国新聞ビル
■企画運営委員長:真鍋憲幸(三菱ケミカルグループ株式会社 人事本部全社統括産業医)
日本産業衛生学会
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