トピックス・レポート

第96回 日本産業衛生学会「強くしなやかな産業保健をめざして」
レポート#2

#1
#2

産業保健師のキャリア形成、能力向上に関するレポート


 2023年5月10日~12日、宇都宮・ライトキューブ宇都宮で「第96回 日本産業衛生学会」が開催されました。

 本記事では「#1」に引き続き、保健師・渡辺絵里さん(株式会社 メディヴァ)によるレポートを掲載します。

第96回 日本産業衛生学会

現地参加で得た学びと、考える機会

 第96回日本産業衛生学会へ現地参加し、多くの学びを得ると共に産業保健師のキャリア形成や能力向上について考える機会とすることができました。

産業保健看護部会シンポジウム
次世代につなぐ産業保健看護職のキャリアをネットワークの形成

座長:吉川悦子氏(日本赤十字看護大学) 帆苅なおみ氏(サンデン(株))

1人職場・未経験からはじめる産業保健看護職のネットワークの構築とキャリア形成
 佐々木祥江氏(とちぎコープ生活協同組合管理部人事総務)

転職の壁と疑問から広がった 多職種ネットワークとキャリア形成の幅
 小川明夏氏((株)エビデント/東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)

私のこれまでの産業保健活動を振り返って
 平田真以子氏((株)クボタ健康経営推進部)

指定発言:五十嵐千代氏(東京工科大学医療保健学部看護学科)

 今回が日本産業衛生学会「産業看護部会」から「産業保健看護部会」に改名後、初の学会開催でした。部会作成のテキスト『産業保健看護学』[1]のご紹介もあり、産業保健看護職の地位や能力を底上げすることへの意気込みを感じました。

 登壇した若手保健師の方から、未経験から産業保健への転職の壁、入職後も一人職場で試行錯誤を繰り返し、社内に専門的知見を質問できる同職種が不在で常に不安を抱えていたこと。その解決のため、自ら社外の研究会等へ知見やアドバイザーを求めながら自職場の日常の活動を通して実績を積み重ね、専門職としての信頼を経て正社員登用で評価された、という頼もしいエピソードをご紹介いただきました。

 入職後に初めて知る一人職場の孤独な環境、自ら仕事を造る立場は過酷だったと想像します。ですが、そこに屈せず、自ら社外へ出てアドバイザーや仲間を見つけ、つながることにより、ご自身のキャリア形成の糧にされていることが伝わってきました。

 それゆえ、日本産業衛生学会は"産業保健の発展"を目的とする国内最大の学術団体であるため、本学会に所属すること、さらに可能であれば現地参加で最新の知見を一度に吸収する機会は、とても貴重であることを実感しました。

産業保健看護職の自己育成や実践能力を向上させるには

 産業保健看護職が専門性を高めるために系統的に知識と技術を獲得していくことは、一人職場や中堅期以降だと難しいのが実情です。
 その解決になり得るツールを紹介したのが、一般演題「OL18-3 産業保健看護職実践能力開発プログラム<第3報>―中堅期スキルチェックリスト開発―」(齋藤明子氏/(株)ヘルス&ライフサポート)です。筆者も共同開発者の一人として、本発表に参加しています。

 「中堅期チェックリスト」は、140の事例解析がベースとなり、101の管理ポイントに基づく85の設問で構成されています。
 中堅期に求められる能力はCスキル(Conceptual Skill:問題解決技能)の割合が大きく、マネジメントやリーダーシップ能力が問われる内容です。研究会で定義した「産業保健看護職に必要なスキル7つの要素(詳細は 『手引き』をご参照ください)」が含まれているため、設問に答えるだけでも、自らの姿勢を問いただし、視座を上げてくれるものです。実際にセルフチェックすることで、できていること・できていないことが客観的に見える化でき、自信になる一方、自身の課題とも向き合える機会となります。
 現在の課題スキルを補強するために上司等と育成計画を作成することも可能ですし、自ら振り返りの元、課題を意識しながら業務に臨むことで自己育成をサポートするツールとなります。

 今回の発表で取り上げた「中堅期チェックリスト」の対象は「産業保健看護経験4年目以上が目安」です。もっと経験年数の短い方を対象とした「新任期スキルチェックリスト」もウェブサイト上で無料公開していますので[2]、ご自身の保健師活動の振り返りや保健師の実践能力を確認し向上させたい方は、ぜひお試しください。

働く人々を取り巻く環境の変化、産業保健看護職の発展と可能性への期待

 今回の学会テーマは「強くしなやかな産業保健をめざして」でした。
 新型コロナ流行以降、私たちの生活は一変し、働く環境も出社・リモート・ハイブリッド型と多様な働き方が一般化しました。産業保健を提供する側も、多職種で各役割を発揮してチーム一丸となり、「変わりゆく世の中を支えていこう」というメッセージが各講演等で共通していたと思います。その未来を実現させるには、私たち産業保健看護職が"登場人物の強みを活かす"コーディネート機能の発揮を期待されていると、感じとるものがありました。

 継続して専門職としての能力を積み上げる努力を惜しまずに、日々精進したいと決意を新たにしました。

参考情報
[1]公益社団法人 日本産業衛生学会 産業保健看護部会 編『必携 産業保健看護学-基礎から応用・実践まで-』(公益財団法人 産業医学振興財団)
[2]新任期/中堅期スキルチェックリスト活用の手引き(産業保健看護マトリックス研究会)

今後の開催情報

 次回の日本産業衛生学会は2024年5月に広島で開催予定。今年10月には、山梨県で日本産業衛生学会全国協議会が開催される。開催概要は以下のとおり。

第33回 日本産業衛生学会全国協議会

■テーマ:多様化する社会と産業保健
■日 程:2023年10月27日(金)~ 10月29日(日)
■会 場:山梨県・YCC県民文化ホール、山梨県立図書館
■企画運営委員長:小林正洋(山梨県医師会理事)

第33回 日本産業衛生学会全国協議会
日本産業衛生学会
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