オピニオン/保健指導あれこれ
健診機関での保健師活動 ~活動の場面が違っても保健師活動の基本は同じ~
No.4 保健師活動の発展のための組織化 ~なぜ、今、組織化なのか?~
(公財)神奈川県予防医学協会 健康創造室 相談課
2016年04月13日
継続教育の疑問からはじめた取り組み(当課の例 気づき)
当課はNo.2で述べたように、企業の大小にかかわらず、すべての人がいきいきと働ける職場環境づくりや、働く人自身が健康を推進できるシステムを創造するように、支援しています。
その中でも特に、産業医や産業保健師等の産業保健スタッフを配置していない中小規模事業場のすべての人々が、産業保健サービスを受けられるように、活動することを目指し、これまで質を確保する取組を実施してきました。(表1参照)そして、新卒者を採用する機会が増加したことをきっかけに数年前から、教育の方法についても、検討会を設けていました。
表1 これまでの質を確保する取組
組織化の取り組み
日本看護協会が2006年に公表した「看護業務基準」の4看護実践の組織化の基準では「看護実践の組織化とは、看護職が看護実践を提供し、保証するためのシステムを構築することである。(中略)特に近年、対象者のQOL向上及び経営管理の視点から、効果性の高い看護実践の組織化、チーム医療の推進等が求められるようになったこと等に伴い、看護の質向上に寄与する看護実践の組織化はますます重要になっている。」1)と述べられており、その項目を抜粋し表2に示しました。その組織化は看護職の管理者によって行われるとされています。
表2 4-1では、『継続的かつ一貫性のある看護を提供するためには看護の組織化が必要であり、その組織は理念に基づき運営される。』とあり、そこで、当課では看護管理者(担当部長)1名とその他の管理職(担当課長)2名で、この看護業務基準に沿って組織化を実施することを決め、まずは理念(表3)の再検討をしました。現在は看護管理について学び、並行して教育にも人材育成の考えを導入し、課の理念にそった教育方針を定め継続教育にも取り組み、看護組織として組織化をはじめているところです。
これから取り組む課題を表4に示します。この課題を解決するためには、まず、そのシステムをつくり、じっくりと育てていくことが必要であると考えていますが、そのシステムが機能するには、これから10年位かかるのではないかと予測しています。
表2 看護業務基準1)4看護実践の組織化の基準の項目抜粋
表3 再検討した健康創造室相談課 理念
表4 これから取り組む課題
おわりに
これまで、健診機関の保健師活動として、当会の例をご紹介させていただきました。最終話である今号で終結するまでに、1年以上かかってしまいました。現在、人員減少のさなか、中間管理職である私も実業務を行い、日常業務で精一杯の状況であることも関係していますが、本当の理由は当課の組織が混沌としていて、それを整理しているところだったからです。できる限り、現状をお届けしたいという思いから、それをどのように表現すると伝えられるのかと大変考えました。他機関の保健師からは、歴史や実績があることを時々好評価して頂くことがあり、大変恐縮しておりますが、現状はこのような課題があり、その改善に向かって必死に取り組んでいます。
この体験を通して、いつの時代も、どんな機関でも「今のままでよい。ありのままでよい。」ことはなく、組織の「あるべき姿」を目指すことが必要であることを痛感しました。それは、保健師活動の基本である組織の課題解決で、担当している対象の集団の健康のために何をすべきかとPDCAをまわすのと同じように、私たちが所属している組織に対しても実態を把握し、自分たちの組織の理念にそってあるべき姿を思い描き、PDCAをまわすことではないでしょうか?
同じ健診機関・労働衛生機関で、先行して取り組んでいらっしゃる機関もあり、参考にさせていただいておりますが、この記事をお読みいただいて、当会での現状を多くの機関の方々に共有していただくことでお互いの組織が発展し、ひいては健診機関全体の保健師活動が発展すればよいなぁというのが私の思いです。
この記事を書かせていただくことで、このように考える機会をくださり、感謝しております。
引用・参考文献1)社団法人日本看護協会「看護業務基準」(2006年度改訂版)
2)社団法人日本看護協会「看護にかかわる主要な用語解説」-概念的定義・歴史的変遷・社会的文脈-
3)原玲子著、「目標管理とリンクした看護職キャリア開発ラダーのつくり方・活かし方」、株)日本看護協会出版会、2015年1月31日、第1版第1刷
「健診機関での保健師活動 ~活動の場面が違っても保健師活動の基本は同じ~」もくじ
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