No.2 第二期特定健康診査と人間ドック
東京慈恵会医科大学院健康科学 教授
和田 高士
国民の受療の実態を見ると、高齢期に向けて生活習慣病の外来受診率が徐々に増加し、75歳頃を境にして生活習慣病を中心とした入院受療率が上昇しています。これを個人に置き換えてみますと、食べ過ぎや運動不足等の不健康な生活習慣が、肥満とくに内臓脂肪の蓄積、やがて糖尿病、高血圧症、脂質異常症などといった生活習慣病の発症を招きます。外来通院・投薬が始まり、生活習慣の改善がないままに、その後も疾患が重症化し、虚血性心疾患や脳血管障害などの発症に至るという展開が生じます。
したがって、若い時から生活習慣の改善に取組むことより、これらの生活習慣病の予防対策を進め、疾病発症しない境界域の段階で留めることができれば、重症化の最初のステップである通院治療を受ける者を減らすことができます。この結果、国民の生活の質の維持及び向上を図りながら医療費の伸びの抑制を実現することが可能となります。
特定健康診査は、メタボリックシンドロームに着目し、この該当者及び予備群を減少させるための特定保健指導を必要とする者を、的確に抽出するために行います。
特定保健指導は、内臓脂肪型肥満に着目し、その要因となっている生活習慣を改善するための保健指導を行うことにより、対象者が自らの生活習慣における課題を認識して行動変容と自己管理を行うとともに、健康的な生活を維持することができるようにし、生活習慣病を予防することを目的とするものです。
この特定健康診査・特定保健指導は国が果たす国民義務型の健診の1つです。会社に勤めている人は労働安全衛生法に基づいて年に1回定期健康診断が義務付けられています。これらの健診は内容が限られていますので、体全体をチェックするには限界があります。
一方、人間ドックは任意型健診であり、この特定健康診査のみならず、がん検診をも包括した大きな健診システムです。すなわち、人間ドックを1回受けることで、特定健康診査も何種類ものがん検診を済ますことができるのです。
日本人間ドック学会では、積極的に特定保健指導にも関与すべく、的確な保健指導ができる人材育成制度、「健診情報管理士」の認定にはブラッシュアップ研修会の開催・受講により、保健指導の能力向上に努めています。
さて平成25年度から開始された第2期の特定健康診査では、糖尿病の検査項目HbA1cがJDS法からNGSP法に変更されました。NGSP法では0.4%分上乗せされた結果として表示されます。当然のことながら、判定基準も上乗せされています。そして、第2期では特定健康診査の受診率の向上、特定保健指導の実施率の向上、その結果、メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少させることが大きな目標として掲げられました。
特定健康診査とは、ただ肥満を見つけるものではありません。自覚症状が現れにくく、かつ放置していると命にかかわる高血圧、糖尿病、脂質異常症などを発見してくれるシステムです。そして、軽症のうちに、薬を使わずに改善する仕組みこれが特定保健指導なのです。受けてみないと、異常の有無はわかりません。特定健康診査、まず受けましょう。