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【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?

 睡眠は、すべての世代の健康維持・増進に不可欠な休養活動だが、日本人の平均睡眠時間は世界と比較して短い。とくに日本の働き盛りの世代では、十分な睡眠をとれていないことに気づいていない人も多いという調査結果が発表されている。

 十分な睡眠時間を確保し、良い睡眠をとるためのポイントが紹介されている。

 睡眠アプリなどの利⽤により、睡眠指標の改善が促され、肥満の予防・改善にもつながる可能性が、新しい研究で示された。

 全国の学校の子供を対象に、ウエアラブルデバイスを用いて睡眠実態を把握し、睡眠衛生に関する理解を促すプロジェクトも進行中だ。

睡眠が不足すると何が良くないのか?

 厚生労働省は、睡眠学の世界的権威である筑波大学の柳沢正史教授のインタービュー記事の公開を開始した。

 睡眠は、すべての世代の健康維持・増進に不可欠な休養活動だが、日本人の平均睡眠時間は世界と比較して短い。とくに日本の働き盛りの世代では、十分な睡眠をとれていないことに気づいていない人も多いとしている。

 睡眠が不足することで心身の健康に影響を及ぼし、不調だけでなく病気や事故をまねく場合もある。十分な質と量の睡眠を確保することは、重要な課題になっている。

 「長期的な睡眠不足を"睡眠負債"とよく言いますが、睡眠の借金がたまってくると、身体的な病気のリスクが上がっていくことが知られています。もっともエビデンスレベルが高いのが、いわゆるメタボリックシンドロームの類で、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症などの生活習慣病です。メタボのリスクは確実に上がることが知られています」と、柳沢教授は述べている。

 「また、免疫系の働きも悪くなるので、いろいろな感染症にかかりやすくなったり、一部のがんのリスクが上がるという報告もあります」。

 「さらに、うつ病をはじめとしたメンタルの問題についても、発症や悪化に関係することがわかっています。ほかにも、中高年以降になると睡眠不足をはじめとする睡眠障害があると、認知症の発症リスクが上がることが分かっています」としている。

良い睡眠をとるためのポイント

 柳沢教授は、筑波大学の睡眠の研究所である国際統合睡眠医科学研究機構で、睡眠研究を行っている。さらに、大学発ベンチャーとして、脳波測定ウエアラブルデバイスとAIを駆使した自動解析による睡眠測定サービスを行う「S'UIMIN」を立ち上げた。

 十分な睡眠時間を確保し、良い睡眠をとるためのポイントとして、柳沢教授は「寝室の環境を整える」「昼間にアクティブに過ごす」「自分が眠くなるための入眠儀式をもつ」「夕方以降の夜の時間帯に仮眠をとらない」ことなどを紹介している。夕方以降のカフェイン摂取や、大量の飲酒、喫煙も睡眠の質を下げる原因になるという。

ゲーム要素をもたせたアプリで睡眠を改善

 近年、健康に関する生活習慣を記録できるスマホなどで使えるアプリが開発されており、そのなかには、ゲーム要素をもたせて継続率や効果を高めるアプリも登場している。

 柳沢教授らの最近の研究では、睡眠計測ゲームアプリなどの利⽤は、睡眠指標の改善を促し、それにともない肥満の予防・改善につながる可能性が示されている。研究成果は「Sleep Health」に発表された。

 研究グループは、睡眠計測ゲームアプリと、食事・体重管理アプリを同時に利用した2,063人のデータを解析。

 その結果、睡眠計測ゲームアプリ利用開始後の90日間で、総睡眠時間が平均5.5時間から6.3時間へと0.8時間長くなり、また睡眠潜時などの睡眠指標が改善した人は、体格指数(BMI)がより低下したことが明らかになった。

アプリ利⽤により睡眠改善のインセンティブが働く可能性

 研究グループは今回、睡眠計測ゲームアプリ「Pokémon Sleep」、askenの食事・体重管理アプリ「あすけん」を90日間以上、同時に利用した人を対象に、それらの利用データを解析し、総睡眠時間、睡眠潜時(寝床に入ってから寝つくまでの時間)、中途覚醒時間割合、寝床に入る時刻の4つの睡眠指標の変化を検討し、BMIの変化の違いなどを検証した。

 「Pokémon Sleep」は、⻑く寝ること(16歳以上は8.5時間まで、16歳未満は11時間まで)により、ポケモンの寝顔を集め、また⾃分で設定した時刻通りに寝床に⼊るとゲームが有利に進み、報酬を得ることができる、ゲーム要素を備えているアプリ。

 また、「あすけん」は、スマホ⽤⾷事管理アプリで、⾃分の体重や⾷事内容を記録することで、適切な⽬標摂取エネルギーや各種栄養素に対する過不⾜が分かる。管理栄養⼠が監修した⾷事内容に対するフィードバックや⾷⽣活のアドバイスも提供する。

 「アプリの利⽤により、睡眠指標が改善したメカニズムとしては、アプリ内のゲーム要素がもたらすインセンティブ(⻑く眠ることによるポイントや、⾃分で設定した時刻通りに寝床に⼊ることで得られるスタンプ)が働いた可能性が挙げられます」と、研究者は述べている。

 「また、これまでの研究で、睡眠指標が悪いと、代謝や⾷欲関連ホルモンを介して肥満につながることが⽰されており、今回の研究でも、睡眠指標の改善にともない肥満に関わる状態が改善し、BMIの低下につながった可能性が考えられます」としている。

全国の学校の子供を対象に睡眠調査を実施
「子ども睡眠健診」プロジェクトを推進

 理化学研究所、東京大学、久留米は、全国の学校の子供(小中高生)を対象に、ウエアラブルデバイスを用いた睡眠測定を実施し、日本の子供の睡眠実態の把握と、保護者などに対して睡眠衛生に関する理解を増進する「子ども睡眠健診」プロジェクトを推進している。

 プロジェクトでは、参加校の第四次募集が実施されている。対象は日本全国の学校(小・中・高)および自治体で、参加日程は2025年4月~2026年3月(先着順に調整)、参加費は無料としている。

 プロジェクトは2022年に開始され、これまで全国各地ののべ142校の学校から約1万3,500人の子供たちが参加しているという。

 これまでのデータ解析から、現代の日本の子供たちの睡眠実態の特徴として、▼平日に睡眠不足が蓄積し、休日に睡眠補填がみられる、▼学年が上がるにつれて平日と休日の起床時刻に大きな乖離が生じ、「社会的時差ぼけ」の状態にあることなどが示されている。

 「子供たちの睡眠状況を改善するためには、自身の睡眠状況を客観的に振り返り、睡眠や生活習慣を整える重要性を認識し、睡眠を改善するための正しい知識を獲得することが重要です。加えて、特に小学生の場合には、家庭を巻き込み保護者と一緒に睡眠に対する意識を向上させ、環境を整えることも大切です」と、研究グループでは述べている。

 「今回からは、ウエアラブルデバイスを用いた睡眠測定とあわせて、子供の心身の健康状態や生活習慣などに関するアンケートも実施します。加えて、学校や自治体の希望に応じて、学力や体力データとの関連を確認することも可能になります。成長期の子供にとっての睡眠の重要性を裏付けるエビデンスづくりを推進します」としている。

 研究は、理化学研究所生命機能科学研究センター合成生物学研究チームの上田泰己チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻 システムズ薬理学教室教授、久留米大学分子生命科学研究所教授)と、東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教室の岸哲史特任講師の研究グループによるもの。

良質な睡眠で心と身体を健康に (厚生労働省 2025年)

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 (IIIS)
Subjective geriatric complaints as predictors of disability and mortality in community-dwelling older adults: a 5-year cohort study (Age and Ageing 2025年6月5日)

子ども睡眠健診プロジェクト-子どもの睡眠の実態調査-(東京大学大学院医学系研究科システムズ薬理学教室)
「子ども睡眠健診」プロジェクト・中間報告2024-プロジェクト参加校(小・中・高)の第四次(2025年度)募集を開始-(理化学研究所 2025年3月18日)

[Terahata]
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