健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要

仕事のパフォーマンスは働く人の健康状態や働く環境の影響を受ける
高い仕事のパフォーマンスは、個人レベルでは、本人の仕事への自信や達成感につながるとともに、職場での地位向上や給与水準に影響を与える。また、社会レベルでは、組織の成功や社会全体の発展にとって重要だ。
仕事のパフォーマンスは、働く人の健康状態の影響を受けるとともに、働く環境の影響を受けることが知られ、その要因は多岐にわたることが知られている。
また日本でも、健康経営への関心の高まりから、従業員のプレゼンティーイズム(健康の問題を抱えながらも仕事を行っている状態)の可視化と改善、生産性の向上をめざす企業が増えている。
しかし、これまでは一般職や管理職といった職場での立場に注目した検討は行われていなかった。
そこで富山大学の研究グループは、仕事のパフォーマンスに関連する要因を職位ごとに明らかにすることを目的として調査を実施した。
日本の地方公務員3,325人を対象に2019年に、質問票を用いて実施。仕事のパフォーマンスは、世界保健機関(WHO)が開発した「健康と仕事のパフォーマンス質問票(HPQ)」の日本語版を使用して評価した。質問票は、過去4週間の自身の仕事のパフォーマンスを10段階で評価するもの。
「健康状態が良好である」「働きがいがある」ことが仕事のパフォーマンスに影響
さらに研究グループは、職位ごとの仕事のパフォーマンスの関連要因を、ロジスティック回帰分析を用いて評価した。
職位は、3段階(一般職、中間管理職、管理職)で評価した。仕事のパフォーマンスに関連する可能性のある要因として、▼仕事の裁量度、▼仕事の要求度、▼仕事の支援度、▼職場の公平性、▼職場の一体感、▼働きがい、▼健康状態(抑うつ状態の有無)を評価した。
その結果、どの職位でも抑うつ状態にないなど、「自身の健康状態が良好であること」および「働きがいがあること」が、仕事のパフォーマンスが高いことと関連していた。
また、一般職では仕事の裁量度が高く仕事の支援度が低いこと、中間管理職では仕事の要求度の高いこと、管理職では職場の公平性が高いことが、それぞれ仕事のパフォーマンスが高いことと関連していた。

労働環境や仕事のパフォーマンスを改善する取り組みが必要
研究は、富山大学学術研究部医学系の渕上貴正氏、立瀬剛志助教、関根道和教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載された。
「研究では、高い仕事のパフォーマンスには、労働者の健康状態が良好であることや、働きがいのある職場であるという共通要因と、職位ごとに異なる仕事のパフォーマンスの関連要因があることが明らかとなりました」と、研究者は述べている。
「この結果は、今後の労働環境や仕事のパフォーマンスを改善する取り組みで、重要な示唆を与えるものです。すなわち組織としては、労働者の健康状態の維持・増進への取り組みや、働きがいのある職場づくりに取り組むことが重要であるといえます」。
また、「職位ごとに異なる関連要因があることについては、一般職には個人の裁量度(誰とどのように仕事を進めるか、新しいことを学ぶ機会)を高めるよう取り組むこと、中間管理職には適切な仕事量となるようコントロールすること、管理職には職場の公平性を高めるよう取り組むことが、職位の特性に応じた仕事のパフォーマンス向上につながること、ひいては組織全体の活性化につながることが期待されます」としている。
今後は、地方自治体などと連携した職場環境改善の提案や、地域・職域での講演活動を通じて、研究成果の現場での実践と普及をめざし、そうした活動により、より多くの働く人々のウェルビーイング向上と組織の活性化をめざすとしている。
富山大学学術研究部医学系 疫学・健康政策学講座
Employment-grade differences in factors for work performance: the Japanese Civil Servants Study (Journal of Occupational and Environmental Medicine 2025年4月22日)


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