オピニオン/保健指導あれこれ
郁子の栄養指導あれこれ

No.2 太ってて何が悪い?

管理栄養士 (フリー)
佐藤 郁子

 人にはそれぞれ理想としている体型や体格があります。BMIも体脂肪も標準なのにもう少し痩せている方がいいという方もいるでしょうし、逆にもう少し痩せた方がいいのに気にしないという方もいます。メタボの方にはないですが、アスリートなどはゆがんだボディーイメージから拒食症を引き起きしてしまったりする極端な例もあるようです。

 今回は自分の理想に頑張って近づけたのに保健指導で積極的支援になってしまった方の事例です。

 BMI25.1 腹囲91cm 長身の男性。血圧、中性脂肪、LDLコレステロールが高値です。いつもの通りに保健指導の概略、健診結果、体の状態、減量の必要性から話はじめましたが、なんだか機嫌があまり良くない感じです。

 ひと区切りついたところで、「ここまでで質問はございませんか?」の問いに「今の体型は自分の理想だ。何が悪い」と言われました。詳しく聞いてみれば、「若いころからずっと痩せていて、それが嫌で頑張ってたくさん食べるように努力した。やっと少しずつ体重が増えてきて理想の体型になったのにどうして、こんなのに呼ばれるのか」ということのようです。

 問診を見ながら話を続けると、5年位に比べて20kg以上増加しています。体脂肪率は不明ですが、見るからにメタボリック症候群です。

 私は体型に対するイメージのズレを修正するために、今の身体状況を「まず、今の体重は標準体重をかなりオーバーしていること」「体重の増加はほとんどが脂肪であること」「体重増加による生活習慣病のリスク」「今の食習慣を続けて行けば、年間5kg程度体重増加していくこと」のように話し、健診結果で標準値を超える値が出てしまうということは、いくら自分が理想としていてもよくない太り方だということを説明しました。

 本人はとても驚いていましたが一応納得していただき、標準体重を目指すことにしました。標準体重にするには10kg以上の減量が必要でしたが、取り急ぎ6ヵ月で7%の減量を提案し、健診結果の改善を目標としました。

 そして、行動計画の立案ですが、この方の場合、問題は主食の多さで毎食大盛り以上の量を食べていました。本人は太るために無理して食べているという事でしたので、大盛りは必要ないことを説明し、普通盛りに変更することとしました。1日の削減予定エネルギーは480kcalにもなり、これなら、増量していた分を食い止めると共に6ヵ月で6kg減量できる計画です。

 また、運動は何もしていないということでしたので、休日の1日は30分以上歩くことから始め、ストレッチや筋トレも併用して筋肉量を増やしていくことで、「細マッチョ」を目指すことになりました。

 それにしても痩せている人は痩せているなりに悩みがあるのですね。そういえば、自分も中学生の時はガリガリに痩せていました(身長160cm・38kg)今は面影もありませんが、その時は「ガイコツみたい」と言われ嫌だった思い出があります。

 今回の方も自分なりに考えての行動ですが、ちょっと間違っていました。保健指導が終わるころには、健康的に痩せていてくれるといいなと思います。

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