小規模事業場と地域を支える保健師の役割―地域と職域のはざまをつなぐ支援活動の最前線―
【日本看護協会「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」】〈後編〉
日本看護協会が2025年6月に発表した「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」のうち、「地域・職域保健における保健所保健師の活動実態」と「小規模事業場の健康を支援する保健師等の活動実態」を取り上げる。
「事業場における保健師等の活動実態の把握」を紹介した〈前編〉に続き、〈後編〉では地域保健を中心とした働く世代の健康支援の現状と課題について探っていく。
働き盛り世代の健康を支える保健所保健師の役割と課題
「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」のひとつ、「地域・職域保健における保健所保健師の活動実態の把握」は、全国の都道府県保健所352か所を対象に実施され、161か所から回答を得た(回収率45.7%)調査である。
管轄区域内で最も就業者数が多い産業に関しての調査(管轄区域内の主な産業(業種)【Q3】 )では、最も就業者数が多い産業は「製造業(46.6%)」、次いで「医療・福祉(29.8%)」「農業・林業(10.6%)」が続いた。
また、87.6%が働き盛り世代の健康課題を把握していると回答。内訳は「肥満者の人数・割合が多い(47.5%)」「同・高血圧者(39.0%)」「同・血糖リスク保有者(35.5%)」「同・喫煙者(34.8%)」と、生活習慣病関連の健康課題が高かった。
出典:日本看護協会「「地域・職域保健における保健所保健師の活動実態の把握」 調査報告書」P.98(2025年6月24日)
「働き盛り世代の健康支援に関する取組内容【Q8】」をみると、「生活習慣病予防対策(71.4%)」「たばこ対策(54.7%)」「メンタルヘルス対策(49.1%)」「保険者との連携(49.1%)」と、多岐にわたる支援活動が実施されていた。
保険者や地域産業保健センター(地さんぽ)との連携や地域・ネットワークづくりも約4〜5割に及び、地域と職域をまたいだ包括的支援の進展がうかがえる。
出典:日本看護協会「「地域・職域保健における保健所保健師の活動実態の把握」 調査報告書」P.100(2025年6月24日)
一人体制が多数を占める現場と地域特性に応じた支援の違い
地域・職域保健担当のチーム体制を見ると、保健師が含まれる割合は86.3%と高いものの、そのうち「保健師1人配置」が5割強、「保健師2人以上配置」が約3割であった。
半数以上が一人体制という現実は、多くの保健師が広範囲の業務を一人で担い、時に孤立感を抱えながら活動している現状を物語っている。
また、人口規模が10万人未満の小規模地域では「生活習慣病予防」「たばこ対策」「メンタルヘルス対策」に取り組む割合が高かった。一方、30万人以上の都市部では「特定健診・保健指導の実施率向上」「ネットワークづくり」「保険者との連携」にウエイトが置かれていた。
地域規模に応じて活動の優先順位や方法が異なることが明らかになっており、小規模地域では現場密着型の支援、都市部では多機関連携による包括的支援が展開されている。
出典:日本看護協会「「地域・職域保健における保健所保健師の活動実態の把握」 調査報告書」P.101(2025年6月24日)


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