週末の睡眠を妨げる"社会的無呼吸"とは?
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、平日よりも週末に悪化しやすいという研究結果が報告された。
研究者らは、夜更かし、飲酒、喫煙などが週末のOSA悪化に関与している可能性を想定し、この現象を"社会的無呼吸"と名付けている。
OSAの症状は日によって大きく変動することが知られている。しかしその変動を、曜日と関連付けて検討した研究はこれまで行われていなかった。
フリンダース大学(オーストラリア)のDanny Eckert氏らは、マットレスの下に敷いたセンサーでOSAの症状を測定する手法を用いて世界各国で記録された患者データを解析し、曜日との関連を検討。詳細は「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に8月13日掲載された。
2020年1月~2023年9月にわたり収集された、70万52人のOSA患者のデータを解析した結果、OSAの重症度は平日よりも週末に有意に上昇することが明らかになった。
具体的には、睡眠1時間当りの無呼吸・低呼吸の合計回数である「AHI」という指標が15以上となるオッズが、土曜日は水曜日よりも18%高かった(オッズ比〔OR〕1.18〔95%信頼区間1.18~1.19〕)。
性別で分けると、女性(OR1.09〔同1.08~1.10〕)に比べて男性(OR1.21〔1.20~1.21〕)の方が、週末により重症度が高くなりやすいことが示された。
また年齢で層別化すると、60歳以上(OR1.07〔1.06~1.08〕)に比べて60歳未満(OR1.24〔1.24~1.25〕)の方が、週末により重症度が高くなりやすいことが分かった。
OSAは睡眠中に気道が閉塞し、呼吸が止まったり妨げられたりする病気。妨げられた呼吸が再開するには、脳が少なくともある程度は覚醒する必要があるため、睡眠の質が低下する。
OSAを治療せずにいると、日中の疲労や事故、心臓病、糖尿病、うつ病、認知症、さらには死亡のリスクが上昇する可能性がある。
今回の研究で示された、OSAの重症度が週末に高くなりやすいことの原因についてEckert氏は、「正確にはまだ分かっていない」とした上で、「週末には飲酒量が多くなりやすいこと、睡眠が浅くなりやすいこと、そしてOSAの治療機器を使用せずに寝てしまいやすいことなどが影響している可能性が高い」との考察を加えている。また原因の一部に、睡眠時間の変化が関係していると考えられるという。
実際、本研究でも、週末の睡眠時間が平日よりも45分以上長い場合に、OSAの悪化が47%増加するという関連が示された。
研究チームは、週末にOSAの重症度が高まるこの現象を、「社会的無呼吸(Social Apnea)」と命名。論文の筆頭著者である同研究所のLucía Pinilla氏は、「OSAはすでに大きな公衆衛生上の問題となっているが、われわれの研究結果はその真の影響が過小評価されている可能性があることを示唆している。なぜなら、OSAの臨床検査は通常、平日の夜に実施されるため、社会的無呼吸を把握できていないからだ」と語っている。
研究者らは、社会的無呼吸への対処法として、平日と週末の睡眠習慣を変えないことを推奨している。Eckert氏も、「週末も平日と同じ時間帯に7~9時間の睡眠を確保し、かつOSA治療機器を用いて眠りにつくことが、OSA重症度の変化抑制につながる」とアドバイスしている。
(HealthDay News 2025年8月19日)
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